要介護者の個人情報を知りましょう
ぶっちゃけます。
介護でこんな割りの良い仕事は他にはない。
ここに断言する。
日本の現状としては介護福祉士資格取得者は何気に結構います。
なのに求人募集が求人広告に必ず出てる程の人手不足。
それは過酷労働のわりに低賃金だから辞職者が後を絶たないのが現実なのである。
そして只今、私が介護する方とご対面中デス☆
白黒斑髪な前魔王陛下様。
上記のみだと黒髪が白髪に侵食されつつある、どこにでもいる老人ですが敢えて言わせて頂きます。
老人との共通点そこしかねぇよ………
見た目は30歳くらいにしか見えない美形。魔王様が乙女ゲームの画面から出てきたいかにもな漆黒の魔王様なら、こちらは戦国RPGから出てきた美形戦国武将な美形。兜に付いているような鬼の角が2本生えてますよ。もはや魔族には種類万別な美形しかいないのかよ、と思わずにはいられない心境です。はい。
ツルッパゲ爺様とパーマor紫色白髪染めヘアーのお婆様が酷く恋しくなるとは、人間何が起こるかは分からないもんだね。
だがそこはプロ根性。
世の為、人の為、金の為。
初対面での第一印象は大事です。内心の葛藤なんて金の前には些細な問題。
では笑顔で自己紹介といきましょうか。
「初めまして、こんにちは。この度、前魔王陛下様の介護を承りました、神無月悠莉と申します。若輩者ではありますが、どうぞ宜しくお願い致します」
「ああ」
口数少ないな。もっとフレンドリーにいきましょうや。自己紹介されたら名乗りなさいな。
前魔王陛下を知らないとケアプランがたてられないじゃないか。
そんなことを思いながらも張り付けた笑みで先に進めることにした。
「ケアプランを作成するにあたって前魔王陛下を知らなければ作成出来ません。質問しますので御協力お願いします。まずは前魔王陛下様のお名前は?」
「カイル・モォ」
モォ!?可愛いな!おいっ!
まるで牛の鳴き声ですね。鬼の角も牛の角に見えてくるから不思議だわ。モォ、半端ねぇー。
「カイル・モォ様ですね。モォ様とお呼びしてもよろしいですか?」
「モォは種族名。カイルでいい」
前魔王陛下様の種族名が果たしてモォでいいのか、と思いながらもそこは深く突っ込まない。スルースキルは大人社会で取得済みです。
「はい。カイル様のお年は?」
「……………500?」
髪がサラサラと効果音をつけながら首を傾げるカイル様。美形はどんな動作も魅了付加を付けてくる。
しかも疑問系ですか。
コテンッとした首にそれは狙ってやっているのか!種族霊長類牝として何かが負けた気がする。
「前魔王陛下は我より遥か年輩であろうが。それは我の歳だ」
そこに三者面談の保護者のように魔王様がお助けコメント。
「………じゃあ、600ぐらい?」
「5000はとうに超えておるであろう」
「…………500も5000も変わらないよ」
「うん?それもそうか」
お前ら本当に魔界頂上決戦で争ったのか?仲良すぎでない?そして適当すぎるな。
「推定5000歳でいいですね」
推定年齢を記入しながら特記事項に認知症進行症状ありと記載する。
「性別はありますか?」
「今は………男だった」
どう見ても男性だが一応確認するとカイル様はズボンのウエスト部分を引っ張り中を確認した。
特記事項に猥褻行為ありと記載する。
「身体的に不自由はありますか?」
「………前より鈍くはなった」
「確かに以前より弱くなっていたな」
魔王様曰く、以前は流れ星を見たら三秒以内に願い事を三回言えたのに最近は途中で噛んでしまうらしい。
私は特記事項に発語、滑舌力低下と記載した。
魔王様曰く、以前は極寒の中でかまくらを作成出来たのに最近は寒くて雪ダルマしか作れないらしい。
私は特記事項に低体温症状ありと記載した。
魔王様曰く、以前は金剛石も咬みきれたのに今では鉄しか咬みきれないらしい。
私は特記事項に口腔ケア指導の必要性ありと記載した。
魔王様曰く、以前は街で友達と朝からはしごしながら酒を飲み尽くしていたが今ではそれさえなく家から出ずに魔界通販生活を送っているらしい。
私は特記事項に交流、活性低下ありと記載した。
魔王様曰く、以前は古書の禁断魔術で人間界を滅亡危機に追い込んだ程の読書家だったのに今では魔界TVションの雑誌しか読まないらしい。
私は特記事項に視力低下疑いありと記載した。
魔王様曰く、以前は光速でトイレまで行っていたのに今では音速でしかトイレに行けないらしい。
私は特記事項に自律神経、筋力低下ありと記載した。
私はカイル様の現在の状態を笑顔で簡潔に一言でまとめた。
その結果。
「老化現象ですね」




