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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
七巻 泡沫の咆哮
94/135

「姉上。姉上。あれ何?」

「あれは蛸」

「じゃああれは?」

「亀」

「べったりですね」

「そうね」



 ゆずと譲り葉は手を繋ぐ仲睦まじい希羅と零を見つめた後、二人の傍らで悔しそうな表情を浮かべる修磨と真顔の洸縁を見た。



「彼は大丈夫でしょうか?」



 ゆずの質問に、譲り葉は腕を組んで答えた。



「張り詰めていた糸が切れ始めているみたい」

「つまりは、今の彼が本当の姿だと?」

「私の見当違いだったかもね~」



 譲り葉はまいったと言うように肩を揺らした。



「鄒桧についていったのが、確か。五歳の時で。それから十年一緒に居て。あいつにしては長いし。普通でも、まぁ。それなりの年数よね」

「今は三十六歳……安定していてもおかしくない年齢ですよね」

「ま。年数だけが積み重なっただけで成長していない。ってことでしょ。外面を取り繕うことは覚えたようだけど」



 数秒ほど洸縁を見つめていた二人の間に沈黙が落ちたが、次の瞬間、譲り葉はゆずと名を呼ぶことでそれは破られた。



「彼から目を離さないようにしてくれない?」

「何をしでかすか分からないからですか?」



 珍しく渋面なゆずに、譲り葉は微笑を溢した。



「ゆず。苛立ってる?」



 珍しいと、譲り葉は再度思った。



 何事も淡白に受け応えする彼女。

 感情を表に出さないのではなく、感情自体が希薄だった。



 式神だからではなく、元々彼女がそう言った体質を持っていたとしか言いようがない。






 もしくは―――。






(私を見ていたから、かしら)








「分かりません」



 ゆずは洸縁に視線を固定させたまま告げた。



「ただ、近頃の彼を見ていると、胸の中に煙が巻かれているみたいになって。煙が充満して見えにくいですし。追い払いたいのに、そうできなくて。兎に角、落ち着きません」



 胸元に拳を当てるゆずに、譲り葉はもしかしてと、或る考えが浮かんでしまった。



(ゆず。洸縁君のこと)



「…私、彼のことを過大評価していたみたいです。だから」

「危なかしい姿を見せられて幻滅しちゃったわもう。みたいな?」

「…そう、かもしれません」



 元々お莫迦な行動を取っていた修磨は兎も角、常に安定した行動を取っていた洸縁の、その彼らしからぬ姿に、不安を抱いてしまった。


 別段、普段から離れた姿を見せられては、そのような感情を抱いてもおかしくはないのだろうが。



「私はどうしたのでしょうか?」



 ゆずは一人ごちるように口にした。



 違和感があるが、何に対してかが掴めない。その状況がひどく。



「巧く言葉にできませんが、今の私はおかしいと思います」

「嫌なら」



 ゆずはいいえと次の言葉を遮って、漸く譲り葉に視線を合わせた。



「申し訳ありません。大丈夫です」



 命を与えられることは至上の喜びと言っても過言ではないのに、何故すぐさま是と応えられなかったのか。



 一先ずその疑念は心の片隅にでも追いやることにして、命遂行に集中することにしたゆずであった。











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