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帰宅です。一泊3000円の宿に。
まあぶっちゃけ城みたいなキランキランした所よりも、私には合っている気がしなくはないです…
カイルですか?知りませんよ。合流して帰ろうとか言ってませんし。
…先に帰るとも言ってないですけどね。
私のこと探してないといーな。
宿の看板娘なおねーちゃんとちょっと世間話して部屋に行きます。
暫くごろごろして、
どうしようかな~カイル待たないで先にゴハン食べいこーかなあでもまだそんな空いてないなあけど暇だしなあやっぱ行くか。
と思った瞬間ドアが開きました。
「深衣…よかった、帰っていたんですね。」
はっはーやっぱ探してたんでしょーか。
「念話も通じないし、魔力たどっても反応しないから、何かあったのかと……何もないならいいんです。」
…はっはーなんだか私が性格悪いみたいじゃないですか。
そんなはずはない。
どうしよう本気で心配してるように見えます。
まあリューイ達のことで自分に見る目がないのは分かりましたけどね。
「ごめんよ~魔術掛けっぱなしだった。」
わざとですけどね。
乙女(笑)にはひとりになりたいときがあるんです。
とりあえず適当に謝って、ベッド脇にあるテーブルの上、ガラスの灰皿を投げつけます。
「女の子の部屋なんですけど。」
もちろん灰皿は魔術でスピード硬さを上げています。
それをギリギリで避けて、カイルはふわっと微笑みました。
うおーい!今笑うとこでしたか!?美形の笑顔って何かむかつくな!
まあいいや。
今の時間は…17時ですか。
夕飯にはちょっと微妙ですよね~。
「カイルお腹空いた?」
「ええ…そうですね、」
「そっかーでも私まだ空いてないからご飯は後ね。とりあえず報告~。」
暇じゃなくなりましたし。
「……ええ、そうですね。」
「魔術師団長は私室に居ました。ただ、何をするわけでもなく外を見ているだけでしたね。たまに客が来ていた様ですが、全て無視していました。」
「…ふーん。いま、術にはなにか変化は?」
「ありません。気付かれてはいないでしょう。」
ま、当然ですよね。
私のオリジナルですし。
「ん~じゃあ録音は?何かされてる?」
「いえ、今の所なにも。」
一人じゃ会話もないですしね~。
小物宰相でもありませんし。
「神官長はなんでも急を要する不備があったらしく、私室にも執務室にも居ませんでした。こちらも録音はありません。」
へーえ、急を要する不備…。
「最後は騎士団長ですが…」
カイルはそこで言葉を切って顔をしかめます。
「なに?」
「いえ、騎士団長は執務室で明日の確認をしていただけでしたが…何だか様子がおかしかったのです。なんというか…何かに必死で抗っている様でした。」
「抗ってる…。」
何にでしょうか?
「録音は?」
「“陛下”に引っ掛かりました。聞きますか?」
頷いて、カイルが術を使うのを待つ。
…『陛下のご様子はどうだ?』
…『そうか、亜衣と…。』
…『いや、なんでもない。この書類を頼む。』
…『…何なんだ、この変な感じは。何かが喉に詰まっている様な…罪悪感か?はっまさか。深衣ではなく亜衣の手を取るとは当然の事だろう』
…『くそっ当然の事だ、当然なんだ…深衣が俺達を裏切ったのだから…』
とりあえず、
「相手の声はどーしたっ」
テーブルの上にある中は飲みきったグラスを投げます。
もちろんスピード硬さ以下略。
今度は近かったのもあって直撃です。
血やべえ。
「いえ…すみません。何ででしょう?」
首傾げんな!可愛くないですから。
「知らないよ。正規じゃなく私が作った術だからとか?」
「ああ…深衣以外には使いこなせないのかもしれませんね。」
これがわざとだったらカイルはあちら側とも疑えるかもしれませんが、片方でも聞こえるなら別に意味ないですよね。
本当にあちら側だったら、そんな微妙なことして疑わせるはずないですし…。
うーん。
「まーいーや。騎士団長が言ってた“深衣が騙した”って何だろうね?」
「そうですね…。宰相あたりが何か吹き込んでいるのかもしれません。深衣、宰相たちの執務室はどうだったのです?」
ああ、そうでした。
次は私の番で、聞いた事を軽く話します。
…ってゆーか騎士団長、最後独り言でしたよね。
…小物……。