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それから私達は式を見る事も、
リューイの赤っ恥を見る事も、
城の者達の反応を見る事も、
それを見た民の表情も見る事なく、正午前に宿を出て、その日のうちに国も出ました。
後から聞いた話しに寄ると。
リューイは神から賜った魔法を使えないと分かり、最初は騒然としていたらしいが内1人、誰かが叫んだ事によって徐々に、
「神に皇帝と認められていない」とその場の全ての人間から糾弾されたらしい。
姉はそれを庇う事なく、騎士団長の胸の中で傷ついた顔をしていて。
更に城に出入りしていた人間全ての魔力が使えないと分かり、愕然として、
兵士たちは皇帝が神に認められなかったから自分たちにまで火の粉が飛んだと更に糾弾。
ここにも最初に叫んだ誰かが居たという。
貴族たちは保身を守るのが精一杯で、中には一緒になって皇帝を糾弾する者もいた。
…ルナデュール家は、不思議と落ち着いていたらしい。
そして噂と言うには早すぎるスピードで出回った話しに、皇妃となった勇者は偽物で、国は勇者様を裏切ったのだと。
本物の勇者を傷付けた国を神は許さなかったのだとあって。
その場にいた南の大国の王族が、その噂は真実だ、世界を救った本物の勇者様を傷付けた罪は重い、と同盟を反古するとして更に国は混乱に陥った。
民は自分たちを救ってくれた勇者様を裏切った皇帝達を許さず、徒党を作って反逆。
周辺国も似たような事を言いつつ、国土を狙って糾弾した。
騎士団長、魔術師団長は魔力がない状況下では、周辺国どころか民の暴動にも耐えきれず。
神官長は仕えている教にも自国の神官にも、危険思考を持った異教信者と切り捨てられた。
姉は周りからの糾弾にたじろぎ、様々な人に頼った。
騎士団長、魔術師団長、神官長、ソフデュール家、その派閥の貴族。
だが逆に自分のせいにされ、美貌を陰らせても誰も気にしない事に絶望した。
理由が分からない。以前までは、自分が傷ついた顔をしただけで周りから寄ってきた。そんな能力のはずだった。
そんな能力を望んだはずだった。
……深衣?深衣があの時、何かしたというの?あんな子が、この私に?
最後に頼った皇帝は、自分を始めに見限った姉に侮蔑の視線を与え、苦悩の表情で「深衣……」と呟いたと言う。
*
「言った通りだったでしょう?俺は深衣を想って魅了されませんでした。」
「…そうだねえ。なんでだろう?」
「だから、深衣への想いの深さですよ。」
「どうだろうねえ。」
「そうに決まってます。…愛していますよ。深衣。」
「……そうなんだあ。」
私がこの男に惹かれている事は確かだろう。
それが吊り橋効果なのか、本物の想いなのかはまだ分からない。
……だけどまぁ、時間はあるし。暇だし。やることないし。暇だし。
これから一緒に居て、考えていけばいいかなあ。
南の大国、王城の近くの、周りより一際大きい屋敷の一室。
隣の小国を飲み込み、さらに大きくなった大国で勇者は幸せに暮らしましたとさ。