三
「…希羅があいつらと会う」
「止め」
物陰から二人を見ていた洸縁は、出て行こうとした修磨の腰元を掴んで引き留めた。修磨はその手を振り払い洸縁を睨みつけた。
「何で止めた?」
「約束したのに付いて来たって知ったら、希羅ちゃん。怒るで」
『危なくなったら洸縁さんの式神で知らせます。だから。その』
今朝、町に着いた際に交わした約束。余程付いて来て欲しくなかったのだろう。
「それは、」
修磨は唇を突き出した。
「第六感で危険を察知したからって言えば」
『ハァ?知るかよ。あんな小娘がどうなろうが』
出会った当初は本当にいけ好かないやつだった。
梓音との約束を守って見守っているのかと思えば姿を消すの繰り返し。
『ねぇ。遊ぼうか?』
変わったのはあいつが現れたからか。それともーーー。
洸縁は微笑を浮かべた。
「昔とは偉い違いやね」
「昔は昔で。今は今なんだよ」
「兎に角」
「おい」
洸縁は修磨の裾を握り、希羅たちが居る方向とは真逆の方へ歩き出した。
「これ以上はおっても邪魔しそうなだけやし。君は僕の方を手伝い」
修磨はその手を振り解こうとしたが中々それは叶わずに、引きずられるように歩かされた。
「誰がおまえの手伝いなんかするかよ」
「解決したら報奨金出す、って言ってるんやけどね」
その瞬間、抵抗していた手がピタリと止んだ。
「それで希羅ちゃんに贈り物したらどうや」
(贈り物)
渡そうとしても何時も遠慮がちに断られている。結局最後は受け取ってくれるが、申し訳なさそうな態度で。もっと。単純に。
『あ、ありがとう、ございます』
(あんな顔させたいわけじゃない)
「臨時収入でって言ったら、希羅ちゃんも受け取ってくれると思うけどな?」
「どっちに行けばいい?」
手を振り払い前に出て歩き出した修磨に、単純莫迦やねと心の中で呟いて、洸縁はあっちやと案内し始めた。