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クリとユキ(改)  作者: 鈴音
1/7

1.現在(クリの視点から)

「ご飯出来ましたよー!」

そう呼んだのはあいつだった。

「分かった」

俺はあいつの呼びかけに答え、リビングに来た。

あいつは俺の姿を見て、明らかにびくびくしだした。

怖がられたいんじゃない。

いや怖がられるようなことをしているのは俺なのだが。

あいつにはもっと笑っていてほしかった。

それをできないようにしているのは俺なのだが。

全部俺が悪い。

あいつは悪くない。

いや、口だけは、あいつが悪いとあいつに責任を転嫁するようなことを言っているが、本当は知っている。

あいつを苦しめる俺なんか消えればいい。

こういうとき、無性に自傷したくなる。

身体を傷つけて、自分を罰する。痛いのは罰だ。傷つけて傷つけて、自分をめちゃくちゃにしたい。俺が人間であり続けるかぎり、あいつを苦しめるから。心も頭も内臓も感情も、全部めちゃくちゃになればいい。

そうして人間ではなくなった姿で謝罪したい。

ごめんなさい、と。

「食べようか」

俺は言った。

「・・・はい」

あいつはうつむいたままうなずく。

今日の食事はスパゲッティだ。

相変わらず、あいつの食事はおいしい。

「おいしいな」

「今日は機嫌がいいんですね。」

あいつはほとんど食事に手を出していない。ずっと俺の顔色を伺っている。

俺の言動や行動がそうさせていることに気づいて、申し訳なくなる。

「ごめんな」

「いつも機嫌悪くて、ごめんな。」

お前のことが好きだよと言いかけてやめた。

そんな言葉、死んでも言えない。それは俺に科せられた罰だ。

俺にはあいつを好きになる資格なんてない。

「あのさ」

意を決して俺は言う。

それは俺にとってとても辛いことだった。

本当は好きなのに、こういう言葉を言わなければならないのがとても苦しかった。

好きだという気持ちを好きだと言えたら、どんなに楽だろう。

でも今の俺はあいつの好きだという気持ちに応えられない。

きっとあいつの「好き」を踏みにじるから。

あいつを試そうとしてしまうから。

どこまで好きなのか、耐えられるかを競うゲーム。

こんな不毛なゲームは早く終わりにしないといけない。

「別れよう」


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