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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
七巻 泡沫の咆哮
105/135

十五







『分かってる……分かってんだよ。希羅を強くすんには、俺たちが邪魔だって。命懸けだからこそ。そんな状況でも、自分を見失わないようにすんには、場数を踏む必要があるって。分かってんだよ』



 自分に言い聞かせるように幾度も幾度も分かっているの言葉を繰り返す。



 全ては希羅の為と、動きそうになる身体を必死に抑える。



 全ては。希羅が希羅自身を護る為に。



 護る為に。傷つくのは。必要不可欠なのだと。






 自問自答を続ける中、振動が伝わる。悲鳴が確かに耳に届く。



 その場をいち早く駆け抜けたのは、零で、その次が自分と洸縁だった。



 何故その差が生まれたのか?



 親であろうとする自分たちと弟であろうとする彼との違いは?






(違うだろうが)






(護れるなら全力でそれを叶えるべきだろうが)






『見守ろうが、護ろうが、強くなんだよ!』






(信じてるんなら。早くに気付くべきだった。俺らがどう動こうが。強くなるって。強くなるんだよ)












――『乃亜の方舟』夕映の誕生祝会場『園枝そのえ』にて。



 今回立食バイキング形式で行われていた誕生会には、多くの忍禦と日本人が訪れており、四方に囲まれた料理を少量ずつ盛った皿を斑に配置された脚のない机まで運んで、その机を囲む者同士が立ったまま、正確には浮遊したまま飲食を進め、また箸を休ませて、それぞれが話を弾ませていた。



「修磨。盛り過ぎじゃね?」



 自身の身体半分ほどの大皿に、手当たり次第に料理を乗せて行く修磨に煩いと告げられた宗義は、ならせめてもっと見栄え良く乗せればと突っ込んだ。



「まさかそれ全部希羅ちゃんにあげるわけ?」



 宗義の忠告を素直に聞き入れたのか。


 全ての料理を一皿に乗せるのを諦め、次々と小皿に二菜分だけ乗せて行く。


 移動しながらそれを続ける修磨。


 宗義は彼に付いて行きながら、皿に乗せた一菜を素早く口に運び飲み込むと同時に次の菜に手を伸ばすを繰り返した。



「俺のもあるに決まってんだろ。つーか。ちゃん付けだぁ?百年早いわ」


 二菜盛り終えると、盆に乗せている新しい皿に盛る。


「じゃあ。希羅」


 運んで、飲み込んで、運んで、飲み込む。


「さんだろ!」


 以下略。


「敬称苦手なんだよな」


 以下略。


「食べながら話すな!」


 以下略。


「………」


 以下略。


「黙るな!」


 以降、全ての菜を手にする、また胃袋に収めるまで続く。







「おーおー。元気になったようだのう」

「だな」



 修磨と宗義から少し離れた処で食事を進めていた道具屋と羅韋。

 キャンキャン喚く修磨と素直に受け答えする宗義のやり取りに、自然口元が綻ぶ。



「わしら。間違っとったんかいの?」

「さあの」






『見守ろうが、護ろうが、強くなんだよ!』






 制止しようとした自分たちに修磨が叫んだ言葉。


 見守ることが正しいとずっと思って来た。


 手出しをすれば次も助けてもらえると甘えが生じ、結果、成長を妨げるに過ぎないと。



「何しようが、強くなるもんは強くなるし、弱いもんは弱いまま。ってことかの?」



 もぐもぐと、団栗を頬に詰め込む栗鼠のように頬を膨らませながら食事を続ける羅韋に、道具屋は分からんと呑気に告げて、それよりこれ旨いのと食事に集中することにした。











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