虹の勇者
ヴォルカノ火山でようやくラエンとの決着がつき、俺に抱きついてきた恵美は甘えるように寄りかかってくる。彼女の温もりを確かめるように抱き返し、生きていることと帰ってこれたことを実感する。
もしも、あのときラエンにマグマに投げ込まれ、巴と火の精霊王ソルに助けられなかったら俺は死んでいた。火の精霊王ソルはマグマの中で平然と活動できるが、巴を乗せているということで熱を遮る障壁を張っていたため、ちょうど俺が投げ込まれたときに彼らに助けられた。
傷ついた俺を治してくれたのはソル。巴は俺に〈欠片〉の力を解放するためのアドバイスをくれた。ソルの遠回しな己の願いと想いを込めて力を求めよ。さすれば扉は開かれぬ。という言葉を巴が簡単に説明すると……。
自分のやりたいことを願い、それを現実に実行させることができること。また、〈欠片〉を解放したときは魔力が増幅され、最上級の魔法まで唱えることさえできるのだ。
俺の場合、ラエンが獅子円舞によって無数の炎の獅子を生み出したときに〈欠片〉を解放した。頭の中で俺の周りに雷の刃を、と想像したら現実に反映された。
ラエンから〈火の欠片〉を取り出すときも、〈欠片〉を解放していたが……。これは自分の思うままに力を振るえてしまえるからこそ、精霊王たちが管理、または封印している。
〈欠片〉を解放すればもちろん代償を支払うことになる。大きな力を使えば反動も大きく、また少しだけならばそれほどでもない。いまのところ、〈欠片〉を解放した代償などない。
いまはラエンとの戦いを戦いを終えて、腕の中には甘えるように抱き締めている恵美と久々に出会った巴と会話していると憎たらしいアイツの声が聞こえた。
「僕のハニーを返せ、悪魔ぁ!」
「……っ」
虹色に輝く剣を上段に構えて姿を現したのは、虹の勇者アレク。腕の中にいる恵美を突き飛ばすすら間もないぐらい、アレクは迫ってきている。巴ですら居合いをすること時間がない。
くそっ、アレクにとって恵美は大切な存在じゃないのかよ!? 葛藤しながらこの状況を打破するために〈欠片〉の力を発動させようとした矢先――奴が一瞬に俺たちとアレクの間合いに現れ、その背で剣を受け止めた。
壁となってアレクの振り下ろされた虹の剣を防いだのは、さっきまで殺し合いをしていたはずの相手――ラエン。痛みを押し殺した声を漏らし、彼は拳を握り締めてその場で回転し、火を宿らしてアレクを殴った。
勢いを乗せた一撃によってアレクは遠くまで飛ばされ、役目を果たしたように倒れるラエン。彼の背中から血が溢れていき、ヴィヴィアルトの名を叫ぶ。
「頼む、ヴィヴィアルト、こいつの傷を塞いでくれ!」
「は、はい! わたしに任せてくださいっ」
返事を返したヴィヴィアルトはすぐにここに来るだろう。腕の中にいる恵美は眠たそうな目をしていたが、しっかりと大きな瞳を開いて自分の足で立つ。
「ねえ、吉夫くん。もしかして……」
「ああ、あのバカがやって来た」
倒れているラエンの状態を知った恵美は、遠くに飛ばされたアレクを睨みつける。ラエンから取り返した〈火の欠片〉を恵美に渡すと、吸い込まれるように彼女の中に溶けていく。〈欠片〉を取り込んだことでラエンとの戦いで消費したはずの魔力が彼女からあふれてくるのを肌で感じた。
「〈欠片〉って……すごいね、吉夫くん。魔力が回復したおかげでまだ戦えそうだよ」
「無理するなよ。魔力が戻っても体力はそうじゃないだろう」
警戒しながらもお互いに敵の姿を見据えると、頭部を兜で隠し、手甲と脚絆を装備している巨漢が映った。鍛えられた肉体を見せつけるかのように上半身裸で、背中には斧と大剣を背負っている。
あの巨漢の相手は誰ができるのか、と思っていると巴が自ら任せて欲しいと俺と目を合わせてそう言った。
「いけるか、巴?」
「私を誰だと思っているの、兄さん」
黒いローブを脱ぎ捨てた巴。その下には彼女が着ないと決めたはずの巫女服を身に纏い、俺に淡く微笑んで刀を構える。
「お兄ちゃんが大好きな妹だろう?」
「ん、茶化さないでよ、バカお兄ちゃん。――いってきます。無影」
右足を前に出し、腰を落として放った巴の居合い。鞘走りの音が響き、複数の黄色い刃が宙を飛び交う。さまざまな角度から放たれる巴だけの居合い――無影。
巴は無影を放ち終えてから刀を鞘に収め、巨漢に向かっていく。巨漢は迫りくる無影を大剣でなぎ払うとあっさりとかき消され、斧を大地に叩きつける。
土煙と同時に出現する太い大地の棘――大地の棘。巴はそれをかわしながら、間合いに入って居合いを放った。躊躇いもなく振るわれた巴の一撃で巨漢の命が散る――はずだった。
金属同士がぶつかり合った音が響き、巨漢は何ごともなかったように距離を取った巴へと大剣を振り下ろすが彼女は無事にかわした。
そこへ復活したアレクが誇らしげに巨漢――マシャードのことを説明していく。
「はははっ。マシャードの肉体はまさに鋼だから、それぐらいの攻撃ではかすり傷一つ負わないからな!」
「兄さん、あのバカ誰?」
「恵美を狙う変態で、俺のことを悪魔呼ばわりする阿呆だ」
巴は興味がなさそうにふーんと呟いて、刀を上段に構えた。光を吸い込むような黒い刀身はまるで闇のようで、彼女はそれを振り下ろし、次になぎ払う。
交差するように放たれた黒い斬撃――十字。それが巴の扱う剣技の一つ。マシャードは臆することなく、大剣でかき消すためになぎ払おうとしても、抵抗もなく分厚い刀身は斬られた。
黒い斬撃はそのままマシャードを後ろに飛ばされ、あとを追いかけるように巴が大地を駆け抜ける。
「マシャード!?」
驚きの声を上げるアレクは動揺していた。いまならば楽にあいつを仕留めることができるかもしれない、と思いながらも全身に雷を宿して奴との距離を詰めていく。こっちに気付いたアレクは慌てて虹色の剣を抜き放とうとするが――遅い。
居合いをアレクの首へと叩き込んだ――はずなのに姿が消えた。足に雷を込め、どんっと足跡を残すくらい踏みつけて、周囲に撒き散らす。大地に雷が迸り、警戒し続けているとばちっと弾ける音が聞こえ、なにもないそこへ斬り込む。
隠蔽魔法を扱っていたのか、大地と同化していたアレクの姿がくっきりと現れ、首元から血を流しつつ左腕の小型の盾で防がれた。このまま押し込もうとしたら、受け止められた状態で後ろへと飛ばされる。
「アレク様、支援します!」
女性の声とともに透き通るような歌が響き、アレクの背後から火炎の弾と水の矢がいっせいに俺へと降り注ぐ。後退しながらかわしてき、右手に雷を集めて俺に迫るそれらへと放つ。
一条の閃光は火と水の魔法を呑み込み、晴れた視界の先には茶色と青のオッドアイの少女がいた。尖っている耳に黒ぶちメガネ、黒い髪を三つ編みにしてそばかすがあって、素朴な雰囲気をかもし出す。桃色のドレスを着ている彼女は、歌を紡ぐ。
透き通るような声と同時に魔法が生み出される。今度は地面から火柱が吹き出し、宙から氷の棘が降ってきた。これは防御さえ間に合わない――
「よっしー、動くんやない! 」
背後から聞こえた鈴音の声。俺を中心に黒い魔法陣が浮かび上がると火柱が自然と消えていき、氷の棘は霧散していく。全身に纏わせていた雷さえも消えていたため、再度纏う。
「残念やなぁ。うちの前では無力やで?」
「くっ……」
鈴音は漆黒の槍を手にして、悔しそうな表現をする少女と対峙するが相手はリベンジするように歌う。亀裂が入った大地から炎があふれ出し、そこから鳥や狼など生み出されて鈴音に牙を向く。
「ちぃと骨が折れそうやないか。よっしー、彼女はうちが抑えるからな」
炎によって次々と生み出される獣たちを前に、鈴音が闇魔法を唱えると消えるが、嘲笑うように彼女の背後に炎の蛇が鋭い牙を突き立てようとする。
俺が彼女に声をかける前に鈴音は漆黒の槍を振るうと伸びて、矛先で貫かれる。鈴音の槍が連結式であることを忘れていた俺は、ハーフエルフの少女を彼女に任せることにした。
「わたしは負けるわけにはいきません!」
「うっさいなぁ。黙って潰れんかい」
獰猛な笑みを浮かべる鈴音は漆黒の槍の矛先を少女に向け、前触れもなく出現する炎の獣たちを闇魔法で打ち消しながら迫っていく。二人の間にいたはずのアレクの姿はどこにもなく、慌てて恵美のほうを見ればそこに奴がいた。
恵美を守るように拳を構えるアマリリスに、アレクは剣を片手に近寄っていく。
「さあ、ハニー。僕が迎えに来たからもう怖い思いなんてしなくていいよ。そこの獣人、さっさとハニーから離れてくれ。獣臭くなるだろう」
「はぁ!? あんた、喧嘩売ってんの? ぶっ飛ばすわよっ。いいえ、ぶっ飛ばすわ。あんた、のぞきした上にあたしの幼馴染を斬ったからそうさせてもらうわよ!」
拳に炎を宿し、油断していたアレクの胴体へと叩き込まれた。そこはラエンが最後に殴りつけた場所であり、同じとこをやられたアレクは歯を食いしばって痛みに耐えて、彼女を睨み付けた。
虹色の剣を向けるアレクに、静かに来いと黒剣を呼び出すと応えるように現れ、それを握り締める。雷を流して上段に構え、振り下ろす。
放たれた雷の刃はまっすぐにアレクに飛んでいき、それに気付いた奴は虹色に輝く刀身で切り裂く。
「レナの役立たずめ。僕がハニーを手に入れるまで時間を稼ぐことすらできないのか」
「仲間を役立たずって言うじゃないわよ! 獅子波動!」
剣を振り下ろした状態のアレクに、アマリリスの獅子波動が当たる。その隙に俺はアレクとの決着をつけるために距離を詰め、炎に包まれている奴に剣を振るう。
が、炎の中から青い刀身をした剣が伸びて、交差した。
「悪魔っ。いまから僕がおまえを倒して、ハニーを手に入れる!」
「やれるもんなら、やってみやがれよ!」
距離を取り合い、どちらかが先に仕掛けるのか睨み合っているとアレクの剣は緑色の刀身へと変化。渦巻け! と命じると奴を中心に竜巻ができる。
剣を大地に突き刺して、吸い込もうとする竜巻から耐えようとした矢先に足元がぼこりと膨れあがる。
「吹き飛べ!」
凄まじい勢いで水が間欠泉のように吹き出し、俺は宙に飛ばされる。一瞬だけ飛びかけた意識を取り戻し、風の魔導具を使って宙で体勢を整えて、雷を集めて放つ。
一条の閃光ではなく、分散と命じれば分裂し、槍のように細長く変化していく。広範囲の攻撃に剣を構えていたアレクは驚いたように大地に突き刺す。
奴を守るために分厚い円状の土のドームへと地面が変化していき、分散が当たったとしても傷一つさえつけることができなかった。くそ、あの虹の剣予想以上にやっかいだ。
「光と闇よ、僕の意思に従え!」
虹の剣を掲げるアレク。刀身は黒と白が入り混じった色になり、刃は巨大化していく。これを振るうとしても、俺には当たらないと楽観視していると……これをよければ違う場所で戦う鈴音、巴、離れた場所にいる恵美たちにもどんな被害が出るのかわからない。
着地した俺は黒剣に膨大な量の雷を流し込んで、構える。
「もう誰も大切な仲間を失わせない」
自然とこぼれた言葉は俺が誰も失いたくないから。大切な仲間は俺にとってかけがいのない存在。そいつらを守るためなら、俺はいくらでも代償を払ってやる。
「〈雷の欠片〉解放――」
――仲間を守る力を俺にくれ。
白と黒が混ざり合い、生み出された巨大な魔法の刃が振り下ろされた。剣に雷を流し込んでいるせいか、なんとかその一撃を受け止めることができたが、それだけで足場は沈み、柄を握っている手はいまにも放り出したいほど熱い。
「消えろ、悪魔ああぁ!」
ぐっと増す重みは、一瞬でも気を抜いたら切り裂かれる。どっとあふれる冷や汗。限界を示すように震える両腕。こんな……こんなところで、死んでたまるかぁ! 俺にはまだやりたいことがある。だから、力を貸せよ、ヨシュア!
――しょうがないな。これで僕が君に力を貸すのは最後だよ?
「はああっ!」
優しい音色を奏でる男性の声が響き、黒剣は輝きだし、光と闇が混ざった魔法の刃を切り裂いた。
――でも、あとで僕がいる場所に来てくれることが条件だよ?
「わかった」
――僕と彼を助けてくれるのは、君たちしかいないからね。
ヨシュアの声が聞こえなくなる。助かった。彼がなにを求めているのかわからないがいまはこちらが最優先だ。
視界には剣を振り下ろした状態で呆然とした顔がしたアレクが映る。これ以上ない絶好の機会。脚に雷をまとわせて大地を蹴る。俺が向かってくることに気付いて、アレクは慌てて虹の剣を大地に突き刺そうとしても――遅い!
「おまえの、負けだっ」
虹の剣を大地に突き刺される前に、アレクを切り裂いた。奴の身に纏っている計鎧には袈裟斬りの痕、そして握っていた虹の剣は刀身が半分に斬られ、それでもなお虹色に輝く。
膝をついて、半分となった虹の剣を手放さないアレクに負けを促すように剣先を首元に突きつける。もう動ける体力はないだろう。そう安心して巴と鈴音の様子をうかがうと、彼女たちも決着がついたようだ。
巴はマシャードの鋼の肉体に深い傷跡を刻み、相手はうつ伏せに倒れている。彼女は刀を鞘に収め、抜刀できるように警戒していたが俺が勝つと知るとそこから手を放した。
鈴音はレナに魔法を使わせないためか、彼女の足元には漆黒の魔法陣が浮かんでいて、さらに身動きできないためにロープで手足を縛っている。「祓い」は魔物を引き寄せない効果があるはずなのに、人にもできるのか、と改めてすごい魔法であると知る。
悔しそうに鈴音を睨むレナであったが、彼女は何かに気付いたようにこちらを向いた。
「アレク様!? 嘘……負けるだなんて……」
信じられないという表情を浮かべるレナ。彼女のことなど気にすることなく、戦いに負けて呆然とするアレクに問いかけた。
「おまえ、聖都で派手に暴れたみたいだな」
「……」
びくっと身体を一瞬だけ動かすアレクが意味するのは肯定か。巴とソルに助けられたときに、聖徒でアレクが好きなように暴れたと彼が教えてくれた。精霊王同士、たとえ遠くにいても念話を飛ばして会話ができるため、ソルは聖都にいる光の精霊王からその情報を得た。
「それで虹の勇者を名乗るなんて、人間と最低だな、アレク」
「あなたはアレク様のことを知らないからそう言えます! アレク様は魔物に襲われていたわたしを助けました。奴隷として売られていたマシャードを助けました! あなたはなにも知らないくせに――」
「そんなこと知るかよ。おまえらの出会いなんて興味ないから、黙ってくれないか?」
オッドアイの瞳に涙を浮かばせるレナを正面から否定し、黙らせるために突きつけるような言葉を口にする。アレクが彼らにとってよい人かもしれないが、俺たちとってはいい迷惑だ。
恵美のことをハニーと呼んだり、聖都で暴れたり、火の精霊王であるソルに手を出したり。もうこれ以上なにも起きないように、ここでアレクを殺す。
剣を振り払い、アレクの首を斬り落とす――はずだった。諦めの悪いアレクはぎりぎりでよけたおかげで剣は空を斬り、奴は半分となった虹の剣を掲げた。
「僕からハニーを奪うおまえに全力を出して倒してやる。覚悟するんだ!」
答える気にもなれず、剣先でアレクの頭部を貫こうとしたら、奴を守るように光のドームによって弾かれた。まずい。何をするのかわからないが、いま潰さないと取り返しのつかないことになりそうだ。
だが――一足遅かった。
「僕は虹の勇者アレク! これからが本当の戦いだ!」
アレクの身体から聖なる魔力があふれていき、眩しい光に包まれていく。
「はははっ、これこそが僕の真の力だ! マシャード、レナ! おまえたちの力も解放してやる。なぜなら、おまえたちは僕の道具だからなっ」
光が収まると、そこにいたのは修復された虹色の剣を手にして、金色の鎧をまとうアレク。胸の中心には手の平ほどの大きさが埋め込まれ、見覚えのあるそれから放出されるのは聖なる魔力――〈欠片〉だ。それも聖都で光の精霊王が管理しているはずの〈光の欠片〉。
これをあっさり使うってことは、アレクの意思が強いせいか……!
変化が起きたのはアレクだけではなく、マシャードとレナにも同じことが起きていた。
檻から解放されたことを喜ぶようにマシャードが獣の咆哮が響かせ、それが同一人物なのかと疑ってしまう。手甲と脚絆を装備していたはずのマシャードはなにも身に着けず、全身は鋼のように変化していく。頭部の兜も外し、現れたのは鋭い目つきをしたゴリラの顔。
鼓舞するように胸を力強く叩くマシャードは、巴に狙いを定めて俊敏な動きで襲いかかる。巴は異変に察していたおかげでマシャードの一撃をかわした。が、彼女が刀を抜く前にマシャードの豪腕が振り下ろされ、大地を揺らす。
巴は紙一重でかわしていたけれども、さっきまで彼女が立っていた場所にはクレーターができている。
「あ、ありえへん!」
動揺している鈴音のほうからは、透き通るような美しい声が歌を奏でていく。その歌によって、赤と青の魔法陣が出現していき、やがて形へと変化していく。
ぼうっと燃え盛る炎があふれたと思えば、レナを守るように腕を組む炎の魔人が現れ、青の魔法陣からは馬と人が一つになった生物――氷のケンタウロスが出現と同時に優雅に弓矢を構え、射た。
放たれた氷の矢を鈴音は連結式の槍で弾き、歌うのをやめたレナはメガネを外して茶路と青の瞳を彼女に向けて、召喚した二体に指示していく。レナ自らも弓矢を構え、それを彼女に向けた。
一瞬にして鈴音は不利となったが、助けにいけない。
「さすがは僕の道具たちだ。これでおまえは僕に勝てる可能性が減った」
自分の仲間ではなく、道具として扱うアレクの声は自信にあふれている。そんな奴に俺は苛立ち、確かめるように訊く。
「道具である彼らが死ぬことになっても、おまえは悲しまないのか?」
「当たり前じゃないか! 道具なんてしょせん使い捨てさ。壊れたり、使えなくなったら新しい道具にすればいいだけのこと。そうだろう?」
「人は道具じゃねぇぞ、糞野郎」
何を言っても通じそうもないアレクとは釣り合わないと判断し、こいつから〈光の欠片〉を取り戻さないといけないから、今度こそ殺す。
「さっさとかかってこい、アレク!」
「それは僕のセリフだ、悪魔ぁ!」
本気になった虹の勇者アレクの虹の剣と黒剣が交差し、俺は仲間の無事を祈りながら剣を振るう。