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6話 意味が分からないよ!

 闘技場は静まり返っている。


 お互いの出方を伺っているのか。

 一人は余裕の笑みを浮かべ剣先を相手に向けている。

 もう一人は両手で剣を持ちながら、横に動きながら相手を伺っている。


 ……そんなカッコいいもんじゃありませんよ!


 ココイルさん、マジでスキ無いよ……


 ど……どうしよう、カエリタイ。


「いつまで待たせる気かね?エミリさんのお荷物君!」


「ずっと待っててください!」


「ふっ……、恥ずかしくないのかね?」


「大丈夫!恥ずかしくありません!ズボン履き忘れて歩くよりは!」


「君にはプライドは無いのかね?」


 ココイルさん、イラついてきちゃったよ……どうしよう。


「ぷ……ぷらいどぽてと!」


 僕の思考はおかしくなってきた。

 緊張がおかしくなった思考回路を後押ししている感じだ……


「観客もそろそろ飽き始める頃だな……こちらからいくぞ!!」


 ガッキーン


 瞬間的に僕の間合いに入ってきて強烈な一打を上段から放ってきた。

 僕はそれを受け止める!


 お、重い……だけど……


 だけど、エミリよりは軽い!


「だぁぁぁぁぁぁっ!!」


 受けた剣を何とか弾いた。


『おおおっと!!ココイルがマルクに切りかかったぁぁぁぁ!!マルクこれを受け止めたぁぁぁ!!Sランクキラーは本物か!?いや、まだわからない!!どうするマルクゥゥゥゥ!!!』


 実況が始まった。


 歓声が沸き起こる。


『ここからココイルの連撃が始まったぁぁぁぁぁぁ!!マルクに成す術はないのかぁぁぁぁ!!』


「それそれそれそれ!」


「あん!んっ!だめっ!そこは!」


「変な声を出すんじゃない!!!」


 失礼な!!僕は本気で……本気で受け止めるのが精一杯だ!!!


 ココイルは距離を取った。


『おおっとぉ!ココイルが距離を取ったぞおおお!?何をする気だぁぁぁ!!!』


「君にSランクでも、一握りの選ばれた人間しか使えない技を見せてやる!!君ごときにこれを見せるのは不本意だがな!エミリさんの為だ!これを見ればエミリさんも考えが変わるはずだ!!」


 ココイルは腰を落とし剣を後ろに構えた。


『おおっとぉ!!ココイルが何やら構えたぞ!!これは、もしやぁぁぁ!!剣士の中での一握りの人物しか出来ないと言われるあの技かぁぁぁぁ!?』


 オオオオオオッッッ!!!


 観客が盛り上がる!!!


 ココイルの構えが!!!


 さらに観客の熱を上げる!!!


 ココイルの表情が変わった……


 ≪ 一閃 ≫


 斬撃が飛んでくる……


 僕は膝から後ろへ倒すように斬撃をかわす。


 ……エミリより遅い。


「はははよくかわしたな!次もかわせるかな?」


 再び斬撃の準備に入る。


 僕はがむしゃらになってココイルの場所まで走った。


「遅いぞ!」


 ≪ 一閃 ≫


 僕はジャンプして斬撃をかわしてココイルの頭めがけて剣を振り下ろす……が


「君は本当にSランクを破ったのかい?弱い!弱すぎる!!」


 ごもっともです。ただの偶然が重なっただけですから……


『マルク!斬撃をかわしココイルに切りかかったが防がれてしまったぁぁ!!』


 ココイルが連撃を仕掛けてきた。


 僕は防戦一方になる。


 かわせない速度では無いけど、一撃一撃が重い。


 どうしてこうなっちゃったんだろう、泣けますよほんと。


 ココイルの連撃を受けてたらいつの間にか柄頭に付いていた物がはじけ飛んでいた。


「しかし、君はしぶといね!この僕の連撃を受けてまだ息も上がっていない」


『マルク防戦一方だぁぁぁ!!成す術なしか!!』


 観客席から次第に僕に対してのブーイングが起き始めていた。


「あいつほんとは弱いんじゃね?」

「ゴブリンやダークスネイクも、誰かの横取りしたんじゃねえか?」

「それ、ほんとだったら最低だぜ!」

「嘘つきぃぃぃ!!」

「さいていやろぉぉぉぉ!!」


『おおっと!!観客席からマルクに対してブーイングが起き始めたぁぁぁ!!かく言う私も疑い始めているぅぅぅ!!!』


 えええ!!勝手に間違えといてそれ!?ひどくない!?泣くよ!!



 かなり時間が経過した。


 ココイルが肩で息をしだしてきた。


 僕も息は上がっていないが、体が持たなくなっている。


 しかし、ココイルは本気を出していなかったのかな?


 エミリの攻撃のほうが重いし、速いし……斬撃の動作も遅すぎだよ。


 まさか……勝たを譲ってくれるのか?なわけないかな。


 そろそろ、本気で倒れそうだ……体が重くなってきた。


 僕は握っていた剣を見た。なんか違和感があった。


 僕は一旦ココイルから距離を取り、違和感の正体を確かめる。


「距離を取ったか。まぁいいさ、君が何をするのか見せてもらおうか」


 あ、時間くれるんだ。ありがたや。


 僕は剣先を相手に向けた。その時に見えた。


 柄頭が窪んでいるのを。


 僕はひらめいた!この剣を吹き矢みたいに飛ばせるかも!……と。


 エミリ言ってたもんね。僕の吹き矢は異常だって。


 最後の望みを賭けてみよう。どうせこれが最後だ。


 僕は腰を落とし剣先を相手に向け、柄頭を口元にあてる。左腕で剣を固定する。


「何かねその構えは?さては僕の真似かな?」


 ココイルは笑い出しそうにしている。


『ここでマルクが何か構えたぞ!何をする気だぁぁ?』


 僕の考えでは息を吹き付けた剣が、ピョーンって僕と一緒にココイルへと飛んでいくはずだ。


 集中する。狙うは体だ。頼む、うまくいってくれよ!


 息を吹き付ける瞬間膝が少し崩れた……


 フッ!ズパン!!


 なんかいい音がしたな……


 僕の姿勢はさっきのまま、剣を握っている手が少し前に動いただけだ。


 しばらくの沈黙……


 ココイルが前のめりに倒れていく……


『おおおおおお!!!これはいったい!!!!ココイルここで突然倒れたぞ!!!何が起きたぁぁぁぁぁぁ!!!?』


 僕は何が起きたかわからず、ココイルに近づいて剣先をココイルに当ててみた。動かない。


 僕の足元に丸い石が転がっていた。


 まさかと思い、


 僕は柄頭を確認する為に、剣を頭上に掲げた。


「ああああああああ!!!!!」


 僕は叫んだ!!!


 穴が空いているよ、空いてますよこの剣!!!


『おおおっとぉぉぉマルクゥゥゥ!!!剣を掲げて勝利ポーズを取って雄叫びを上げたぁぁぁぁ!!!!』


 闘技場から溢れんばかりの歓声。


 ウオオオオオオオ!!


 さっきまで僕を非難していた人たちまで歓声を上げていた。


「え!ちが!ちょっとまって!?」


 僕は司会の誤解やらこの剣が何なのか訳がわからず、複雑な感情になり足元の丸い石をすり潰していた。


 観客からは、足を地面に何度もこすりつけているように映っていた。


「あいつ何やってんだ?」

「さぁな」

「まさか!あいつ!」

「水虫がかゆいの我慢していたんじゃねえか?」

「あぁ!水虫か!あれはつらいな!」

「いいぞぉぉぉ!!最強水虫剣士!!」


 闘技場から水虫コールが起き始めた!


 みっずむし!!

 みっずむし!!

 みっずむし!!


『おおっとぉ!新たな二つ名の誕生だぁぁぁぁ!マルクの二つ名!水虫剣士だぁぁぁぁ!!!』


 闘技場大爆笑


 ちなみにエミリも特別観覧室で大爆笑していた。


 闘技場に医療スタッフが駆け込んできてココイルを診断している。


 結果は気絶。


 額に斬撃が当たったと思われる跡。


『やりましたぁぁぁぁ!!!マルクが二人目のSランクを倒したぁぁぁ!!!僕らはこの目で歴史を見たんだぁぁぁぁ!!!これは疑いようがない!!!決定的だ!!!!最強水虫剣士ぃぃぃぃ!!!!』


 闘技場は笑いと歓声に包まれた。


『よって!勝者!マルク!!!!!』


歓声が巻き起こる。


 マルク!!

 マルク!!

 マルク!!

 ・

 ・

 ・



 名前を呼ばれていた気がしたが……


 僕は何が起きたのか……


 さっぱりわからなかった。




 —— 特別観覧室 ——


「マルク――」


 涙をぬぐい、


「信じてたよ……」


 握りしめていた紙を広げた——



 “勝者 マルク

 こちらに賭けた場合の率

     80倍

 購入金額 金10000”



 顔を綻ばせエミリであった。




 ——大歓声のうちに決闘騒ぎは幕を下した。



 なんだよ……水虫剣士って……いじめか?



 ——その夜、僕はエミリに剣の事を聞いてみることにした。



「エミリ、この剣さ、なんで穴が開いているのかな?」


「ん?だってマルク吹き矢好きでしょ?」


「好きだけどさ、なんでこんなの作ったの?」


「それはね、マルクは吹き矢が好き。私は剣をマルクに教えるの。問題ないでしょ」


 首をコテンと倒す仕草が可愛いのがまた厄介だよ。ぐぬぬぬぬ


 エミリは僕から剣を受け取り


「これね面白いの!柄頭をこうはめて……」


 カチャリ


「取り外すとね、石がここにセットされるんだよ」

 そして剣を軽く振るうエミリ。


「石はおもいきり吹き付けないと落ちないようになってるんだよ」


 エミリの解説に僕は言葉が出ない。


「……」


「ゲンさんと一緒にね、一生懸命考えたんだよ?」


「いつの間に」


「ん?三年前だよ?マルクも材料を一緒に取りに行ったでしょ?覚えてない?」


 何か思い出してきた。


「三年前?……あ、あれか?エミリが飛んでる大きいトカゲいるって言って僕を連れ出した時のかな?」


「そうそう!あのでっかいトビトカゲ!」


 両手を胸の前で合わせて嬉しそうに話し出す。


「あれかー、怖かったよね」


 思い出したら体が震えた。


「うんうん」


「赤くて大きかったもんね。口から火が出た時はびっくりしたけどね」


 トカゲが火を吹くなんて初めて知ったんだよなぁ。


「ほんとだよ。でも、あれ以来トビトカゲ見ないよね?どうしてだろうね?」


 エミリが残念そうに言う。


「わかんないや、どこからかはぐれたんじゃないのかな?」


「そうだったのかな~」


「でもさ、村の皆は凄い怖がっていたよね?なんでだろうね?」

 思い出される、村人たちの悲鳴。


「めずらしかったんじゃない?」


 確かに火を吹くトビトカゲは珍しいかもね。


「またいつか会いたいね、トビトカゲ」


「そうだね。会えるといいね」



 そんな何気なのない会話が続いていた。

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