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「その女が深衣の姉君ですか?」


後ろから声がしました。…カイルです。気づかなかった。


「あら…。深衣のお友達かしら?」


姉が頬を赤くしながら言います。カイルを自然に潤んだ瞳で上目に見て、微笑みながら。


カイルは顔だけならリューイと並ぶかそれ以上ですからね。イケメン好きの姉にロックオンされました。


この顔で見つめられて、落ちない男は居ないでしょう。


茫然とふたりを見ていたら、カイルは姉を自然に無視して私に言います。


「なんです。大した事ないじゃないですか。深衣の方が100倍可愛い。」


…は?


「あ、ら…。そうなのよ。深衣はとっても可愛いの。私の妹だもの。」


姉はカイルに寄りながら、私を褒めます。


「深衣、首尾はどうですか?」


カイルはこれも無視。近寄った事によりチラリと見える姉の谷間も無視。


「えーと…上手くいってなかったんだけど…カイルに効いてないって事は、どうなんだろう…?」


戸惑いつつも答えると、カイルは頷いて姉を見ます。


「?」


姉は意味が分からなそうに、だけど可愛らしく首を傾げてカイルを見上げます。


「ああ…無条件に引かれる気配はありますね。まだ封じられていないようです。」


カイルは真剣に姉を見詰めて、飽くまで真面目に言いました。


「そ、そう…。」


「カイル…さん?なんのことを言っているの?」


そこで初めてカイルは姉に答えました。不機嫌そうに。


「軽々しく名を呼ばないで頂けますか。」


「な…っ」


姉は驚愕した顔からショックを受けた顔をします。


「ごめんなさい…なら、なんとお呼びすればいいかしら…?」


また無視。

「深衣、出来そうなんですか?」


私を映す目はどこまでも甘く優しいです。


「え、と。どうだろ…」


だけど私の頭も落ち着いてきました。

何かあるはずです。能力を無力化する何か。



魔力ではなかった。魔力を封じても無意味…世界を渡った事による能力です。そんな物を封じられるのでしょうか?いや、封じる理由なんてありません。戻せばいい。世界を渡る前の姉に。出来るのか?“時間を戻す”なんてしたことありません。失敗したらどうなるかなんて分からない。そもそも成功するかも分からない。



「……ま、いっか。」

姉ですし。


「何かあるみたいですね。」


「うん。成功するか分からないからちょっと離れてて。」


カイルは頷いて、無視され続けプライドを傷付けられたであろう姉はそちらを気にしながらも私に話し掛けます。


「深衣、なんなの?」


「気にしないで、お姉ちゃん。」


私はそう言ったきり、集中するため口を閉じます。


姉は何か言いかけましたが、声が出ない様で喉に手を当て、さらに動こうとして足が動かない事に驚いた顔。


ちょっと口角が上がりました。カイルでしょう。


それから暫く経って―――





「……っはあ、」


「深衣?」


カイルの気遣わしげな声が聞こえます。それに私はニヤリと笑って答えました。


それで私が成功した事に気付いたのでしょう。カイルもニヤリと笑います。


姉だけが意味が分からなそうにこちらを見ています。実際違いも分からないのでしょう。



「ふうっ…初めてだったから疲れちゃった。」


「お疲れ様です。頑張りましたね。」


頭を撫でてきます。

子供か!と思いましたがそのままに。


べっ、別に嬉しいなんて思ってないんだからね!



……テンションが可笑しくなっている様です。


「んじゃ帰ろっかー。」


「そうですね。」


カイルも頷き姉に掛けていた魔法も解いて、部屋を出ます。


「あっ…声が、って、深衣!どこにいくの?私に何をしたの!?」


「お姉ちゃん。私、もうお姉ちゃんに興味ないから黙っていいよ。」



姉が追ってくる気配がしましたが、ふたりで不可視に設定を変えて悠々と歩いて帰りました。




*




宿に帰り着き、一息した所で。カイルが言います。


「それでは、荷造りしてくださいね。」


「え?」


「当然でしょう?深衣は姉君に顔を見られました。後々、全て私達がしたとバレるでしょう。」


ま、当然ですよね。


「今すぐ?」


「ええ。式に興味あるんですか?」


「いや、ないね。」


「ならここに居る理由もありませんよ。」


…そらそーだ。


「だけど行くとこもないじゃん。」


カイルはにっこり笑います。今までで一番イイ笑顔でした。


「俺の生まれ育った国に行きましょう。俺が留学していただけだって知っているでしょう?」


知ってますけど。そんでリューイ達とも仲良かったから、中々イイトコの坊っちゃんだとも思っていましたが。


「……それもいっかぁ。どんな所?」


「隣国ですよ。」


「隣国?………東の?西の?」


「南の。」



…………はあああ?


「南って…あの大国の?」


「そうですね。領地は大陸一ですよ。」


「……そこのイイトコの坊っちゃん?」


「別に坊っちゃんではないですよ。現王の近類なだけです。」


「……爵位は?」


「一応公爵家を継ぎます。」


「……長男?」


「いえ、兄が二人居ますが…。」


カイルは苦笑しました。あれですね。兄より優秀だった訳ですね。


「……なんで留学?」


「恥ずかしい話しですが、家で騒動がありまして。避難と言う事です。……まぁ、更に危険な魔王討伐なんて行きましたが。」


あれですね。兄が反抗したんでしょうね。

で、更に手柄を立てたと。


「大丈夫です。もう収めましたから。」


「…ソウデスカ。」

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