111/135
二十一
「奏音」
―――京都府京都市『果嵐氷山』にて。
氷に身を当て休ませていた身体を揺らしながら、懸命に前へ前へと足を踏み出す。
「奏音」
切望して止まないその声音は、氷で覆われたその場所では反響されることなく、誰にも届けられぬように、ただ吸収されるだけであった。
会いたい。
遇いたい。
例えこの身が。
雫と成り果てても。
「ああ、あの子は天国へと無事に逝っただろうか。それとも怨霊となって僕を探しているだろうか」
悲哀に満ちたその声音は、闇で覆われたその場所では不思議と柔らかく木霊する。
「僕が、」
望んでいるのは、