表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クリとユキ(改)  作者: 鈴音
6/7

6.現在(ユキの視点から)

クリが近づいてきたり、見つめられると身体が震える。

最近のクリは、よく殴るようになったから。

クリの機嫌を損ねるのが一番怖かった。

これじゃ、私が実家にいたときと同じじゃないか。

お母さんは大丈夫かな。

お母さんは私がいなくなったこと、絶対に憎んでいる。

私という生贄がいなくなったこと。

父親はどうなんだろう。

少しは心配してくれているのだろうか。

「いい加減にしろよ。お前」

クリがまた怒っている。

「俺がイライラするのは、お前のせいだからな」

「はい」

私が悪いんだ。クリがイライラするのも殴るのも。全部、私のせい。

「どうしたらイライラしなくなりますか?」

「お前の存在自体が、イライラするんだよ」

クリは目をそらして言った。

「お前さえいなければ、俺はこんなにイライラしないんだよ」

それは嘘だなと思った。

クリは私にいなくなってほしいとは思っていない。それなら力ずくでも、私を家から追い出すだろう。

クリも私が好きなのは分かる。暴君じゃないときのクリはとても優しいから。

いつも殴った後は優しくなる。罪滅ぼしのつもりなんだろうと思った。

私はクリにこれだけ乱雑に扱われても、まだ好きだった。

本当のクリは優しい人間だから。

だから、私を殴るクリは別の人間なんだ。

父親という悪霊がクリに憑いているんだ。

私はクリから離れられない。

どんなに罵られても、殴られても。

私がいなくなったら、クリは一人ぼっちになってしまうから。

だから、私はそばにいると決めた。

「ゆるしてください」

あなたをイライラさせる私を。

あなたを好きな私を。

許してほしい。

あなたにまた笑ってほしい。

好きだよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ