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私の癖っ毛とは違い、腰まである艶々のストレート。
いつも濡れているように見える漆黒の瞳に、
思わず触れたくなるような赤い唇。
その上背は高く華奢で、胸だけはいい感じにボリュームがあり括れは綺麗。
「美しい」を体現した様な人だ。
「ねえリュー、本当に私でいいの?皇妃だなんて…務まるのか不安なの…。」
「亜衣…大丈夫。君以上に相応しい人なんて居ないさ。」
「だけど…深衣が行方不明になっている時に、私だけ幸せになっていいのかな…って。確かに深衣は心が優しい訳でもないし、性根が腐ってる、だなんてよく言われていたけど、私にとっては可愛い妹だもの。」
「ああ、君は信じられない程やさしいね、亜衣。だけど彼女は自らこの城を去ったんだ。君が気にすることじゃないさ。」
「そうなのかしら…あの子、常識も礼儀も知らないし友達も居なかったから、ちゃんとやっていけているのか心配で。」
「今、騎士達に探させているよ。きっと見つかるさ。確かに礼儀知らずだったが、人一倍気は強かったからね。なんとかやっているだろう。」
「そうよね。あの子、神経だけは太かったからきっと生きていけているわよね。」
「そうだよ。彼女がいない今、彼女の分まで君が幸せにならないと。」
「そうね。いつだって深衣は私を見て育ってきたから、私が幸せにならなきゃ。…ごめんなさい、明日だって思ったら不安になってしまったの。」
「いいんだよ、君のそんな繊細な所も愛しているからね。」
「まあ…!もう、リューったら。」
……………。
「くすくす、本当のことだよ。それにしても君たち姉妹は似ていないね。」
「よく言われるわ。私はそうは思わないんだけど…。みんな、私となにもかも真逆だっていうの。」
「僕もそう思うよ。髪や瞳の色もだけど、性格がね。」
「深衣の瞳は父方の祖母の遺伝子なの。その祖母があまりいい人じゃなくて。」
「ああ、彼女はその祖母に似たんだね。」
「そうね、確かに似ているわ。でも深衣にも一つくらいいい所はあるのよ?えっと…そうね、…どこかしら。」
「…無いんだね。ふふっ妹のことでそんなに必死になる亜衣も可愛いよ。」
「リュー…」
…………。
……。
部屋を出ます。
この距離なら部屋の外からでも術は掛けれるでしょう。
今回は神官長、騎士団長、魔術団長、リューイの声に反応して録音するように設定。
ああ…もう一秒だってここに居たくないけれど、姉の能力を知らなければいけません。
ふたりの声を聞かないようにしながら、“サーチ”を掛けます。
――――エラー
…?エラー?
もう一度掛ける。
――――エラー
…“解析”。
――――サーチできません。ロックが掛かっています。
ロック?姉がかけているんでしょうか。
さらに解析してみると、どうやら無意識らしいです。
ロック解除が出来ないか探ると…出来るようですね。
ただ三日はかかりそうです。
明日には間に合いませんか…。
まあいいです。とりあえず今日はもう帰りたい。
いや帰るとこなんて無いんですけどね。
宿にですよ宿。
一泊日本円にして3000円。安いですよね~安宿ですから。
だってお金ないんです。
旅ってね、お金かかるんですよ。
しかも魔族倒しながらだから、資金作るのも一苦労です。
私が出来ることって言えば、ちょこちょこギルド行って魔物倒すしかないですからね。
お蔭でランクはAですよ。
Aランクになってからは報酬も多くなったから楽なんですけどね。
面倒ですけどランク試験受けてSSまで上がっちゃおうかな~。
やっぱり何にせよ極めたいですよね。報酬もかなり上がるでしょうし。
………ああ、現実逃避がお金のことってなんか悲しい。