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1話 最強剣士?現る!

Nolaでも投稿していますが、こちらにも投稿始めました。

少しでも楽しんでいただければ嬉しいです。


 冒険者の集う街アルナート。


 その街の大通り。


 二人の冒険者がやってきた。

 

「ママー、変な人がいるー」

「しっ!みちゃいけません!」


 あの子供は何を言ってるのかな?


「マルク、いつズボン履くの?」

「ん?——あっ、エミリ!早く言ってよ!」


 護衛依頼中、食事してる時にスープをこぼしてしまい、洗ってるときにゴブリンが襲ってきた。

 そこで華麗な剣技で倒したんだよね。


 ——エミリが。


 僕?弱いよ。本当に弱いよ。ズボン履き忘れるくらいだよ!


 ズボンを履きながら思い返していた。


 

 二人組の冒険者がギルドにやってきた。


 二人は受付に並び順番を待つ。


 受付嬢「はい、次の方どうぞー」


 受付はにこやかな笑顔で対応してくるぅぅ!


「早くしなさいよ!」


 僕の幼なじみがうるさい。

 思いっきり足を踏まれた。


「声、出てたわよ」


 まじかー。


 呆れている受付嬢。


「護衛依頼の完了報告です。確認してください。」


 幼なじみがてきぱきと仕事をする。

 僕は後方で腕を組みながら、二人のやり取りを眺める。


「では、お二人共ギルドカードの提示をお願いします」


 僕の個人情報を見たいだと!?

 蹴飛ばされた。


「馬鹿な事考えてないで早く出す!」


 怒られました、スミマセン。

 ギルドカードを取り出し受付嬢に渡す。


「エミリはいつ読心術を会得したんだ?」


 ゲシッ!


 また蹴られました。


 カードを確認していた受付嬢は、何かを思い出したように大声を上げた。


「え、えええええ!マルク、あのマルクさんですかぁぁぁぁ!?」


 ギルド内が静まり返り、皆が一斉にこちらを見る。


「え、マルクだって!」

「噂の!?」

「Sランクの槍使いを倒した、あのマルクか!」

「噂だと無傷で倒したらしいぞ」

「俺も聞いた!相手が踊りながら吹き飛んだとか!」

「あの子かわいい」

「決闘してみてー」

「爆ぜろ!」


 何か色々聞こえてくる。


 嫌だよ、決闘なんか。


 僕弱いからね。

 痛いのイヤだからね!

 死んじゃうからね!


「人気者だねー、マ・ル・ク♪」


「エミリ、うるさい」


「あのー、受付のお姉さん、そういうことは大声で言うのはー」


「あ、ごめんなさい。でも本当なんですか?」


「いやー、たまたまというか、運が良かったというかー」

「とりあえず、報酬貰える?」エミリが割り込む。


「すみません!すぐにご用意致します!」


 受付嬢は奥に行った。


 受付嬢を待っていると三人組の男たちが目の前にやってきた。

 体つきが熊みたいな男はニヤニヤしながら近づいてくる。


「Sランクを倒した噂の剣士さんよ!いっちょ、俺らに実力を見せてくれよ!」


 男は嫌らしい笑みを浮かべながらエミリをみた。

 要は僕と勝負がしたいらしい。

 嫌だよ!あっという間に三軒ほど飛ばされちゃうよ!


「もし!てめーが負けたら豪華な装備品を置いてけよ!あと、後ろのねーちゃんもだ!」


「楽しみがいがありますねー!」


「おめーにはもったいねーよ!」


 取り巻き二人がいやらしい顔つきで言ってきた。

 

 僕が怯えを悟られないように木剣の入った鞘に触れると、男たちは膝から崩れ落ちていった。

 どうやら僕の後ろでエミリが威圧を飛ばしたらしい。


 エミリ、怖いよ。


 しかし周りは、エミリが威圧を飛ばしたと思わず、僕が鞘に触れた瞬間、威圧で倒したと———そう誤認した。

 内心ビビりまくりの僕は、どうにか平静を装いながらエミリに聞いてみた。


「この後どうする?」


「そうねー、町の外であなたの性根を叩き直すのはどう?」


「それ、僕に何のメリットもないよね?しかも三人は無かったことになってるよね?」


「あるわよ!先ず真人間になれる!剣士たる気構えが出来る!あと、三人はしらない」


「いいの!?それで!?てか、僕は真人間だよ!」


「そうなの?」


 エミリ、にこやかな笑顔で首をかしげないで!


  「流石ですね!ゴンザレスさんと、この二人はCランクでもかなり強い方ですよ。あと、わかってるとは思いますけど、ギルド内で剣を抜いたりしたら冒険者資格剥奪になりますからね」

 

 受付嬢は奥からしっかり観ていたらしい。


「あ、来たわね」


「はい。お待たせいたしました。こちらが報酬になります。ご確認下さい」


 エミリが確認する。


「確かに受け取りました」


「はい、お疲れさまです……」


 受付嬢はまだ何か聞きたそうにしていたが、僕たちはそそくさとギルドを後にした。


「さてー、街の外に行きますかー!」


 行くんですか!行くのですね!僕は逝くのですね!


 僕はエミリに連れて行かれた。

 ……助けて下さい。


「あ、いけないいけない宿を取っておかないとね」


「そうだね、おいしいご飯が食べられなくなるもんね!」


「いや、ご飯より寝るところ心配しなよ」


 エミリが呆れる。


 でも、ご飯は大事だよね?




 なんだかんだで宿を取ったら、街から少し離れた森の中、少し開けた場所に連れてこられた訳です。


「はい!まずは素振り100万回!はじめっ!」


「……エミリさん?それだと僕、宿屋で泊まれないのですが?」


「大丈夫よ!私がしっかりと泊まってくるから」


 にこやかにウィンクしたよ。この鬼。


「フンッ!」


 一瞬で距離を縮めて僕のお腹に肘を当ててきたよ。

 また、心の内を読んできたよ。


 オロロロロ……。


 口から虹がでたよ!


「無駄口たたく前に手を動かす!」


 ふんっふんっふんっふぅぅぅ……。

 ・

 ・

 ・


 木剣を振っていたら、奥から緑色のゴブリンが姿を現した。


「エミリ!ゴブリンだ!」


「うん、知ってたよ!」


 ……マジかー。


「ちょっと数が多いかな」


 とか言いながら楽しそうにしてるエミリ——

 

「だよね!十匹もいるもんね!」

 

「マルクはここにいる十匹をお願い!」


「エミリは!?」


「私は奥にいる二百匹やってくるわ!」


 ……二百匹?聞き間違い?


 楽しそうに剣を振り回しながらいっちゃったよ。


 よそ見をしていたらゴブリンが襲いかかってきた。


「ギィエェェェ!ゲッゲッゲッ!」

「ギャウギャウギャャャ!」

「オッオッオッウッ!」


 こぇぇぇぇ!たしけてくれぇぇぇ!


 僕は木剣をぶんぶん振り回した。

 ゴブリンも手に持った獲物を、同じように振り回した。


 僕の木剣は当たらない!

 ゴブリンの攻撃は僕に当たる!


 ポカポカ当たる!


 僕は何とかゴブリン包囲網を突破し、距離を取った。


 僕は木剣を手放し、腰から吹き矢を取り出し矢をセットする。

 しびれ薬を塗り付けた矢を、一匹のゴブリンの額へねらいを定めた。


 ふっ!っと吹いた。


 矢はゴブリンの額に刺さり、後ろに弾き飛ばされた。


 僕は慌てて逃げ回り、ある時は木にしがみつきながら、またある時はゴブリンにブンブンと振り回された。

 

 ゴブリンが僕を投げ飛ばし、地面に転がる。

 

 僕は急いで這いつくばり、距離をとり吹き矢で応戦する。


 しかし、目が回ってしまって狙いが定まらない。

 

 目まいが治まり、どうにかゴブリンを戦闘不能にして僕の勝利に終わる。


 しかし、僕も倒れた。


 ちょうど森の奥からエミリが袋を抱えて戻ってきた。

 返り血一つ浴びずに。

 エミリは僕が倒れているのを見て駆け寄ってきた。


「大丈夫?」


「ら、らいしょうぶしゃなひ」


 周りを見て、十匹のゴブリンにトドメを刺していくエミリ。


「マルク、しびれ薬塗った吹き矢を連発したでしょ」


 ニヤリと笑う。


 いけませんか?必死だったんですよ!

 エミリは倒れている僕のほっぺを、笑いながらつついてくる。


「毎度いうけど、しびれ薬を使うときは注意しなよ」


 そう、僕は必死になって吹き矢をとばしまくり、口元にしびれ薬が垂れてきてたが、気にしてる余裕などなかったのだ。


 おかげでこのざまですよ。


「しかたないわね。しびれ取れるまで、私がマルクを運んであげる」


 そう言うとエミリは、僕の足を掴んで引きずっていく。


 ずるずるずる……。



 街の近くまで来たときにはしびれも取れ、二人して歩いていく。もちろんゴブリン討伐の証拠である耳は僕が持たされているのだった。



 —— ギルドの受付 ——


「ちょっと森で訓練してたらゴブリンに襲われちゃってね」


 エミリが軽く説明する。


「大丈夫でしたか?怪我とかしてませんか?」


「うん、大丈夫だったよ」


 エミリが説明をしている後ろで、腕を組み頷く僕。

 目立たないように相づち打っておけばいい、簡単なお仕事です。

 受付嬢は僕たちを見比べて何か納得したように歓声をあげた。


「流石マルクさんです!何も言わずとも見れば分かります!」


「……えっ?」


「ゴブリン二百匹の群からエミリさんを庇いながら戦ったんですよね!」


 うおおおおお!

 

 周りから歓声が上がった。


「その姿が何より物語っています!エミリさん、汚れていないですから!」


 またまた歓声があがる。


「ぇ、いや……ちが……」


 もはや僕の話は誰も聞こうとしてくれない。


「ゴブリン二百匹から女を守って戦う!流石最強剣士様だ!」


「俺もそんなカッコイイことしてみてぇぇぇ!」



 エミリは、僕の後ろで報酬を受け取り、ホクホクしていたのである。

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