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枯れ木が花を咲かせます  作者: 藤泉都理
七巻 泡沫の咆哮
100/135








「痛くないから。ほら、血も出てない」



 零は自身の手の平に当たる短刀の鍔を包み込んだ。

 小さな手では全ては叶わないが。



「姉上。大丈夫だから。俺は大丈夫だから」



 何の反応も示さない姉を見て、くしゃりと顔を歪ませる。



「護れなくてごめん」






 ぽたぽたと、涙を溢す。






「護れなくてごめん。姉上」






 それは過去へ向けて吐露された想い?現代に?それとも。






「戻って来てよ」






(やっと自由に動ける身体を手に入れたのに)


















 寒い季節だった。






 吐き出された白い息の行方と。






 道端に棄てられた自分を誰もが素通りして行くのを目で追う。


 




 それは息をすることと寝ること以外に自分ができたことだった。






 自由に動けないように巻き付けられた毛布の所為。






 自由に動けない己の拙い身体の所為。






 自由に動かせたのは思考だけ。






 次は何に生まれようと想いを馳せている時だけ、自由になれたのだ。






 何でもいい。






 生まれて直ぐに自由に動ける身体であったのならば、何でも。












『俺たちと家族にならないか?』






 突如として頭上から降り注がれたそれは。






 真直ぐに自分に向けられた初めての言葉だった。


















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