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追放された最強賢者、自分だけ使える『家事魔法』で異世界最強のメイド喫茶を開いたら、なぜか伝説のドラゴンが常連になりました  作者: 無響室の告白


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第2話:究極のオムライスと、招かれざる『騒音(ドラゴン)』

「さあ、どうぞ入ってください。外装の『高圧洗浄』は終わりましたが、中はまだ手付かずでしたので……少し埃っぽいかもしれませんが」


元・最強賢者ルクス・アークライトは、廃墟だったはずの建物の扉を開けた。


猫人族の少女ミナは、開いた口が塞がらないまま、恐る恐るその足を踏み入れる。


そこは、埃っぽいどころか、王城の賓客室よりも清潔で輝かしい空間だった。


「て、店長さん……? ここ、さっきまでボロボロのお化け屋敷でしたよね? なんで床が大理石みたいにピカピカなんですか!?」


「ああ、入るついでに『空間殺菌ゾーン・ステアライズ』と『全自動研磨オート・ポリッシュ』を掛けておきましたから。飲食店に不潔は厳禁ですので」


「魔法の使い方がおかしいです!!」


ミナの絶叫をよそに、ルクスはカウンターの奥にある厨房へと入っていく。


手には愛用の『ミスリル製のフライパン』が握られていた。


本来、最高位の冒険者が命を預けるための金属が、ここではただの調理器具として扱われている。


「君、お腹が空いていると言っていましたね。開店前の試食も兼ねて、これを作らせてください」


ルクスが指を鳴らすと、コンロに青白い炎が灯る。


いや、それは通常の炎ではない。


高位魔導師ですら制御困難な『地獄の業火ヘルファイア』を、極限まで圧縮し、調理用に火力を絞ったものだ。


「卵は……先日手に入れたSランクモンスター、ロック鳥の卵を使いましょう。新鮮ですよ」


「えっ、あの凶暴な鳥の巣からどうやって……いや、もう聞きません」


ジュワアアアッ!


ミスリルのフライパンの上で、黄金色の卵液が踊る。


ルクスの手つきは神速の剣技のように鋭く、かつ繊細だった。


魔法による分子レベルの加熱制御。


焦げ目を一切許さず、半熟の極致へと至らせる『家事魔法』の真骨頂。


「はい、お待たせしました。『究極ふわとろオムライス』です」


目の前に置かれたのは、宝石のように輝くオムライスだった。


湯気とともに立ち上る香りが、ミナの脳髄を甘く痺れさせる。


「い、いただきます……」


スプーンを入れると、卵がぷるんと弾け、中からとろりとした半熟部分が溢れ出した。


一口、口に運ぶ。


その瞬間、ミナの瞳孔が開いた。


「んんっ!? ……おいひぃぃぃ!!」


舌の上で卵が溶け、濃厚な旨味と甘味が爆発する。


それだけではない。


食べた瞬間、全身を温かい光が包み込み、先ほどまで感じていた疲労や空腹による不調が、嘘のように消え去っていくのを感じた。


「あ、あれ? 体の痛みが……消えた?」


「おや、やはりロック鳥の卵は滋養強壮にいいですね。軽い『状態異常回復キュア』と『体力増強ブースト』の効果が付与されたようです」


「料理に魔法効果が付いてるんですか!? ポーションより効くんですけど!?」


ミナが夢中でスプーンを動かしていると――突如、店内の空気がビリビリと震えた。


ゴオオオオオオオオッ!!


遠くから響く、地響きのような咆哮。


そして、窓の外が不気味な赤色に染まる。


「こ、この魔力……まさか!」


ミナはスプーンを落とし、震えながら窓の外を見た。


辺境都市シルヴァの上空、雲を切り裂いて現れたのは、山のように巨大な翼を持つ『紅蓮の古竜』だった。


「嘘でしょ……伝説の『紅蓮の古竜』イグニス!? なんでこんな辺境に……終わりだ、もうおしまいだぁ……」


街中から悲鳴が上がり、警鐘が乱打される。


人類では対抗不可能な災害の具現化。


ミナが絶望に膝を屈しかけた、その時。


「……チッ」


ルクスが、不機嫌そうに舌打ちをした。


「せっかく磨き上げた窓ガラスが、衝撃波で微かに曇りましたね。それに、この騒音。これでは優雅なティータイムが台無しです」


「て、店長? 相手はドラゴンですよ!? 逃げないと……」


「逃げる? なぜですか? これからここが私の城(店)になるんですよ」


ルクスはエプロンの紐を締め直し、フライパンを軽く振った。


「ミナさん。君にお願いがあります。この店で、私と一緒に働いてくれませんか? ご覧の通り、私は掃除と料理には自信がありますが、接客や常識的な対応には少々不安がありまして」


「こ、今そんな話してる場合じゃ――」


「給料は弾みますし、まかないも食べ放題です。どうです? 生き残ったら、契約してくれますね?」


ルクスの瞳に、迷いは一切なかった。


それは勇者の瞳というよりは、頑固な職人の目だった。


「……わかりましたよ! 助かったら何でもします! だから逃げましょう!」


「交渉成立ですね。では――」


ルクスはスタスタと店の扉を開け、空を覆う絶望の赤を見上げた。


「ちょっと近所迷惑な『害獣』を、躾けてきます」



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【登場人物】

- イグニス: 伝説の『紅蓮の古竜』。街の上空に現れた災害級モンスター。


【アイテム・用語】

- 究極ふわとろオムライス: ルクスが作った最初の料理。Sランクモンスターの卵を使用し、食べた者の体力や状態異常を回復させる効果を持つ。


- 紅蓮の古竜: 伝説級のドラゴン。名はイグニス。その咆哮だけで街を震わせる圧倒的な存在。

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