2話 マルクとエミリ
時はまさに平和な時代!
とある村に小さな少年少女がいた。
少年は特に秀でたものもない平凡以下そのものだった。ある一点を除いては。
少女は頭も良く、明るく運動神経も抜群だった。ある一点を除いては。
そんな少年少女が十歳になったとき、物語は動き出す!
「なにブツブツいってるのかな?今は素振り時間だよ」
にこやかな顔をして竹刀で地面を叩く女性はエミリ。
僕の幼なじみだ。そして、小枝ソードをリズミカルに振り下ろしているのが、僕ことマルクです。
小枝ソードが何かだって?そんなの決まってますよ。森の中ではいっぱい取れる自然の武器ですよ。
「まだ息が上がらないね。今から十倍の速さで振ってね」
すごいにこやかスマイルで鬼畜なことをいってきたよこの人!
「でもエミリさん?もう半日ほど振り続けてますよ?いい加減終わりません?終わりましょう?」
「それもそうね」
「ふぅ……」
「最後に私と模擬ね」
はい!死刑宣告されました!
バシッ!
「痛いよ……」
「あのね、マルクの為に頑張ってやってるのよ」
「ほんと?」
「そうでなきゃマルクの事なんてかまってたりしないよ」
「なんでそこまで?」
「呆れた……マルク、昔の約束忘れたの?」
昔のことを思い出してみる。
回想スタート!
「マルクー、なにやってるのー?」
小枝を持った小さな少女が訪ねてきた。名前はエミリ。
僕の幼なじみだ。
「吹き矢のれんしゅうー」
僕は吹き矢が大好きだ。
僕の三大欲求だ!
食べる、吹き矢。吹き矢!この3つだ!
「それより、野原に行って野イチゴとってこよーよー」
かわいい顔をしてお誘いしてきたよ。
だけど——。
「えー、吹き矢のれんしゅうーのほう———」
ザシュッ!
言い終わる前にエミリが周りに生えた草を小枝一振りでなぎ払っていた。
「いくよね?」
こわい顔をして脅してきたよ……。
舞台は変わって野原だよ。
「マルクー、とれたー?」
「うーん、もうすこしでかごいっぱいだよー」
僕たちは野原に野イチゴを採りに来ていた。
「ふぅ——いっぱいとれたよ」
僕はエミリから渡された背負い籠いっぱいになった野イチゴを背負い、エミリの元に戻った。
エミリは小枝を剣のように振り回していた。
右に、左に、回転して振り抜く。かっこいい!
こちらに気がついたエミリ。
「わぁ!いっぱいじゃないの!」
凄く喜んでるよ。
「わたしもまけてないんだから!」
と言って、手に持っている籠を見せつけてきた。
「これでおかあさんに、おいしいものい……っぱいつくってもらうんだ!」
美味しいものを想像しているんだね!涎がすごいよ!
「できたらマルクにもわけてあげる」
帰ろうとしたとき、少し離れた場所から角うさぎにまたがった、ゴブリンキッズが2匹現れた!
僕たちは籠を下ろし、戦いの準備をする。
エミリは小枝を構え、僕は吹き矢を構え、後ずさりをする。
エミリが「なにしての?」って顔をして僕を見る。
よし!僕の本気をみせてやる!
足はガクガク、腰はへっぴり腰、しかし!女の子が怖がりもせずにモンスターの前に立っているんだ!僕だって!
吹き矢をゴブリンキッズに目掛け、集中し、吹いた。
フッ!
瞬間、ゴブリンキッズは勢いよく後方に吹き飛んだ。
エミリはなにが起きたの?って顔で、僕と吹き飛んだゴブリンキッズを交互に見てから、戦闘に集中していた。刹那、一瞬で残りのモンスターの懐に入り込み、一振りで蹴散らした。
この時僕はエミリを怒らせないようにしようと誓った。
「なになに!さっきの!すごいよ!」
吹き矢でゴブリンキッズを吹き飛ばした時の事だろ。
「吹き矢を使っただけだよ」
エミリが、嘘でしょう?って顔で見てくる。
「かして!それかして!」
手を出してくるエミリに、僕の大切な吹き矢を渡した。それを受け取ったエミリが吹いてみる。
矢は岩に当たったけど、コンッと音を立てただけだった。
「やってみて」
ちょっと膨れてるエミリがかわいい。
吹き矢を受け取り、同じ岩に向かって吹く。
バチンッ!
矢のあたったところが欠けている。矢の速さもエミリより早い。
「なに、それ……」
エミリは驚いている。そして、変なものを見るような目で僕を見る。
「マルク、へんっ!」
ひどくない?
「それよりも、さっきのエミリ!かっこよかった!一瞬でモンスターをやっつけちゃうなんて!」
「こんなのふつうよ!」
運動が苦手な僕には分からないが普通らしい。
エミリがドヤ顔だ。
彼女が剣みたいに小枝を振るう。
よし!「小枝ソード」と名前を付けよう。
エミリが小枝ソードを振りながら、恐ろしいことを言ってきた。
「ねぇマルク、もうすこしおおきくなったらぼうけんしゃになろうよ!けっていね!」
僕、返事してないよね?
しかも、決定してしまったらしい。
「僕、弱いよ?」
「だいじょうぶ!わたしがマルクを、わたしよりつよくしてあげる!やくそくするよ!」
僕は吹き矢がすきなだけだ。
エミリは自己中すぎるだけだ。
思い出しました。確かに。約束されました。一方的に。
「エミリ、そろそろギルドに戻らない?」
「なにいってんの?模擬戦やるよ」
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・
—— ギルド内・受付 ——
「え!?マルクさん!ダークスネイクを討伐されたんですか!?」
「あ、依頼の途中で……いきなり襲われたから……とりあえず証拠の牙と目を持ってきました」
受付嬢が驚きから歓喜へと変わる。
「流石です!マルクさん!私はマルクさんを応援します!」
「聞いたか?ダークスネイクだってよ!」
「すげー!Bランクパーティーが全力で狩れるかどうかっていわれている奴だろ」
「全てはあのキズが物語っているぜ!」
キズはエミリに、ボコボコにされました……。
僕は疲れていたので、どうでもよかった。
早く寝たいです……。
報酬の受け取りも済ませ、ギルドを出ようとしたら、誰かが入ってきた。
入ってきた男はエミリを見つけるなり、両腕を広げて叫んだ。
「エミリくん!美しい君にまた会えるとは!もう、運命だ!」
「うげっ……」
エミリが嫌そうにしている。
彼はエミリに一目惚れをしたらしい。
「おい、あんた。彼らは依頼を終えて帰ってきたばかりなんだ!休ませてやれよ」
ナイス年配の方!
「そんなことは関係ないさ!」
「どこの誰かは知らないが、少し静かにしろや!」
冒険者って血の気が多いよね。怖いなー。
ギルド内は男と、その他冒険者が騒ぎ出した。
「マルク、今のうち」
問題の中心人物が騒ぎなんか知ったことではないと、僕を連れて出て行こうとする。
勿論、僕もそれにならうよ。
宿屋に着いて食事を取って落ち着く。
「まさか、またあいつと出会うなんて、サイアクだぁぁぁ 」
心底嫌そうだ。
もうね、顔に出てるんだよ。
かわいい顔が台無しになるくらいに。
明日……どうしようかな?




