4話 決闘なんかしたくない!
Sランク vs Dランク 異例の決闘!
この話は瞬く間に街へ広まった。
しかも、Dランクの方は過去にSランクを倒したことがあるというだけでお祭り騒ぎだ。
決闘まであと二日。
さて、僕はというと——。
ギルドから戻ってから宿屋に引きこもっています。
もうね、叫んで訴えたいよ!
YES平和!NO決闘!ってね。
そんな僕の心情なんてお構いなしのエミリが部屋に乱入してきた。
「よう、マルク~!特訓しようぜ~」
もうね、どこかに遊びに行く感覚で来るんですよ。
「僕は居ませんよー」
奥義!居留守だ!これなら僕はここに居ない!
「バカやってないで行くよー」
なぜばれた!?
—— 森の中 ——
「今日からの訓練はこれです!」
エミリが木剣を差し出してきた。
「また素振り?」
「違いま~す」
素晴らしい笑顔で内容を告げた。
「私の攻撃を受けてもらいます」
「それ、なんて拷問?」
ドスッ。
エミリが一瞬で僕のお腹に肘を入れてきた……。
「とっくんです!」
「……はい」
「今から円を書くからね。マルクはそこから出たら駄目だからね」
特訓が始まった。
僕はひたすらエミリの攻撃を受け流す。上下左右と至る所から攻撃が、休まることなく襲い掛かってくる。
僕が少しでも腰が引けてくると、すかさずお尻に木剣が叩き込まれる。
「だんだん速くなるよ~」
いや、ホントにね、口を開く暇無いのよ……。
速度が上がる。
「やるね~!斬撃もまぜるよ~」
「うそん!?」
「くっ!エミリがブレて見えてきた……」
実際ブレてるんだ、動きが速すぎるんだよ、エミリ。
いつの間にかゴブリンまで一緒になって僕を攻撃してきたよ。
「エ、エミリさん!?ゴブリンが攻撃してきてるんですが!?」
「このままいこう!」
息は上がらないけど、体力の限界だよ……。
あぁ、もうだめだ——。
はい!倒れました!
・
・
・
何か柔らかいものを頭に感じている。
触ってみる。
少し固めだが心地よい。
うっすらと目を開けると、目の前にはエミリの顔があった。
「僕、限界で倒れたのか」
「うん、よくがんばったね」
エミリ……。
ん?あれ?
何かエミリの顔の向きに違和感が……。
僕は顔を少し傾けて頭の下にあるものを確認した。
「エミリ、何か頭の下に緑色のものが……」
「それね、そのまま地面に倒れてたら首痛くなるかなーと思って、さっきのゴブリンを枕にしたの!」
……膝枕ではなかったですよ。
「今日はここまでにしようね」
「お、おわったー」
「明日も今日と同じ事やるよ」
明日も地獄だ~……。
ここは心を落ち着けるために。
吹き矢だな。
腰から吹き矢を取り出し木の上に生っていた黄色い果実を吹き矢で二個落とす。
「エミリ、食べる?」
「食べる!」
嬉しそうに果実を食べる。
僕も食べる。
うん。みずみずしい果実だね。喉が潤うよ。
「食べ終わったら街に戻ろうね。ちょっとギルドに行きたいから」
食べながらエミリが提案してきた。断る理由もないしいいか。
「わかったよ」
—— ギルド内 ——
僕たちはギルドの掲示板の前にいる。
エミリが何か面白いのがないかと探してる。
時間が時間だから大した依頼は残っていないけどね。
受付嬢がエミリを見て声をかけてきた。
「あ、エミリさん。ちょうど良い所で」
「なんですか?」
「エミリさん宛てに荷物が届いてますよ」
「あ、届いたんだ」
「こちらでお渡ししますのでカウンターまでお越しください」
「はーい」
エミリの後に僕もついていく。何が届いたんだろう。
受付嬢がカウンターに長い箱を置いた。随分と細長い箱だね。大きさからいって僕の木剣が収まるくらいだよ。
エミリが書類に受け取りのサインをしている。
「エミリ、どこからの荷物なの?」
「ん?ゲンさんだよ」
「ゲンさん?あの鍛冶屋のゲンさん?」
「そうだよ。村を出るときに依頼をしておいたんだよ」
「よくここに居る事がわかったね」
「この前の護衛依頼を受けた時に手紙出しておいたからね」
「でも、あの村からこの街まで1週間くらいかかる距離だよね?」
「何言ってるのマルク。手紙も、荷物も、出したら二日後には届くんだよ」
「……そんなに早く届くの!?」
「知らなかったの?だめだなー」
僕は聞いたことないよ?今はそんなに便利なの?
「宅配業者はすごいんだよ」
「そ、そうかー……」
「おう!俺たちも使ってるぜ!」
「ありゃ便利だよな!」
「田舎のばーちゃんに旨いもの送ってるぜ!」
「私もよ」
「ぼくもー」
「荷物が多いときは楽だぜ!」
なにそれ……みんな使ってるんだ……。
「それにしても、決闘前に来たのはよかったよ。運命だよね!」
そんな運命ならいらないよ――。
「これ、マルク用にって作ってもらったんだよ。中の物は全部マルクの物だよ」
エミリがすごく可愛い笑顔で箱を僕に渡してきたよ。
……すごくうれしい。
「開けてもいいかな」
「んー……今はダメ。宿屋で開けてね」
今日のエミリが、とても可愛く見える!
何故か周りからはブーイングが発生していたけどね。
宿屋に戻ってから僕は嬉しさのあまりあやしい踊りを踊った。
「さて、今から開封の儀を行います!」
箱を開ける。中から布に包まれた物が出てきた。
はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと丁寧に。
布と一緒に何かが落ちたが今は気にしない。
そこから出てきたのは美しい装飾の施された一本の剣であった。
鞘から出した剣は美しく、光る刃、握りやすい柄、丸みを帯びた柄頭、これは後付けされたのかな?
鞘に納めて腰に下げてみる。
うん!かっこいい!
一度剣を外し、散らかした物を片付け始める。
「そういえばさっき何か落としたよね」
床に這いつくばり探してみた。
ベッドの下に入り込んでいた紙を見つけて手に取ってみた。
“請求書 剣の製作費用
材料費 無料 三年前に持ち込みの済み
金10、000、000―
鍛冶屋のゲン”
なんだろうこれ?ゼロの数、多くない?保証書みたいなやつかな?
大事に取っておこう。
僕はエミリに感謝を言いに部屋を出てエミリの部屋に向かった。
部屋からちょうどエミリが出てきた。
「エミリ!剣ありがとうね!うれしいよ!」
「そう?よかった。わざわざ贈ったかいがあったわね」
「うん!」
「今からそれ使って特訓ね!」
にこりと笑うエミリ。今の僕は嬉しさでいっぱいなので特訓の厳しさを忘れていたよ。
僕たちは一度食事を取ってから再びギルドで手ごろな依頼を受けてから森にやってきた。
まずは依頼を片付けるか。
依頼内容はエテ公モンキー10匹討伐だね。
「エミリ、エテ公モンキーってあの辺りの岩場じゃないかな?」
「たぶんそうね。気配がするもの」
「どうする?」
「特訓があるから手早く終わらせるね」
そういうとエミリはここから剣を構えて屈みこみ――。
≪ 一閃 ≫
斬撃が岩場もろとも切り取った。
「はい、終わりだよ」
「じゃ、僕が討伐証明のしっぽ集めるよ」
見事に10匹が倒されているよ。さすがエミリ。僕には出来ないことを平然とやってのけるね。
「さすがだよねエミリは」
「何言ってるの?こんなの剣を嗜む人なら普通よ」
「僕、出来ないんだけど」
「訓練が足りないのよ」
僕には一生できそうにもないや。そんな気がするよ。
依頼も終わり、特訓再開です。
「今回は木剣ではなく、プレゼントされた剣を使って特訓よ。やり方は朝と同じね」
僕は剣を身構えた。
「いくよ」
エミリの斬撃を交えた剣劇が襲い掛かってくる。
剣で攻撃を弾いて、逃げ腰になってお尻を叩かれて、ゴブリンが乱入してくる。
倒れる。
ゴブリン枕で目が覚める。
いつしか辺りは薄暗くなり始めている。
「今日はおしまーい。マルク、帰るよ」
「……うん」
僕は鞘に納めた剣を杖代わりにして歩いていく。
エミリはしっぽの入った袋を持って隣を歩いていく。
—— ギルド内 ——
今日はいつもと違う受付嬢さんが対応してくれた。
「エテ公モンキー討伐お疲れ様です。今日も一段と激しい戦闘だったんですね」
「……確かに激しかったです」
訓練がね。
「あまり無茶はいけませんよ?後二日で決闘があるんですから」
「心配してくれるんですか!?」
「え……えぇ、まぁ心配ですね」
受付嬢さんが机の上の用紙をそっとしまい込んだ。
なんかオッズとか書かれていたような…………。
「マルクさん」
「はい?」
「頑張ってくださいね」
ニコニコしながら、僕にエールを送る受付嬢がいました。




