表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された最強賢者、自分だけ使える『家事魔法』で異世界最強のメイド喫茶を開いたら、なぜか伝説のドラゴンが常連になりました  作者: 無響室の告白


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/5

第3話:『紅蓮の古竜』、来店。そして陥落。

「て、店長! 何を言ってるんですか!? あれは『紅蓮の古竜』イグニスですよ!? 国が一つ滅ぶレベルの災害ですよ!?」


ミナが震える手で私のエプロンの裾を掴み、悲鳴を上げる。


窓の外では、空を覆い尽くすほどの巨体を持つ真紅のドラゴンが、シルヴァの街を見下ろしていた。


その口元からは灼熱の火の粉が漏れ、周囲の気温が急激に上昇していく。


「災害? いえ、ただの騒音と排熱公害ですね。開店初日からこれでは、客足に響きます」


私は調理台に置いてあった『ミスリル製のフライパン』を手に取り、勝手口へと向かった。


「ちょっ、武器がフライパン!? 本気ですか!?」


ミナの制止を背中で受け流し、私は店の外へ出る。


灼熱の風が頬を撫でるが、私の『空調管理エアコン』結界の前ではそよ風同然だ。


私は空を見上げ、丁重に、しかし断固として告げた。


「お客様、困ります。当店はまだ準備中でして。それに、そんな大声を出されては近所迷惑です」


私の言葉が聞こえたのか、あるいは単に目障りな羽虫だと思ったのか。


ドラゴンは金色の瞳をギロリと私に向け、大きく息を吸い込んだ。


『矮小な人間風情が……塵に還るがいい!』


轟音と共に、全てを灰燼に帰す伝説のブレス『紅蓮の吐息インフェルノ・ブレス』が放たれる。


街を飲み込むほどの火流が、真っ直ぐに私へと迫った。


「まったく……煙たいですね。換気が必要だ」


私はフライパンを掲げ、静かにつぶやく。


「家事魔法『超強力換気レンジ・フード』」


刹那、私の頭上に巨大な魔法陣――というよりは、巨大な換気扇の幻影が出現した。


伝説のドラゴンブレスは、物理法則を無視した吸引力によって渦を巻き、瞬く間に換気扇の中へと吸い込まれ、亜空間へと排気されていく。


『な、何!? 我のブレスが……消えた!?』


「さて、火の始末は終わりました。次はお肉の下処理ですね」


呆然と空中で静止するドラゴンに向け、私はフライパンを振り下ろす動作をした。


「筋が硬そうなお肉にはこれです。家事魔法『肉叩き(グラビティ・プレス)』」


『ぐ、がぁぁぁぁッ!?』


見えない巨槌に打たれたかのように、ドラゴンの巨体が地面へと叩きつけられる。


ドォォォン! という地響きと共に土煙が舞った。


私はあくまで「調理しやすいように柔らかくした」


だけなのだが、少々力が入りすぎたかもしれない。


煙が晴れると、そこには巨大なドラゴンの姿はなく、クレーターの中心でへたり込む一人の女性の姿があった。


燃えるような赤髪に、不遜だが整った顔立ち。


豪奢なドレスのような鱗の鎧を纏っている。


「……くっ、殺せ! 敗者には死あるのみ……!」


女性――人間形態をとったイグニスが、悔しげに唇を噛んで私を睨みつける。


私は彼女の前に歩み寄ると、スッと手を差し伸べた。


「おや、お客様でしたか。乱暴な呼び込みをして申し訳ありません」


「……は?」


「ちょうど試作品が出来上がっているんです。お詫びにいかがですか? 当店自慢のオムライスです」


数分後。


メイド喫茶『サンクチュアリ』の店内。


「な、なんだこれは……!」


カウンター席に座らされたイグニスは、目の前に置かれた『究極ふわとろオムライス』を凝視していた。


黄金色に輝く卵、漂う芳醇なバターの香り。


彼女は恐る恐るスプーンを口に運ぶ。


その瞬間、彼女の瞳がカッ! と見開かれた。


「んんッ!? う、美味いッ! なんだこのふわふわは! 口の中で卵が溶けたぞ!?」


「ドラゴンの卵を使用していますからね。火力調整も完璧です」


「トマトソースの酸味とライスの甘みが絶妙に絡み合って……ぬあぁぁ! 止まらん! 貴様、これに何の魔法をかけた!?」


「美味しくな~れ、という魔法(物理的な調味料配合)ですね」


ガツガツと猛烈な勢いで皿を空にする元・災害級モンスター。


その横で、ミナが魂の抜けた顔でつぶやいた。


「……店長。伝説のドラゴンを手懐けるって、家事魔法の範疇超えてますよね?」


「いいえミナさん。これもまた『接客』という家事の一環ですよ」


こうして、我が店に最強の常連客(兼トラブルバスター)が誕生したのだった。



-------------------------------------------------------------------------------------


【アイテム・用語】

- 超強力換気レンジ・フード: ルクスの家事魔法。あらゆる気体やエネルギー波を強制的に吸引し、亜空間へ排気して無効化する。


- 肉叩き(グラビティ・プレス): ルクスの家事魔法。対象に局所的な超重力をかけ、物理的に叩き潰す(本来は肉の筋切り用)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ