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マナに選ばれし落ちこぼれ 〜古代魔法を継ぐ者〜 (マナ落ち)  作者: たくわん。
第一章「落ちこぼれの烙印」

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第3話:初めてのダンジョン実習

第3話:初めてのダンジョン実習


 

 入学から一週間が過ぎた。

 その間、僕たちFクラスは基礎訓練に明け暮れた。

 マナ制御。

 詠唱練習。

 魔法陣の理論。

 体力訓練。

 ディルクの指導は、想像以上に厳しかった。

「もう一回!」

「集中が足りない!」

「諦めるな!」

 彼の叱咤激励に、クラス全員が必死についていった。

 そして――今日。

「よし、全員集合したな」

 ディルクが、Fクラス全員を前に立った。

 場所は、学園の裏手にある古い石造りの門の前。

「今日から、ダンジョン実習を始める」

 その言葉に、クラスがざわついた。

「ダンジョン……!」

「本当に?」

「怖い……」

 僕も、緊張で心臓が高鳴った。

 ダンジョン――生きた迷宮。

 魔物が徘徊し、罠が仕掛けられ、命の危険がある場所。

「行き先は、学園管理ダンジョン『翠緑の迷宮』。G級ダンジョンだ」

 ディルクが、門を指差した。

「G級は、初心者向けだ。魔物も弱い。だが――油断するな。ダンジョンは、常に危険だ」

 彼は、全員のギルドカードを確認した。

「全員、ギルドカードを持ってるな?」

「はい!」

「ダンジョン内では、常に生命信号が監視される。危険を感じたら、すぐに脱出魔法陣へ戻れ。いいな?」

 全員が、頷いた。

「よし。じゃあ、行くぞ」

 ディルクが、門に手をかざした。

 瞬間――門が、淡く光った。

『アクセス承認。翠緑の迷宮、第1層へ接続します』

 機械的な音声が響いた。

 門が、ゆっくりと開いていく。

「入れ」

 僕たちは、一人ずつ門をくぐった。

 そして――

 景色が、変わった。

     *     *     *

ダンジョン第1層――翠緑の森

「うわぁ……」

 ヒナタが、目を輝かせた。

 そこは、薄暗い森だった。

 木々の間から漏れる、緑色の光。湿った空気。草木の匂い。そして――濃密なマナの気配。

「これが……ダンジョン……」

 僕は、周囲を警戒しながら歩いた。

 空気が、外とは明らかに違う。

 マナの濃度が、高い。

 呼吸するだけで、体にマナが流れ込んでくる感覚。

「いいか、全員」

 ディルクが、先頭に立った。

「ここから先は、二人一組で行動しろ。迷子になるな。魔物を見つけたら、すぐに報告しろ」

「はい!」

「アレン、お前はヒナタとペアだ」

「了解しました」

 僕とヒナタは、並んで歩き始めた。

「緊張しますね……」

「ああ……でも、頑張ろう」

「はい!」

 ヒナタは、短杖を握りしめた。

 僕の手には、学園から支給された粗末な木の杖。

 武器としては頼りないが、ないよりはマシだ。

『ガサッ……ガサッ……』

 茂みが、揺れた。

「!」

 全員が、身構えた。

 そして――

『ピチャ……ピチャ……』

 粘液質の音とともに、現れたのは――

 青いゼリー状の魔物。

「スライムだ!」

 ディルクが叫んだ。

「お前たち、実戦だ! 落ち着いて対処しろ!」

 トムが、前に出た。

「いくぞ……! 火炎弾ファイアボール!」

 小さな炎の球が、スライムに向かって飛ぶ――

 が、明後日の方向へ逸れた。

「え、嘘っ!?」

 スライムが、跳躍した。

 トムに向かって――

「危ない!」

 スライムの一撃が、トムの頬をかすめた。

冷たい粘液が肌を焼く。

「っ……!」

 僕が咄嗟に飛び出し、杖でスライムを叩いた。

 ガツッ!

『ピギャッ!』

 スライムが、怯んだ。

「今だ、ヒナタ!」

「は、はい! 水流弾ウォーターショット!」

 ヒナタの魔法が、正確にスライムを貫いた。

『ピギャアアアア……』

 スライムは、液体となって地面に溶けた。

「……やった」

「アレンさん、ありがとうございます!」

「いや……たまたまだ」

 でも、心臓は激しく鳴っていた。

 これが、実戦。

 これが、ダンジョン。

「よくやった」

 ディルクが、僕の肩を叩いた。

「魔法が使えなくても、判断が速い。それが、お前の強みだ」

「……はい」

「じゃあ、先に進むぞ。まだ第1層だ。油断するな」

     *     *     *

迷子

 実習が始まって、約2時間が経過した。

 僕たちは、順調にスライムや弱小魔物を倒しながら進んでいた。

 トムも、マルクも、少しずつ魔法の制御が上手くなってきている。

「みんな、いい感じだな」

 ディルクが、満足そうに頷いた。

「じゃあ、休憩だ。あそこに、セーフゾーンがある」

 彼が指差した先に、淡く光る魔法陣があった。

 セーフゾーン――ダンジョン内で唯一、魔物が侵入できない安全地帯。

「15分休憩。水分補給しろ」

 みんな、ほっとした表情で座り込んだ。

「疲れたぁ……」

「でも、楽しかったな」

「俺、初めて魔物倒せた!」

 クラスメイトたちの笑顔。

 Fクラスも、少しずつまとまってきた気がする。

「アレンさん、お水どうぞ」

 ヒナタが、水筒を差し出した。

「ありがとう」

 冷たい水が、喉を潤す。

「ねぇ、アレンさん」

「ん?」

「私、思ったんです。アレンさんって、魔法は使えないけど――すごく冷静ですよね」

「……そうかな」

「はい。さっきも、トムさんを助けてくれたじゃないですか。私だったら、パニックになってたかも」

 ヒナタは、笑顔で言った。

「だから、アレンさんがいてくれて、安心します」

 その言葉が、嬉しかった。

「……ありがとう、ヒナタ」

 その時――

「おい、アレン。ちょっと来い」

 ディルクが、僕を呼んだ。

「少し、周辺を見回る。お前も来い」

「はい」

 僕は、ヒナタに合図して、ディルクについていった。

 セーフゾーンから少し離れた場所。

「アレン、お前――何か、感じるか?」

「……感じる?」

「ああ。マナの流れとか、気配とか」

 僕は、目を閉じた。

 集中する。

 周囲のマナを、感じようとする。

 その時――

 微かに、何かが聞こえた気がした。

 ざわざわと、マナが囁いている。

『……危険……』

『……来る……』

「……何か、います」

「何?」

「分かりません。でも……マナが、警告してる気がします」

 ディルクの目が、鋭くなった。

「……そうか。お前、やっぱり特殊だな」

 その時――

 遠くから、悲鳴が聞こえた。

「きゃああああ!」

 ヒナタの声!

「ヒナタ!」

 僕たちは、セーフゾーンに駆け戻った。

 だが――

 そこには、誰もいなかった。

「全員、どこだ!?」

 ディルクが、周囲を見渡す。

 地面には、魔法陣の残骸。

 そして――血痕。

「まさか……転移罠!」

 ディルクが、舌打ちした。

「G級ダンジョンに、こんなものがあるはずないのに……!」

「転移罠……?」

「ダンジョンの深層に強制転送される罠だ。くそ、誰かが仕掛けたのか……!」

 ……そして、その“転移罠”が仕掛けられた座標は、

――Fクラスの出発経路、ぴたりと同じ位置だった。

 

 ディルクは、通信魔法を試みた。

 だが――

「ダメだ……マナ濃度が高すぎて、通信が遮断されてる……」

 彼は、僕を見た。

「アレン、お前は俺と来い。全員を探す」

「はい!」

     *     *     *

ヒナタ――第2層の恐怖

 一方、ヒナタは――

「きゃっ!」

 突然の眩い光に包まれ、次の瞬間、見知らぬ場所に立っていた。

「え……ここ、どこ……?」

 周囲は、先ほどとは全く違う景色。

 薄暗く、冷たい空気。石造りの廊下。

「第2層……? でも、G級ダンジョンに第2層なんて……」

 ヒナタは、震える手で杖を握りしめた。

「アレンさん……ディルク先生……」

 周りには、誰もいない。

 完全に、一人ぼっち。

『ガァァァ……』

 遠くから、低い唸り声が聞こえた。

 ヒナタの顔が、青ざめた。

「う、嘘……魔物……?」

 足が、震える。

 でも――

(逃げなきゃ……!)

 ヒナタは、廊下を走り出した。

 曲がり角を曲がり、階段を下り、ひたすら逃げる。

 だが――

『ガルルルル……』

 行く手を、巨大な影が塞いだ。

「ひっ……!」

 それは、狼型の魔物だった。

 体長2メートル以上。鋭い牙。赤く光る目。

 森林狼フォレストウルフ――C級の魔物。

「そんな……なんで、こんなところに……!」

 ヒナタは、杖を構えた。

 でも、手が震えて、まともに構えられない。

(怖い……怖い……!)

 森林狼が、跳躍した。

「いやああああ!」

 ヒナタは、目を閉じた。

 その時――

 世界が、静止した。

     *     *     *

アレン――転移

 ディルクと共に捜索していた僕の前にも――転移罠が現れた。

「アレン、危ない!」

 ディルクが叫んだ瞬間、足元の魔法陣が光った。

「うわっ!」

 視界が真っ白になる。

 浮遊感。

 そして――

 ドサッ!

「いてて……」

 気がつくと、僕も見知らぬ場所にいた。

 石造りの廊下。

 ディルクの姿は、ない。

「……一人か」

 僕は、立ち上がった。

 周囲を警戒しながら、歩き出す。

『アレン』

 エルフェリアの声が、聞こえた。

「エルフェリア……!」

『落ち着いて。ヒナタが、危険よ』

「ヒナタ!?」

『この先、左の廊下。急いで!』

 僕は、走り出した。

 左の廊下を駆け抜ける。

 そして――

 開けた空間に出た。

 そこには――

 森林狼に襲われようとしている、ヒナタの姿。

「ヒナタ!」

 僕は、全力で駆けた。

 間に合わない――

 その時、僕の体が、熱くなった。

 胸の奥から、何かが溢れてくる。

 光が、空気を震わせた。

草木がざわめき、マナが歌う。

世界そのものが、僕の願いに応えていた。

 

『世界のマナが、あなたに応えてる!』

 エルフェリアの声。

「頼む……力を貸してくれ!」

 僕は、右手を前に突き出した。

 瞬間――

 眩い光が、迸った。

『ギャウッ!?』

 森林狼が、光に包まれて吹き飛んだ。

 壁に激突し、動かなくなる。

「……え?」

 ヒナタが、呆然と僕を見た。

 僕も、自分の手を見つめた。

 淡く光る手のひら。

「僕が……魔法を……?」

『そう。これが、古代魔法』

 エルフェリアの声が、優しく響いた。

『世界のマナを借りる力。あなただけの、特別な魔法』

 ヒナタが、駆け寄ってきた。

「アレンさん……! 今の……魔法……?」

「……ああ。でも、僕にもよく分からない」

 僕は、ヒナタの肩を抱いた。

「怪我は?」

「だ、大丈夫です……でも、怖かったです……」

 彼女の体が、震えている。

「もう大丈夫。僕が、守るから」

 その言葉に、ヒナタは小さく頷いた。

「……はい」

 その時――

「アレン! ヒナタ!」

 遠くから、ディルクの声が聞こえた。

「ディルク先生!」

 僕たちは、声のする方へ駆けた。

     *     *     *

脱出

 ディルクは、他のFクラス生徒たちも見つけ出していた。

 全員、無事だった。

「よかった……みんな、無事で……」

 ヒナタが、安堵の息を吐いた。

「すまん、俺の不注意だ」

 ディルクが、悔しそうに拳を握った。

「まさか、G級ダンジョンにこんな罠があるとは……誰かが、故意に仕掛けた可能性が高い」

「故意に……?」

「ああ。おそらく、Fクラスを狙ったものだ」

 ディルクの顔が、険しい。

「だが、それは後で調べる。今は、脱出するぞ」

 彼は、脱出魔法陣を展開した。

「全員、魔法陣の中に入れ」

 僕たちは、魔法陣の中に集まった。

「転移開始!」

 光が、僕たちを包む。

 そして――

 気がつくと、学園の門の前に戻っていた。

「……戻れた」

「よかったぁ……」

 クラスメイトたちが、地面に座り込んだ。

「全員、今日は休め。明日、詳しい報告を聞く」

 ディルクが、疲れた表情で言った。

「アレン、ヒナタ。お前たち二人は、保健室に行け」

「はい」

     *     *     *

保健室――エリナ先生との出会い

 保健室の扉を開けると、柔らかいピンクブロンドの髪の女性が振り向いた。

「あら、いらっしゃい。怪我した子たちね」

 優しい笑顔。緑の瞳。

「私はエリナ・フォルティア。保健教師よ」

「あの、僕たち、怪我はしてないんですけど……」

「ディルクから連絡があったの。念のため、診察してねって」

 エリナ先生は、僕たちをベッドに座らせた。

「はい、じゃあ全身診察ね。回復魔法ヒール

 温かい光が、体を包む。

 疲れが、すっと消えていく。

「……すごい」

「ふふ、私、元Aランク回復師なのよ」

 エリナ先生が、ウインクした。

「二人とも、体は大丈夫ね。でも――」

 彼女は、僕を見つめた。

「アレンくん、あなた……何か特別なものを持ってるわね」

「……え?」

「マナの流れが、普通じゃない。体内マナはゼロなのに、周囲のマナがあなたに集まってる」

 エリナ先生の目が、真剣だった。

「もしかして……あなたの中に、懐かしい“波”を感じるわ」

「波?」

「ふふ、昔……似た子がいたの」

 僕は、驚いて先生を見た。

「……え?……」

「ふふ、秘密。でも、大丈夫。私は味方よ」

 彼女は、優しく笑った。

「困ったことがあったら、いつでも来てね。力になるから」

「……ありがとうございます」

     *     *     *

その夜――家にて

 家に帰ると、母が心配そうに迎えてくれた。

「アレン、無事で良かった……学園から連絡があったの」

「ごめん、心配かけて」

「無理しないでね。あなたは、私の大切な息子なんだから」

 母は、僕を優しく抱きしめた。

 その夜、部屋でエルフェリアの声が聞こえた。

『アレン、今日はよく頑張ったわ』

「……エルフェリア。僕、本当に魔法が使えたのか?」

『もちろんよ。あれが、古代魔法の第一歩』

「でも、まだ制御できない……」

『大丈夫。これから、少しずつ慣れていくわ』

 エルフェリアの声が、温かい。

『あなたは、選ばれた者。世界が、あなたを守ってくれる』

「……ありがとう」

『おやすみなさい、アレン』

 僕は、ベッドに横になった。

 今日、初めて――本当の意味で、魔法を使った。

 まだ不安定で、制御できない。

 でも、確かに感じた。

 世界のマナの、温かさを。

 まるで、僕の中の何かを呼び覚ますように――。

(これから、どんどん強くなる)

 そう心に誓って、眠りについた。

第4話「覚醒の兆し」へ続く

次回予告:

ダンジョン実習での出来事は、学園中に広まった。

「アレンが魔法を使った?」

「嘘だろ、マナゼロなのに?」

疑惑と期待の視線。

そして、Aクラスのレンが、アレンに勝負を挑んでくる――

「お前、本当に魔法使えるようになったのか? なら、俺と戦え」

因縁の対決が、今、始まる!

第4話「覚醒の兆し」、次回更新!

作者コメント:

第3話、お楽しみいただけましたでしょうか?

ついに、アレンが古代魔法を初発動しました!

まだ不安定ですが、これが成長の第一歩です。

そして、エリナ先生という新たな味方も登場。

彼女は、古代魔法について何か知っているようです……?

次回は、レンとの対決編!

お楽しみに!

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