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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
六巻 向暑の曙光
86/135

「そもそも。釣り合いを取るって言っても二日はないだろ」



 修磨は渋面を作った。



「最初から分かっていたことでしょう?」



 譲り葉の発言に、修磨はそっぽを向き、泥のように眠りこける希羅を見つめた。



 勝負をして欲しいと告げたのは、希羅だ。


 潔癖な性格だからこそ公平な勝負を望んでいたはず。つまり二日という釣り合いをなくし同時に京都を出る。そんな希羅の甘さを心の何処かでは期待していた。



 だが期待など、ほとんどが裏切られる。



 実際どうだ?思い知らされただけだ。



 執念にも似た弟への想いを。








―――泰炬山付近の譲り葉の邸にて。



 修磨と洸縁がそこに辿り着いたのは、出発してから七時間後。希羅が辿り着いた二時間後であった。邸の前で待っていたゆずに案内され、今は邸の中の或る一室に胡坐をかいていた。



「もう少ししたら、柊様たちも此処に着くから。あの子とも話してみなさい。きちんと」



 譲り葉はそれだけ告げるや、部屋を後にした。



 修磨はおもむろに立ち上がり、希羅の隣に腰を落ち着かせた。



「そんなに、死にたいのか?」



 柊たちが着くまで、修磨はずっと希羅を見続けた。


















「……そいつらは何だ?」



 数時間後。部屋に訪れた柊と遊山、そして男児の他に見たことのない三人の人物に、修磨の機嫌はいよいよ損なわれていった。気負いの獣のような威圧感を放つ修磨に、道具屋は手を上げた。



「初めましてだの。わしは道具屋。お主の仲間じゃ。ついでにこいつもな」



 子天狗は外した仮面を持ち上げた。



「俺の名前は羅葦らい。よろしくの」



 修磨は突然の仲間の登場に動揺するも、それほど驚く気にはなれなかった。無論、高揚することも。



「俺は修行僧の宗厳むねよしってんだ」



 宗厳は不穏な空気を解せず、明るい声音でよろしくなと告げて手を上げた。



「さてと。とりあえず挨拶も済ませたし。坊ちゃんと、西南さいなん。譲り葉様の手伝いをするわよ」

「ああ」

「つーか、何で、西南?災難みたいでめっちゃ嫌なんだけど」



 宗厳は愚痴を溢しながらも、遊山と柊の後について行った。



「ちょっと来い」



 修磨は静かにそう告げた。視線を向けられた男児は、外へと向かう修磨の後について行った。



「さてと」



 道具屋は洸縁に視線を向け、自分たちも外に行こうかと告げて羅韋と共に歩き出し、洸縁は彼らの後に付いて行った。




















「協力しろ」



 夕刻にも拘らず日光が蔭りなく照りつける中、修磨は開口一番にそう告げた。



「おまえを生き返らせない。希羅に生きていてもらう」

「うん。俺も姉上に生きていてほしいし。生き返りたくもないし」



 修磨は微かに瞠目した。



(がきのくせに)



 こんなにも暗く、冷たく、それでいて澄んでいる瞳を見たのは初めてだった。



「俺がこの世界に居る間、仲良くして。俺。姉上が悲しむ顔、見たくないから」



 修磨は真直ぐに向けられる瞳に、真っ向から向かい合った。そして膝を曲げるや、男児の額に人差し指を強く押し当てた。



「俺はおまえ自身を希羅の中から抹消する術を知っている。けど、んなことしたら。希羅は生きてはいけなくなるから。やらねぇ」

「うん」

「勘違いはするなよ。俺はおまえがこの世の誰よりも憎いし、好感など微塵も持ってねぇ。同情もな」

「うん」

「けど。目的は一致しているみたいだから。そこだけは協力させてやる」



 修磨は男児の額から人差し指を離した。額には赤い跡が付いていたが、男児は意に介さず、微笑みかけた。



「修磨。よろしく」



 修磨は額に青筋を立てた。



「修磨さん、だ」











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