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7話 うまいは正義か冒涜か!?

 決闘以降、僕がギルドに行くと必ずこうなる——


「水虫剣士様のおいでだ!みな通路を開けろ!」


 ザァァァァ…………


 皆が道を作ってくれる。


 水虫って……


 僕は、もう気にしない!


 でも何故か雫が頬を伝う……


「いらっしゃいませ、マルク様。本日のご用件はどういったことでしょうか?」


 いつもの受付嬢がにこやかに対応してくれる。


「すみません、確認したいんですが」


「ドラボテ村に行く護衛依頼とかありますか?」


「ドラボテ村ですか……少々お待ちください」


 ドラボテ村、僕らの故郷の村だ。


 エミリが言うには、一度剣を使ったら戻ってこいとゲンさんの手紙に書いてあったのだとか。


 ちなみに、ドラボテ村は3年前に名前が変わったのだった。


 前はナナーシ村だったね。


「お待たせ致しました。まだ張り出されてはいませんが、七日後にドラボテ村へ行く便がありますね。お受けになりますか?」


 それを聞いたエミリが「受けます」と嬉しそうに言った。


「わかりました。マルク様とエミリ様。ドラボテ村への護衛依頼、よろしくお願いいたします。……依頼表は二日前お渡しいたしますのでお忘れなく」


 僕とエミリは掲示板に向かう。


 掲示板の前はかなり空いていた。


 依頼を受けた冒険者たちが依頼表を手に、受付に並びだしていたからである。


 僕とエミリは残った依頼を見ていく。


「あ!これよさそうね」


 エミリが何か良い依頼表を見つけたらしい。


 僕も見せてもらう。


 “ブルボーン討伐依頼

  ブルボーンの肉1頭分

  納品お願いいたします

  推奨ランク B

  料亭 うまうま亭”


 ブルボーン。性質は凶暴であるが、その肉は甘みがあり口の中でとろける程の最高級肉である。


「でも、討伐しても持ち帰れないよ?どうするの?」


「ふっふっふ~ん!」


 エミリが不敵に笑う


「ジャーン!アイテム袋手に入れてたの!」


「な、なんだってー!?」


 僕は驚いた。本当に。


「エ、エミリさん?それってかなり高額のアイテムですよね?」


「うん!金500000したからね!」


「そんなお金ありましたか?」


「……女の子には秘密があるの……言わせないでよ」


 何赤面しながら言ってるの!?


 もじもじしないで!


「そんなわけだから、持ち運びは問題ないよ!」


 にこりと微笑む。


 エミリは依頼表を持って、いつもと違う受付に並びに行く。


「次の方どうぞ」


 エミリの番が来た。


「確認します……あらこちらランクBからですが、すみませんがエミリさんのランクは?」


「Dだよ」


「それだとこの依頼は受けることが出来ませんが……」


 エミリが泣きそうになってる。


 僕がエミリに諦めようと言おうとしたら


「あ、マルクさんのパーティの方でしたよね?」


「……はい」


「なら大丈夫ですか。マルクさんいますからね」


 当然の様に言って微笑む受付嬢。


 何か勘違いが加速してませんか?


 しかし、エミリの人見知りで内気な性格はなかなか治らないね。度胸はあるのに……


 僕といるときは平気なのにね。


 そんなだから僕たちは、他の冒険者と組んで依頼を受けたことが無いんだよね。



 依頼を受けた僕たちはブルボーンが居る高原へと歩みを進めている。


「ブルボーン、美味しいって聞くけどどんな味がするんだろうね?マルクは食べたことある?」


「無いよ、高級肉でしょ?調理されたものは安くても金30000するって話だよね」


「ならさ!自分たちの分も狩ろうよ!」


「いいかもね!」


「あ!あれじゃないかな!」


 エミリが遠くに見えたブルボーンらしき獲物を発見した。


 僕たちは近づく……近づいてるんだけど、近づけない……?


 あれ?距離感おかしい?


 ようやく近くまで来た僕たち。


 そこにいたのは体長は僕の十倍くらいありそうな巨体であった。


 僕はその場で回れ右をした。


 エミリに首元を掴まれた……


 エミリの無言の圧力——

 逃げるな……だ。


「わ、わかったよ……」


 僕は剣を構える。


 体が震える。


 恐怖心が体を支配する。


「ぼぼぼぼ、僕だっててて、えええSランクのけけ剣士に勝ったんだ!いいいいくぞ!!」


 駆け出そうとしたとき、巨大ブルボーンが前足を地面に叩きつけた!


 ドゴーンッ!!


 地面が揺れる!


 バランスを崩す僕。


 はい!回れ右!


 這いつくばって逃げ出す!


 ブモモモモモモモ!!!!


 雄叫びを上げる巨体!


 僕は振り向いて巨体を見上げた!


 そして、僕が目にしたのは、


 ゆっくりと巨体の首が落ちる姿だった。


 ズシッ……


 エミリが少し離れた場所で剣を振り抜いていた。


「やったー!お肉だよ!いっぱいだよ!」


 嬉しそうに飛び跳ねている。


「あと一匹いないかな?」


 エミリは次の獲物を探している。


 僕は腰が抜けている。


「いたよ!」


 少し離れた場所に、小柄なブルボーンが居た。


「ちょ、まって!僕、腰が……」


 エミリがこちらを見て、


「しかたないな~」


 そんなことを言いながら肩を貸してくれる。


 そのまま近くまで来た頃には僕は歩けるようにはなっていた。


「今度こそ僕も」


「うんうん!その意気だよ!」


 僕は剣を構えて、柄頭のカバーを外す。


 柄頭に口を当てて、一気に息を吹き付ける!


 パンッ!


 小柄なブルボーンが倒れた。


「やったぞおお!倒したああ!」


 僕は喜んだが、エミリは不満そうだ。


「えー、剣で切らないの?」


「怖いから無理です!」


 僕はへっぴり腰のまま言い切った。


 エミリは不満そうにしながらも、二体のブルボーンをアイテム袋に収納していく。




 街に戻った時は夕刻だった。


 ギルドに討伐完了報告をしに来た。


「お疲れ様です。依頼の方は順調ですか?」


 いつもの受付嬢が依頼経過を確認してきた。


「依頼完了の報告ですよ」


「え?もう終わったのですか?ブルボーン討伐は時間がかかると思ってましたが」


「そうなんですか?よくわからないですが」


「でも、マルクさんなら案外楽勝だったんでしょうね」


 受付嬢がにこやかな顔で、語っている。


 僕だと何で楽勝なの?


「では、依頼の品を倉庫の方で受け取りますので、ご案内いたします」


 倉庫に来た僕たち。


 エミリがアイテム袋から二体のブルボーンを取り出した。


 それを見ていた人たちが黙り込んだ……


「マ、マルクさん……このブルボーンですが、上位種のブルブルボーンですよ?こんなのどうされたんですか?」


 受付嬢が驚愕の目で上位種と言われたブルボーンを見ながら言った。


「おい!見ろよあの切り口!一刀両断だぞ!こんな綺麗な切り口見たことねぇ!」


 現場の解体作業員が驚いている。


 あれ?エミリっていつも『こんなの普通よ』って言ってたけど、違うのかな?


「えと、依頼の方はどうなります?」


「あぁ、そうですね、依頼はブルボーン一体分のお肉ですから……こちらの小さい方で問題ありませんよ」


「じゃあ大きい方は持ち帰ってもいいですね?」


 言うと受付嬢が僕の肩を力いっぱい掴んで来て。

「待ってください!これ二人で食べるんですか?独占するんですか?許されませんよ!?それは神への冒涜!あなたに慈悲はないんですか!?」


 受付嬢さん……


 目が本気で……


 怖いですよ……


 周りの作業員や、何事かと見に来た冒険者さえ、受付嬢の言っていることに賛同している。


「いいですかマルクさん!」


「はい!」


「この上位種はほとんど見られない貴重な物です!」


「はい!」


「特に上位種の、ブルブルボーンに関しては神の肉とさえ言われている貴重な貴重なお肉なのです!!」


「はい!」


「それを二人だけで独占なんて!見せられた私たちはどうしたらいいんですか!?」


「はい!」


「そこで提案です!切り分けて皆でバーベキューにするのはどうでしょうか?」


 僕はエミリに視線を移してみたら……エミリが怯えていた。


「わ、わかりました……バーベキューにしましょう……」


 いいよね?エミリ。


 エミリも小刻みにうなずいている。


 食に関して、受付嬢は異常なほど鬼気迫る感じがして怖かったです。


 その後、ギルドの敷地内でバーベキュー大会が始まった。


 うわさを聞き付けた人たちも集まってきてお祭り騒ぎである。


 受付嬢や他の冒険者たちも大変満足そうに食べて、飲んで、笑っている。


 僕もエミリも、こんなにうまい肉を食べたのは初めてだったのである。


「マルク」


「なに?」


「また狩ってこようね」

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