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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
八巻 零の奏音が竹と寄り添う大豆の花を揺らした。
129/135

十七



 京都市内、絆繁草。



 誤算だったのは、木魚達磨が憑りついた宗義が予想外に陰陽の力を秘めていたこと。


 本人はその力に気づいていないのだろう。昨夜の夕飯時に尋ねた時は、そんなのないと断言していた。


 自分すら気づけなかったのだから、それはそれは奥底に眠っていて、使われるはずもなかったその力を木魚達磨が無理やり引きずり出してしまったのだろう。



(修行僧とは聴いていたが。失敗した。身体能力だけに目が向けられていたか)



 木魚達磨が平常時なのか、異常時の状態なのか。

 出ようと圧迫する結界を押し留めるのが精一杯の状態。昼食を食い損ねてしまったなあと、柳は思った。



「柳さん。希羅ちゃん。大丈夫?」



 宗義は腕の力だけで身体を移動させて二人に視線を向けた。


 軽かった身体が今や鉛のように重かった。常ならその程度の重さなどへでもないのだが、今は違った。とてつもなく苦しめられている。



(俺が連れ帰らなければよかった)



 夕飯をご馳走になって、身体を動かそうとひとっ走りした先で辿り着いたお堂。屋根は半分崩れ落ちている、見るも哀れな姿になっていた其処に足を踏み入れようと思ったのは、うらぶれたところには時として猛者が身体を休めていることもあるから。それだけだったのだ。


 それがまさか、居たのは木魚達磨。気落ちしたら、動くのが億劫になってその場で横になって眠ろうとしたのに、眠れなかったのだ。


 ああ、美味しいご飯がこの頃連続して食べれていたし、猛者にも囲まれていたので、気が昂っているのだろう。納得して、目さえ瞑っていれば、その内眠れるだろうと気楽に考えていたのに。眠れない。


 危機感を覚えた自分は、いっぱい動けばその内眠くなるさと、走って、走って、走り回って、絆繁草に戻ろうと考えていたのに、何故かこのお堂に戻っていて。まだ眠れなくて。


 あの木魚達磨の所為だと結論付けては、どうにかしてもらおう諸悪の根源は持って行った方がいいだろうと抱えて、常ならこの時間帯に目にすることのない朝日を浴びながら走り出して。


 今に至る。



(無理やり使うはずもない力を吸い取られているんだ。疲労は重いだろうに)



 結界から目を逸らすわけにはいかない柳。宗義の言葉に、へっちゃらだと、敢えて強調することなく告げた。



「俺と希羅は気にしないで、君は身体を休めることだけに集中していてくれ」

「…うん」



 宗義は希羅を一瞥しては臍を噛んで、這いながら布団に戻った。










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