三
「何で俺が捜しに行かなきゃいけないんだよ!」
―――『海原国』中国地域。固定式城郭『龍宮城』。
針のように尖っている髪に尖っている目つきの所為か、何時も怒っているように見える男性忍禦、夕映は鼻息を荒くして、鶏の鶏冠のような髪型の弟分の万亀を睨みつけた。万亀は身体を縮こませながらも、だってよと、苦言を呈した。
「兄貴の妻じゃん」
「知るかよ!」
夕映は語気を強めた。
「勝手に出て行ったんだろ!」
「出て行くようなことしたんだろ」
「あ゛あ?」
ぼそりと、聞こえるか聞こえないか、と言うか、聞かせたくないけど聞こえればいい、との想いを滲ませた音量で告げた万亀。夕映の尖り声に、肩を鳴らした。
「兄貴」
「そんなに言うならおまえが行け!」
夕映は万亀を小突いて背を向けさせ、尻を思い切り蹴り上げた。
「暴力反対!」
「うるせえ!」
急速に距離を広げた後に背を向けたまま反論した万亀に、夕映は大喝を浴びせた。万亀は勢いを付けたまま、姿を消した。
「あ゛~。くそっ」
夕映は知るかと床に寝転んで瞼を閉じたが、気が収まらないので城の外へと出た。
(あ~。いてえ)
万亀は痛めた尻を擦りながら城を出て、自分が兄貴と呼称する夕映の妻、舞李捜しの為、海の中を泳ぎ続けた。
「舞李姐さ~ん。出て来てくださいよ~!」
周りを見渡せば、何時もよりも多い人盛り。開放日ならではの光景に、稼ぎ時だなと頭の片隅で思いながらも、厄介だなと愚痴も浮かんだ。
「姐さん可愛いから。可憐だから。男が近づいて。あまつさえ、そいつとくっついたら……もう兄貴に嫁さんなんて」
舞李を想うなら兄貴から離れた方が善い。それはもう断言できる。
恐らく、兄貴にとっても、舞李が離れた方が。だが。
「兄貴の代で龍宮は終わりか」
口にしてみれば現実になる気がしてしまった万亀は、打ち消すように盛大に頭を振った。
「舞李姐さ~ん!出て来てくだせえ!後生ですから~!」
戻って来てくれるのならば喉が潰れたっていい。万亀は叫び続けた。
(ごめんなさい。万亀さん。でも私)
海藻に身を隠していた、綿菓子のようにふわふわとした腰の辺りまである金髪の女性忍禦、舞李は必死な姿で自分を捜す万亀に再度心の中で謝り、その場から急いで離れた。




