岐路
空気を読めないと人生を台無しにしかねません。
様々な場面で必要な能力なのかも・・・
老人Aはペンを持ち、書類を眺めながら悩んでいた。
次に繋ぐか、諦めるかの岐路に立たされていたからだ。ここにいる者達は皆同じだ。
「こう見えても昔はサッカーをよくやっていたんじゃよ」
老人Bは唐突に雑談を始めた。
「テレビでは時々見た事あるけど、私はやった事ないわねぇ。」
和装に身を包んだ年齢は同じくらいの老人Cは応えた。
「未だに”オフサイド”とやらがよくわからんがね。」
「なんだか難しそうなルールがあるのね。」
上品に口元を隠しつつもニコニコと応えながら続ける老人C。
「サッカーではないけど、こう見えても若い頃にテコンドーなら教わっていたのよ。」
「へぇー。そいつはすごいな。上品そうなのに意外じゃのぉ。」
「あら、ありがとう。若い頃ならサッカーボールくらいなら蹴り返せたと思いますけど、今はこんなですからもう無理ね。」
袖を持ち上げ、ホホホと微笑む。
「違いない。わしももうサッカーは無理じゃよ。」
和やかに談笑していると、後ろから唐突に老人Aがつっこみを入れる。
「俺達幽霊で足ねぇからサッカーもテコンドーもできねぇけどな!ひゃっひゃっひゃ!!」
老人Cは、空気を読まずに茶化した老人Aの書類の『諦める(消滅)』に素早くチェックマークを入れ、次の瞬間老人Aは消滅した。
老人Cは小さく呟いた。
「死んだら空気は必要ないけど、読む必要はあるのよ。」
老人BとCは『次に繋ぐ(転生)』にチェックマークを入れた。
感想やご意見を気軽に頂けたら嬉しくて椅子でクルクルします。