二十二
「おい。俺に変な術かけただろう」
「何してんねん君は」
互いに怒気を含む声が重なってしまった。
あの後、川の中で二人仲良くずぶ濡れになったのだが、直後希羅が気を失ってしまい。
まだ寒い冬で、だがさすがに服を脱がすのには抵抗があった修磨は急ぎ櫁の元を訪れたのだ。
不信な視線を向けられながらも、希羅の体調の方が心配だったのだろう。修磨を玄関に置き去りし、櫁は岸哲に希羅を抱えさせて邸の中へと立ち去っていったのだった。
修磨が邸の外に出ると、洸縁の声がしたかと思えば、其処には黄色の蝶が舞っており。
修磨は先程の自身の不可解な行動は全て洸縁の仕業だと思い。 また、その時の光景を式神を通じて見ていた洸縁は修磨の目の疑うような行動を、互いに憤って言葉を発したのだ。
「梓音と約束しといて、何死なせようとしてんねん。この莫迦たれ」
「うるせぇな。俺だってわけが分からねぇんだよ。どうして俺が一緒に死ななきゃいけなんだよ」
情けない言動に、洸縁は自身の選択の過ちを悔いた。
(式神を蝶じゃなくて獰猛な熊にしておけば、張り手の一発でも喰らわせられたのに)
「兎に角。今後あんな莫迦げたことしたら、僕の力を以てして生き地獄を見せたるわ」
「ちょ。おい!俺の質問に答えていけ!この野郎!」
閃光が走ったかと思えば、蝶の姿が消えており。修磨は盛大な舌打ちをした後両の手を凝視した。
自分の意思は確かにあった。
覚えてもいる。
だが自分ではなかった。
共に死ぬなど、この上なく唾棄すべきことで、一緒に崖の下に落ちた時などは、目をひん剥けるほどであったと言うのに、妙にこれでいいと納得する自分も居て。
あの時の自分は操られている状態だった、と言うのが一番しっくりくるだろう。
が。
(薄気味悪い)
自身の変化にされどどう対応していいか分からず、立ち尽くしていた修磨の目の前に或るものが立ちはだかったと思うや、ぼんと白い煙がその場に立ち込め、幼くなった修磨は抵抗する間もなく袋の中に詰め込まれ連れ去られてしまった。




