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43.洞窟探検

――『あの日』よりも一週間ほど前。



『洞窟はね。けっこう人気ないかな』


 その縁の意外な台詞に、俺はちょっと目を見開いた。


『そうなのか? RPGと言えば、洞窟ってイメージがあるんだけど』


 俺の言葉に、縁は少しばつが悪そうに笑った。


『うん。まあ、そう考えてる人が多かったからね。

 最初はすごい人気だったんだけど、そのせいで、ね』


 えらくもったいぶった言い方をする。

 俺は無言で先を促した。


『洞窟って、暗くてじめじめしてて、岩がゴツゴツだったりデコボコだったりで、おまけに曲がりくねって複雑で、虫とかコウモリとか気持ち悪いモンスターがいて……みたいな、そんなイメージがあるでしょ?

 最初期の、まだHP制もなかったくらいの頃、そんな洞窟に挑んだ何人ものパーティが最悪な目にあったみたい』

『最悪な目?』


 洞窟にチート級の怪物でも出たのかと思ったが、違った。


『湿った地面に足を取られて滑って転んで突き出した岩に刺さってスプラッタしたり、たいまつが消えて焦った魔法使いが火の魔法を使って仲間をこんがり焼いちゃったり、単純に道に迷って三日外に出られなかったり、光源目掛けて虫系モンスターが群がってリアル虫人間が出来たり、とか?』

『うわぁ……』


 どれもトラウマになりそうな体験だ。


『やっぱり、バーチャル世代の現代っ子にリアルな洞窟なんて合わないんだよね。

 今ではどんな複雑な構造した洞窟でも足場はしっかりしてるし、たいまつつけなくても明かりを生む理術があったりそれどころか光苔的な物が自生したりしてるし、ダンジョン脱出アイテムもあったりグロ系のモンスターはあまりいないしで、それこそゲームみたいなクリーンな仕様になってるけど、どうしても最初のイメージがね。

 というか、そもそも……』


 縁の恨み言は尽きない。


 洞窟に歴史あり。

 そんなことを学ばされたその日の話だった。





















「洞窟を攻略しましょう」


 戻ってきた俺たちに、奏也は藪から棒にそんなことを言った。


「しばらく闇の時間、この暗い状態が続くそうです。

 そんな時に、普通のフィールドに出るのは危険が伴います。

 しかし……」

「元々真っ暗な洞窟だったら関係ない、か?」


 先回りして俺が言うと、奏也は嬉しそうにうなずいた。

 それから更に奏也から詳細を聞いて、俺たちは満場一致で洞窟探検に乗り出すことを決めた。



 ということで、約一名を除いてクラスも一新した俺たちは、一路南の洞窟を目指すことになった。


 南の洞窟なんて名前が示す通り、目指す目標は大樹の南。

 南は全体的に北よりもモンスターのレベルは低いものの、洞窟の中ではレベルにして10~12程度の敵が現れるらしい。

 だが、クラスチェンジによって約一名を除いた俺たちの能力は飛躍的に上がっている。

 油断さえしなければ、そんなに苦戦する相手でもないだろう。


 ナイトメアには来たばかりでまだ時間制限まで5時間近くあるが、出来れば早く洞窟に着いて、じっくりと探索をしたいというのが俺たちの希望だった。

 危険を承知でナキにライトの理術を使ってもらって、その明かりを頼りに早足で前に進む。


 森の中とはいえ、暗がりで光をつければ当然目立つ。

 はっきり言っていい的だが、南の森で出て来るのはブレードラビットなどの雑魚モンスターだけだ。

 月掛もいつの間にか索敵系のスキルを習得していたらしく、ほとんどが月掛の遠距離攻撃で倒れ、撃ち漏らした敵も七瀬が一撃で片付けていったため、洞窟までは順調に進んだ。



 洞窟を前に、準備を整える。

 まず隊列。

 奏也の話では、洞窟の中は狭く、人が二人、ギリギリすれ違えるかという程度らしい。

 武器を使うことも考えると、何人も並んで歩くのは得策ではない。

 洞窟では縦に一列になって進んでいくことを決めた。


 隊列は、七瀬、月掛、奏也、ナキ、俺、という順番だ。

 集団への殲滅力で言えば強力な理術を持つナキが、単体への攻撃力で言えば飛竜を切り裂いた俺が、それぞれに一番の力を持っていると思うのだが、攻撃に必ずスキルを使うため、長期戦にはあまり向かない。

 更に言えば、狭い洞窟内で強力な理術を使うのは危険だし、『魔力機動』で高速移動することも難しいだろう。

 そんな判断から、七瀬が先頭、その後ろに中・遠距離に強い月掛が立つという並びになった。


 武器の振り回せない洞窟では七瀬の槍と盾という装備はなかなか便利ではあるし、月掛も投げナイフとショートソードで武装して、洞窟でも戦えるよう装備を整えている。

 基本的にこの二人で敵と戦うことになるはずだが、先程の森での戦闘を見ていると、二人ともそれなりに戦いに慣れたようで、特に不安はない。

 重ねて言うが、洞窟のモンスターはレベル10ちょっと。

 地力では完全にこちらが上のはずだ。


 そしてその後ろ、どこから襲われても危険の少ない真ん中に戦闘能力の低い支援職の奏也を配置。

 その更に後ろがナキ、俺という並びになっていて、逆に背後から敵が来たとしたら、俺が前衛、ナキがその補助として機能して、敵に対応することになっている。

 その話を聞いた時、七瀬が凄く心配そうな顔をしていたのが印象的だ。

 いや、俺はそんなに弱くはないよ、たぶん。


 機能から言えば、真ん中の奏也を起点にした3人パーティが2組という解釈も出来なくもない。

 つまりは常に戦力の半分を遊ばせておく配置とも言えるが、狭い洞窟内ではこのくらいが妥当な所だろう。



 洞窟までは、あっけないくらいに何事もなく着いた。


「気を付けてください。ここからは、敵の質が変わります。

 では、話していた通りに」


 奏也の指示で、ナキがもう一度ライトの理術を掛け直す。

 現れた光の球を先頭に、七瀬と月掛がその後に続いた。


「……狭いな」


 人が二人通れるくらい、というのは話を聞くだけなら広く思えるのだが、実際に体験するとまた印象が違う。

 俺は閉所恐怖症ではないと思っているのだが、こういう洞窟を何時間も歩き続けたら神経をやられてしまってもおかしくないように思えた。


「七瀬、月掛、大丈夫か?」


 心配になって前の二人に声をかけると、


「大丈夫です。……狭くて暗い所って、落ち着きます」

「あたしがこんなの怖がるワケないでしょ!」


 二人の元気のよい返事が返ってくる。

 七瀬の返答には別の意味で大丈夫か不安になりつつも、俺はとりあえずは胸を撫で下ろした。

 そして、当面の危険がなさそうなことを確認すると、


「『オーバードライブ』」


 自分に強化スキルを使う。

 洞窟の中は狭くてとてもではないが『魔力機動』なんて使えないが、それは逆に言えば『オーバードライブ』を使っても問題ないということでもある。


 最後尾の俺に出番はあまりなさそうだが、今回はせめて『オーバードライブ』のスキルレベルだけはあげておこう。

 そう思いながら、俺はナキの後を追って洞窟を歩き出したのだった。



 足場は悪くないものの、あまり視界が利かない場所を歩いているので当然歩く速度は落ちる。

 しばらくは無音の行進が続いたが……。


「月掛っ!」

「分かってる!」


 俺たち以外の生物の気配を感じた。

 索敵班二人の声に、他のメンバーも臨戦態勢に入る。

 遅れて視界に飛び出してきたのは、二匹の闇色のコウモリ。


「ブラッドバッド、LV11」


 あくまで冷静な声で、ナキが『識別』結果を告げる。

 同時に、前でも動きがあった。


「行きます!」


 掛け声と共に、七瀬が動く。

 左手の盾を前に、右手を引いていた七瀬が、勢いをつけてその右手を突き出す。


「ギ……ッ!」


 一瞬だった。

 コウモリが何か音のような物を発したと思ったら、その体を槍が貫いていた。

 振りほどくように槍を振ると、コウモリは光になって消えた。


「っ! あ、あたしも…!」


 それに触発されたのか、月掛が前に出る。

 両手に握った投げナイフをコウモリに向かって投擲し、


(いや、外れる!)


 俺がそう確信した瞬間、ナイフの軌道が曲がって、コウモリを貫いた。

 彼女のユニークスキルだ。

 使えるのは弓だけかと思ったが、どうやらナイフにだって誘導性能はつけられるらしい。


「やりました、奏也様!」


 両手を上げてはしゃぐ月掛を見ながら、


(この調子なら、二人だけでも大丈夫か)


 俺はこっそりと胸を撫で下ろすのだった。



 その洞窟は吸血コウモリ共の巣窟だったが、コウモリ程度であれば例え同時に5匹程度出てきても七瀬と月掛の二人で問題なく処理出来るようだった。

 後衛である俺たちは何も仕事をすることなく、順調に探索をしていく。


 それでも一度だけ、コウモリが二人の攻撃をかいくぐったことがあったが、


「…アイスコフィン」


 冷静に杖を振り上げたナキが、一瞬でそいつを氷漬けにした。


「流石……」


 直進する魔法ではなく、座標指定の魔法であれば仲間を巻き込むこともない。

 しかし、ナキは静かに首を振った。


「…氷に、閉じ込めただけ」


 どうやら動きを封じただけで倒した訳ではないと言いたいらしい。

 しかし、アイスコフィンを喰らったコウモリは氷で覆われていて、七瀬の槍でも歯が立たなかった。


「これは、放っておくしかありませんね」


 奏也の言葉にみんながうなずき、その場を後にしようとした時、


「…待って」


 ナキが俺の袖を引いた。

 しばらく何を言いたいのか分からなかったが、


「ああ、そうか」


 つぶやいて、俺は『真実の剣』を氷漬けのコウモリに振り下ろした。

 氷ごとコウモリが真っ二つになる。


 あいかわらず抜群の切れ味だ。

 しかしこれで、このダンジョンに入ってから初めてパーティに貢献出来たことになる。

 その事実にちょっとだけ安堵の感情を覚えながら、俺が歩き出した時だった。


 ――俺たちの目の前に、今回の探索の目標、『虹色ハリモグラ』が現れた。



 そいつは唐突に、七瀬と月掛の間、洞窟の天井から姿を現した。


「上だっ!」


 俺の叫びに、まず月掛が反応した。


「この!」


 言いながら、ナイフを投げる。

 それは素早いそいつを追尾して、その背に当たったが……。


「効かない?!」


 まるでノーダメージ。

 ナイフは弾かれて、そいつの近くに落ちた。


「駄目です! 虹色ハリモグラに通常攻撃は効きません!

 皆さん、属性攻撃の準備を!」


 言われて、皆が思い思いの支度をする。

 俺はデータウォッチのショートカットキーから炎のシミターを取り出す。


 奏也の話では、虹色ハリモグラは短い周期で体表の色を変え、それがその時のハリモグラの属性を表す、らしい。

 つまり赤なら火属性、青なら水属性、といった具合だ。

 そして、虹色ハリモグラにダメージを与えるには、弱点属性の攻撃を当てるしかないそうだ。


 ハリモグラの色の変化を見極め、すかさずその色と反対の属性を持つ攻撃をぶつける。

 それが虹色ハリモグラの攻略法なのだ。


「疾風突き!」


 ハリモグラが茶色、土属性になった時を見計らって、七瀬が突きを繰り出す。

 しかしその時には既に、ハリモグラの色は赤に変わっている。

 攻撃は通らない。


「アイスコフィン」


 入れ替わるように、今度はナキが理術を発動させる。

 コウモリを凍らせた技だ。

 これならタイミングを外したとして動きを止めることくらいは出来ると思ったが……。


「嘘っ!」


 ちょうど水色になったハリモグラに触れると、アイスコフィンは一瞬で砕け散ってしまった。

 属性が合わないと、拘束魔法の類も無効化されるらしい。


「この! サンダーアロー!」


 武器を弓に持ち替えた月掛が、属性付加された矢を放つが、それを察知したハリモグラは地面に潜ってしまった。

 虹色ハリモグラは洞窟の壁の中を自由自在に潜ることが出来る。

 もう一つの厄介な特性だった。


「光一さん!」


 七瀬の声に我に返る。

 虹色ハリモグラが今度は俺たちの背後、つまり俺の近くに出現した。

 だが、好都合。


「『オーバードライブ』!」


 『オーバードライブ』発動中の俺の反応速度はパーティで一番だ。

 そして、『オーバードライブ』中に『魔力機動』を行えばパーティで最速だという自信もある。

 まだその速度を御し切れていないが、複雑な移動ではなく、直線に、ただ突き込むだけなら今でもやれるはずだ。


(次にあいつが青くなった瞬間、炎のシミターを前に構えて突撃する)


 これならもう、技量がどうとかいう問題じゃない。

 その後で壁にでも激突するかもしれないが、他のどの攻撃よりも速く、虹色ハリモグラに攻撃することが出来るはずだ。


 そして、その瞬間はすぐにやってきた。

 加速された『オーバードライブ』の視界の中で、虹色ハリモグラの体表の色が風を表す緑から青に変わっていく。


(今だっ!)


 俺は即座に『魔力機動』を発動、虹色ハリモグラに突っ込んでいく。

 世界が一瞬で切り替わるほどの加速。


(取った!)


 俺は自身の攻撃の成功を確信した。

 だが狭まった視界の中で、虹色ハリモグラの身体が――


(膨張、してる?!)


 駆け抜ける不吉な予感。

 本能が身体を動かし回避行動を取る、その一瞬前に、


(あ、弾け――)


 虹色ハリモグラが爆発した。

 全身に感じる衝撃。


 全てが真っ白に染まる。




「コーイチ!」

「光一さん!」


 誰かの悲鳴が聞こえる。

 俺の名前、呼んでるのか?


「は、早く、傷薬……」

「駄目。傷が酷い。痛みで発狂する」


 分からない。

 全身の感覚がおかしい。

 身体の至る所が異常を訴えてきている。


「こいつ、死ぬの? 死んじゃうの?」

「そんな! 光一さん!」


 錯綜する声と感覚。

 だめ、だ。

 いしきが、とおのく……。


「死なない。私が、助ける」


 そして、あたたかいなにかが、おれを……。




「…起きた?」


 俺が目を覚ますと、そこには冷え切った目をしたナキがいた。


「俺は……」

「あ、あの、光一さん、虹色ハリネズミの針に当たって倒れてたんです。

 全身に針が刺さってて、もう駄目かと思ったんですけど、ナキさんが理術で……」

「ナキ、が……?」


 七瀬の言葉に、もう一度ナキの方に目を向ける。

 意識を失う直前、身体に暖かい何かが降り注いだような感覚があったが、あれがナキの治療だったのだろうか。


 俺がお礼を言おうと彼女を見た時、機先を制するようにナキが口を開いた。

「…あなたが死に掛けたのは、自業自得」

「え……」

 予想外の言葉に、俺の動きは止まる。


「…あんな攻撃で致命傷を受けるようでは戦力にならない。

 たとえ今は何とか戦えても、敵が強くなれば通用しなくなる」


 辛辣な言葉。

 呆然と聞き入る俺に、


「この先で待ってる。ステータスを変えてから、来て」


 ナキは一方的にそう言い捨てて、さっさと前の方に歩いていってしまった。


「光一さん……」


 七瀬が心配そうに俺を覗き込んでいたが、心配ないと首を振った。

 ナキの言うことは、いつだって正しい。


 あの虹色ハリモグラの攻撃は、広範囲に多くの攻撃を繰り出すタイプ。

 それは回避は困難だが、攻撃力が低いということだろう。

 なのにその攻撃を受けて体にまでダメージが入ったということは、俺の防御能力が群を抜いて低いということだ。


「多分、ナキは俺の迷いを分かってたんだろうな」


 この先、自分の能力をどんな風に上げていくべきか。

 それに迷っていた俺は、保留なんていう、最悪の選択肢を選んだ。

 その結果が、これだ。


「悪いけど、七瀬も見届けてくれないか」


 言いながら、ステータス画面を呼び出す。

 やはり耐久が12と異常に低い。

 俺たちのパーティの中で、一番高い七瀬で160、クラス的に耐久が低い月掛やナキでも40前後はあることを考えると、これはもうぶっちぎりと言えるだろう。


 俺は目の前にある自分の弱点から目を逸らして、判断を保留にしていた。

 その俺の姑息さを、ナキははっきりと指摘したのだ。

 だったら俺は、それに応えなければならない。


「本当は、もっと早くにこうするべきだったんだ」


 言いながら、俺は残しておいた160ポイントのBP全てを一ヶ所に振り分け、


「光一さん! それは……!」


 七瀬の制止も聞かず、俺は決定ボタンを押した。


 その結果が、これだ。



【普賢 光一】


トラベラー

LV:20


HP:150

MP:5

DP:20


魔力:7

理力:0

強化:44

耐久:12

俊敏:13

器用:17

理法:3

克己:21

操作:366

信心:1


BP:0



 当たり前の話だが、変化前と比べてBPが減り、その代わりに操作が倍近くまで上がっている。

 俺の仲間の中にも能力値が300越えをした奴はいなかったので、特化具合ではパーティ一になったと言える。


「な、何やってるんですか?

 というか、これ、どういうことなんですか?」


 なぜか食ってかかる七瀬に、俺は説明した。


「今回のことで思い知ったよ。

 あんな弱そうなモンスターの攻撃で早速防御を破られてるくらいだ。

 場当たり的に耐久を上げても意味がない」

「……は? えっと、でも、じゃあどうやって防御するんですか?」

「特化した操作が威力に反映するような、無属性の防御スキルを探すよ。

 それなら自分のスタイルを崩さず、防御力も上げられる」


 そしてそれが、ナキの伝えたかったこと。

 針の攻撃にも耐えられないような防御で、この先やっていけるはずがない。

 いや、耐久を上げれば少しは戦えるかもしれないが、そんなものは応急処置にしかならない。

 だったら自分の決めた道を乱すなと、ナキは俺に教えてくれたのだ。


 俺が説明を終えると、なぜか七瀬は自分の額に手を当てて言った。


「光一さんって時々、その……頭がおかしいんじゃないかなって思う時があります」

「え、何で?」


 俺の問いには答えず、七瀬は俺を見て、淡く微笑むと、


「でも、そこがちょっと……かっこいい、です」


 俺の心臓をどきんと跳ねさせるようなことを言った。


「え、いや、俺は、そんな……」


 思わずわたわたと動揺する俺に、七瀬は今度こそ掛け値なしの笑顔を見せた。

 そして動揺の収まらない俺に、


「あ、だけど、それ見せたらナキさんには確実に怒られると思うので、覚悟しといてくださいね」


 不吉な予言まで残したのだった。


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