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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
二巻 ホスト部で父親修行!?
42/135

「急に休業って言われてもな。どうしろってんだよ」


 辺りはもう薄い暗闇に覆われており、道の両端に置かれた蝋燭の灯りが幻想的に辺りを照らす中、町の中でぶらついていた修磨はぶつくさと文句を呟いていた。


 何でも店長の気紛れでそう決定したようで。



(希羅は…あいつらと一緒に飯を食っている頃か)


 瞬間、修磨は頭を勢いよく左右に振って、額を手の平で押さえた。



 考えまいとしているのに、どうしてか。




「ちょっと!!」

「何だおまえ」



 突然前に立ちはだかった、頭を除く全身を黒マントで覆い、髪を上の方で二つに結ぶ勝気そうな少女は何故か息巻いており。



「何だ、じゃないわよ!!さっきから呼びかけてんのに無視してんじゃないわよ!!」

「ハァ?何時呼びかけたんだよ?」

「すれ違った時によ。聞こえなかったの?無駄に顔がいい男って」

「そんなんで立ち止まる男なんか居ないっての。けどもう気が済んだな。お子様は早く帰れ」



 そう言って修磨が手で追い払うも少女が引き下がることはなく。



「あんた莫迦?普通其処は何か用か、くらい訊くでしょう」

「何か用か。満足したか?じゃあな」

「最悪」

「どうとでも言え」

「あんた本命にはフラれる体質だわ」



 悪気満載の毒気に普段なら一笑する修磨はだが、この時ばかりは致命傷を負った。



「おまえに、おまえに何が分かんだよ」



 今にも地面に食い込むそうなほどの落ち込むように、少女は思わずたじろいだ。



「な、何よ。いきなりそんなに急変しないでよ」

「うるせぇ。最悪なのはこっちだ。傷に塩ぶちまけやがって」



(うわ。本当にフラれたんだわ。けど気の毒って言うより自業自得ね)


 本当は笑い飛ばしてやりたい処だが、さすがにそれはと堪える。



「まぁ。次頑張ればいいわよ。ってことで」

「サラッと言うんじゃねぇ」

「あ~。面倒臭い男。あんたの事情なんか知りたくないわよ「俺だってな「『緑柳紅花』って言う帆須徒無の在り処知らない?」



 これ以上愚痴に付き合いたくないのだろう。

 修磨の言葉を遮り、表情を改めてそう問いかけた少女に、一瞬眉を潜めるも修磨は鼻で嗤った。



「男にちやほやされたいってか。不憫なやつ」

「は。あんたの言葉なんて痛くも痒くもないっての。それよりどうなの?」

「…この先を真っ直ぐに進んで二つ目の角を左に曲がればある」



(何でこんなに気難しい顔してんのかしら)


 素直に道差す修磨に、少女はこれでもかと不信な瞳を向けた。



「嘘言ってんじゃないでしょうね」

「信じる信じないかは、おまえ次第だ」

「何よ。でたらめ占い師みたいなこと言って……ああ。あんた本当に面倒臭い男ね」

「何笑ってんだよ」

「別に。まぁ、ありがと。助かったわ」

「…誰か身内でも捜してんのか?」



 背を向け走り去ろうとした少女に、修磨は柄にもなく踏み込んだ。


 先程問い掛けた時の、あの瞳が気になったからだろう。


 何処かで見たことがあるかと思えば。



(あの野郎に会いに来た子と似てんだよな)



 誰かを羨望して止まない瞳。



(羨ましいやつらだ)



 こっちはどれだけ望んでも手には入らないと言うのに。






 踏み止まり振り返った少女は無言で修磨を睨みつけるように見つめていたが、やがてゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。



「…父親よ。時々帰って来るんだけど、突然仲間と数年前から旅に出始めて。帆須徒無をやっているって知ったのは最近なの」

「母親は?」

「居ない。病死よ。元々身体が弱い人だったから」

「ふ、ん。けど時々帰って来るなら別に血相変えて捜さなくていいんじゃないか?」



 瞬間、険しい表情を浮かべた少女につられて、修磨も真顔になる。



「変な噂を耳にしたのよ」

「どんな?」

「あそこを訪れた女性が数名必ず行方不明になるって。まぁ、数日したら戻って来たらしいんだけど。その数日間の記憶をなくしてね」

「本当かよ」



 不信な表情を浮かべる修磨に、少女はさぁと両の手を上げた。



「噂だから嘘か本当かは分からないわ。けど、もし本当だったら何をしているのか、何を企んでいるのかを問い質す必要があるでしょう?私の父なわけだし。ただの噂ならそれだけの話、なわけだし」


「おまえの父親の名は?」

隼哉じゅんや



(隼哉…居た、か?)



 従業員が羅列された紙を一番上から思い起こそうとした修磨は軽く目を見開いた。



「顔を全く出さない店長と同じ名だな」

「もう行くわよ」

「待て」



 じれったいと言わんばかりに駆け走ろうと踏み出した足はその場に留まる。



「何よ?」

「行っても誰も居ないぞ。今日は休業だ」

「…先に言いなさいよね」



 真っ先に言うことだろうと思ったがどうせ忘れていたのだろうと推測し責め立てなかった少女は、顎に人差し指と親指を添えた。



「困ったわね。本当に誰も居ないの?」

「ああ」



 断定した物言いに、されど思惑を巡らせた少女は店のある方向を真っ直ぐに見つめた。



「…万が一ってこともあるし、とりあえず行って来るわ」

「俺も行ってやる」



 上から目線に、嘆息がつく。



「あんた関係ないでしょう?」

「一発ぶん殴りに行くんだよ」



 修磨はバシッと拳に手の平を合わせた。



「ハァ?意味分かんないんだけど」

「行くぞ」

「あ。ちょっと。何なのよもう」



 いきなり駆け走りだした修磨の後を、全く意味が分からない少女は追いかけた。











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