第6話:水流の試練
《水流領域・アクアドメイン》——
アクアが展開した領域が、神殿全体を覆っている。
激しい水流が、三人を翻弄する。
「くっ……」
ヒナタが、必死に踏ん張った。
「体が——流される」
「これが、化身の力か……」
レンが呟いた。
「まだ、戦闘も始まっていないのに——もう、こんなに不利とは」
「諦めるな」
アレンは告げた。
「俺たちは——これまでも、乗り越えてきた」
「今回も、同じだ」
「……ああ」
レンは頷いた。
「やってやる」
「ふふ……」
アクアは、微笑んだ。
「素敵ね——その諦めない心」
「でも——それだけでは、私には勝てないわよ」
アクアが、手を掲げた。
「《水槍乱舞・ウォーターランス》!」
無数の水の槍が、宙に現れた。
「……!」
全員が、構えた。
水の槍が——三人に向かって飛んでくる。
「《ライトシールド》!」
ヒナタが、光の盾を展開した。
**ガキンッ! ガキンッ!**
水の槍が、盾に突き刺さる。
「くっ……」
ヒナタが、押されていく。
「ヒナタ!」
アレンが駆け出した。
「《フロストエッジ》!」
氷の刃が、水の槍を凍らせていく。
だが——
すぐに、新たな水の槍が現れた。
「きりがない……」
アレンが呟いた。
「当然よ」
アクアは告げた。
「この領域では——水のマナは無尽蔵」
「あなたたちが疲れるまで——攻撃し続けられるわ」
「なら——」
レンが、前に出た。
「領域を破壊する!」
「《サンダーブリッツ》!」
雷が、神殿の水の壁に直撃した。
**バリバリッ!**
水が、蒸発する。
「やった!」
レンが叫んだ。
だが——
蒸発した水は、すぐに補充された。
「……無駄だ」
レンが、唇を噛んだ。
「無駄ではないわ」
アクアは微笑んだ。
「でも——足りないのよ」
「あなたたちの力では——この領域は壊せない」
「……くそ」
レンが、悔しそうに呟いた。
「なら——」
アレンは、剣を構えた。
「直接、倒すしかない」
「行くぞ!」
アレンが、アクアに向かって駆け出した。
「《六属性統合・ヘキサハーモニー》!」
六色の光が、剣を包み込む。
アレンが、剣を振り下ろした。
「……甘いわ」
アクアは、軽く手を振った。
「《水壁・ウォーターウォール》」
巨大な水の壁が、アレンの前に現れた。
**ザシュッ!**
剣が、水の壁に飲み込まれた。
「……!」
アレンが、後退した。
「六属性の力——確かに強いわ」
アクアは告げた。
「でも——私の水は、全てを受け流す」
アクアが、再び手を掲げた。
「《水流鎖・ウォーターチェーン》!」
水の鎖が、アレンの体に巻きつく。
「くっ……」
アレンが、動けなくなった。
「アレン!」
ヒナタが叫んだ。
「《セイントゲイル》!」
光と風の魔法が、水の鎖に向かって飛んだ。
鎖が、切れる。
「……ありがとう」
アレンは、ヒナタに頷いた。
「でも——まだ終わらないわよ」
アクアは、楽しそうに微笑んだ。
「もっと——あなたたちの力を見せて」
アクアが、両手を広げた。
「《水流嵐・ウォーターストーム》!」
神殿全体に——激しい水流が吹き荒れた。
「うわっ!」
レンが、吹き飛ばされた。
「きゃっ!」
ヒナタも、倒れた。
アレンは——必死に、剣を地面に突き刺して踏ん張った。
「くっ……」
視界が、水で染まる。
何も見えない。
体が、流されていく。
(このままじゃ——負ける)
アレンは、心の中で呟いた。
(どうする……)
(どうすれば——アクアに勝てる?)
『アレン』
その瞬間——声が聞こえた。
「グラシア……」
『思い出して』
グラシアの声が響いた。
『水と氷は——表裏一体』
『水を制するには——氷の力を使うのよ』
「……そうか」
アレンは、目を閉じた。
氷の力——
グラシアとの契約で得た、氷のマナ。
それを——最大限に引き出す。
「《氷結領域・フロストドメイン》!」
アレンが、魔法を発動した。
氷の領域が——展開された。
水流が——凍り始めた。
「……!」
アクアの目が、大きく見開かれた。
「《氷結解放・フリーズブレイク》!」
アレンが、剣を振り下ろした。
氷の斬撃が——水流を凍らせた。
**パリィィンッ!**
水流が、砕けた。
視界が、晴れる。
「……やるわね」
アクアは、少し驚いた表情を浮かべた。
「氷の力を使うとは——見事だわ」
「でも——」
アクアは、微笑んだ。
「それでも、まだ足りない」
アクアが、手を掲げた。
「《水流巨人・アクアタイタン》!」
水が、集まり始めた。
やがて——
巨大な水の巨人が、現れた。
身長は、十メートル以上。
全身が、水で覆われている。
「……また、巨人か」
レンが、驚いた表情で呟いた。
「私の最強の水魔法よ」
アクアは告げた。
「さあ——この巨人を倒してみせて」
水の巨人が——動き始めた。
巨大な拳が、三人に向かって振り下ろされる。
「避けろ!」
アレンが叫んだ。
三人は、飛び退いた。
**ドガアアンッ!**
拳が、床に激突した。
床が、砕ける。
「くそ……」
レンが、剣を抜いた。
「《サンダーフレア》!」
炎と雷の魔法が、巨人に直撃した。
だが——
巨人は、びくともしなかった。
「効いてない……」
レンが、唇を噛んだ。
「私も!」
ヒナタが、魔法を放った。
「《トリニティブレス》!」
光、水、風の三属性が融合した魔法が、巨人に直撃する。
巨人の体が、揺らいだ。
「やった!」
ヒナタが叫んだ。
だが——
巨人は、すぐに元に戻った。
「……無理だ」
ヒナタが、絶望的な表情で呟いた。
「諦めるな」
アレンは告げた。
「巨人の核を——破壊する」
「核……?」
レンが尋ねた。
「水の巨人にも——マナの核がある」
アレンは告げた。
「それを破壊すれば——巨人は消える」
「でも——どこに核があるんだ?」
レンが尋ねた。
「……胸だ」
アレンは、巨人の胸を見つめた。
そこには——青く輝く結晶が埋め込まれていた。
「あれが、核か」
レンが呟いた。
「ああ」
アレンは頷いた。
「俺が——あそこを狙う」
「二人は——時間を稼いでくれ」
「分かった」
レンは頷いた。
「任せろ」
「私も、頑張る」
ヒナタも頷いた。
「行くぞ!」
レンとヒナタが、巨人に向かって駆け出した。
「《サンダーストライク》!」
「《ウィンドライト》!」
二人の魔法が、巨人に直撃する。
巨人の動きが、一瞬止まった。
「今だ!」
アレンが、駆け出した。
剣を構える。
六属性の力を——集中させる。
光、炎、風、闇、氷、土——
全てを、剣に込める。
「《六属性統合・ヘキサハーモニー》!」
剣が——虹色の光を放った。
だが——
アレンは、さらに力を込めた。
『アレン』
声が聞こえた。
エルフェリア、イグニス、シルフ、ノクス、グラシア、テラ——
六体の化身の声が、響いた。
『私たちの力を——使って』
「……ああ」
アレンは頷いた。
「みんなの力を——借りる」
剣が——さらに強く輝いた。
六色の光が——渦を巻く。
「《六属性解放・ヘキサリベレーション》!」
アレンが、新たな魔法を発動した。
剣が——巨大な虹色の光の剣に変わった。
「……!」
アクアの目が、大きく見開かれた。
アレンが、巨人の胸に向かって跳んだ。
「《虹刃究極・レインボーアルティメット》!」
光の剣が——巨人の胸の核に突き刺さった。
**パリィィィィンッ!**
核が——砕けた。
「……!」
巨人の動きが、止まった。
やがて——
巨人の体が、崩れ始めた。
水が、粉々に砕ける。
巨人が——消えた。
「やった……」
アレンは、着地した。
「すごい……」
ヒナタが、驚いた表情で呟いた。
「あれが——新しい魔法か」
レンも、感嘆の声を上げた。
「……見事ね」
アクアは、拍手をした。
「水の巨人を——あんな力で倒すとは」
「あなたは——本当に強くなったわね」
「……ありがとう」
アレンは、剣を鞘に収めた。
「でも——これで終わりじゃないでしょう?」
「ええ」
アクアは微笑んだ。
「でも——もう十分よ」
アクアが、手を下ろした。
《水流領域・アクアドメイン》が——消えた。
神殿は、元の姿に戻った。
「……終わり?」
レンが尋ねた。
「ええ」
アクアは頷いた。
「あなたたちの力——確かに見たわ」
「そして、あなたたちの心も——感じ取った」
「だから——契約してあげる」
「……本当か!?」
アレンが叫んだ。
「ええ」
アクアは、アレンの前に歩み寄った。
「でも——一つだけ、条件があるわ」
「条件……?」
アレンが尋ねた。
「ええ」
アクアは告げた。
「あなたは——水の力を、正しく使うこと」
「決して——悪用しないこと」
「そして——命を守るために、その力を使うこと」
「約束できる?」
「……ああ」
アレンは頷いた。
「約束する」
「そう」
アクアは、微笑んだ。
「なら——契約しましょう」
アクアが、手を差し出した。
アレンも、手を差し出した。
二人の手が——重なった。
その瞬間——
青い光が、二人を包み込んだ。
「契約成立——」
アクアの声が、響いた。
「私、水のマナの化身・アクアは——」
「アレン・アルカディアと、ここに契約する」
光が——強くなった。
アレンの体に——水のマナが流れ込む。
冷たく、それでいて——優しい感覚。
「……これが」
アレンは呟いた。
「水のマナ……」
やがて——
光が、消えた。
アクアが、アレンの前に立っていた。
「契約は——完了よ」
アクアは微笑んだ。
「これで、あなたは——七属性を統べる者になった」
「七属性……」
アレンは呟いた。
光、炎、風、闇、氷、土、水——
七つの属性。
あと、残りは——
雷。
「……ありがとう」
アレンは、深く頭を下げた。
「礼には及ばないわ」
アクアは告げた。
「これから——よろしくね、アレン」
「ああ」
アレンは頷いた。
「よろしく、アクア」
-----
神殿を出ると——
湖のほとりは、夕暮れだった。
「やった……」
ヒナタが、喜びの声を上げた。
「アレン、おめでとう!」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「ありがとう」
「よくやったな」
レンも、アレンの肩を叩いた。
「これで——七属性だ」
「ああ」
アレンは頷いた。
光、炎、風、闇、氷、土、水——
七つの属性。
あと、残りは——
雷だけ。
「……!」
その瞬間——
湖のほとりが、揺れ始めた。
「何だ!?」
レンが叫んだ。
「……気配がする」
アクアが、真剣な表情で呟いた。
「誰かが——この湖に近づいている」
「誰だ?」
アレンが尋ねた。
「……強い気配」
アクアは告げた。
「おそらく——敵よ」
「敵……」
アレンは、剣を握りしめた。
「行くぞ」
三人は、気配のする方へと駆け出した。
-----
湖の反対側——
そこには、黒いローブを纏った人物が立っていた。
仮面をつけている。
「……!」
アレンの目が、大きく見開かれた。
「お前は——」
「また会ったな、アレン・アルカディア」
仮面の人物が、告げた。
低く、冷たい声。
「ヴォイド……」
アレンが呟いた。
黒月の牙の新首領——ヴォイド。
「何の用だ」
アレンは、剣を抜いた。
「用?」
ヴォイドは、小さく笑った。
「決まっている」
「お前の力——そして、化身を頂きに来た」
「……させるか」
アレンは、構えた。
「ふふ……」
ヴォイドは、手を掲げた。
「では——始めようか」
ヴォイドの手から——黒い水流が溢れ出した。
「……!」
アレンが、驚いた。
(水……?)
(でも——アクアの水とは、違う)
(これは——)
「闇の水流だ」
ヴォイドは告げた。
「さあ——お前の力を見せてみろ」
ヴォイドが、闇の水流を放った。
「くっ……」
アレンは、剣で水流を弾いた。
だが——
水流は、すぐに再生した。
「《フロストエッジ》!」
アレンが、氷の魔法を放った。
水流が——凍り始めた。
だが——
すぐに、闇の力で溶けた。
「無駄だ」
ヴォイドは告げた。
「私の闇の力は——全てを飲み込む」
ヴォイドが、再び手を掲げた。
「《闇水爆裂・ダークウォーターバースト》!」
巨大な闇の水球が、アレンに向かって飛んできた。
「……!」
アレンは、剣を構えた。
「《七属性統合・ヘプタハーモニー》!」
七つの力を——剣に集める。
剣が、七色の光を放った。
「《虹刃解放・レインボーブレイク》!」
アレンが、剣を振り下ろした。
虹色の斬撃が——闇の水球に直撃した。
**ドオオオオンッ!**
巨大な爆発が起きた。
衝撃波が、周囲に広がる。
「くっ……」
アレンは、後退した。
「……なかなかやるな」
ヴォイドは、少し驚いた様子で呟いた。
「七属性——もう、そこまで来たか」
「……お前の目的は何だ」
アレンが尋ねた。
「なぜ——八属性を狙う」
「……ふふ」
ヴォイドは、小さく笑った。
「知りたいか?」
「ああ」
アレンは頷いた。
「教えてくれ」
「……いいだろう」
ヴォイドは告げた。
「私の目的は——八属性を統合すること」
「そして——新しい世界を創造することだ」
「新しい……世界?」
アレンが呟いた。
「そうだ」
ヴォイドは続けた。
「この世界は——腐っている」
「強者が弱者を虐げ、富める者が貧しい者を見下す」
「そんな世界を——私は変える」
「八属性を統合し——新しい世界を創造する」
「全てが平等で、争いのない——理想の世界を」
「……」
アレンは、黙った。
「お前も——分かっているはずだ」
ヴォイドは告げた。
「お前は——体内マナゼロで、差別されてきた」
「弱者の苦しみを——知っているはずだ」
「なら——私と共に来い」
「一緒に——新しい世界を創ろう」
「……」
アレンは、拳を握りしめた。
「……断る」
アレンは告げた。
「確かに——俺は、差別されてきた」
「でも——それでも」
「この世界を——変える方法は、破壊じゃない」
「俺は——仲間と共に、この世界を守る」
「そして——少しずつ、変えていく」
「それが——俺の道だ」
「……そうか」
ヴォイドは、小さく笑った。
「残念だ」
「だが——お前の答えは、予想していた」
「なら——力ずくで、奪うだけだ」
ヴォイドが、両手を掲げた。
「《闇水……》」
その瞬間——
「させない!」
アクアが、前に出た。
「《水流領域・アクアドメイン》!」
水の領域が、展開された。
ヴォイドの動きが、止まった。
「……化身か」
ヴォイドは呟いた。
「なら——これも回収しなければ」
ヴォイドが、アクアに向かって手を伸ばした。
「させるか!」
アレンが、ヴォイドに斬りかかった。
剣が——ヴォイドの仮面を掠めた。
「……!」
ヴォイドが、後退した。
仮面に——亀裂が入った。
「ふん……」
ヴォイドは、仮面を押さえた。
「今日は——ここまでにしておこう」
「逃げるのか!?」
アレンが叫んだ。
「逃げる?」
ヴォイドは、小さく笑った。
「違う——戦略的撤退だ」
「次は——お前を倒す」
「そして——八属性を手に入れる」
「それまで——強くなっておけ、アレン・アルカディア」
ヴォイドが、黒い煙に包まれた。
煙が消えると——
ヴォイドの姿は、消えていた。
「……くそ」
アレンは、唇を噛んだ。
「また、逃げられた……」
「でも——」
アクアが、アレンの肩に手を置いた。
「あなたは、よく戦ったわ」
「……ありがとう」
アレンは、小さく微笑んだ。
-----
その夜——
三人は、湖のほとりで休息を取った。
「今日は——本当に、大変だったな」
レンが、疲れた様子で呟いた。
「ああ」
アレンも頷いた。
「でも——アクアと契約できた」
「それは——大きな成果だ」
「うん」
ヒナタも微笑んだ。
「これで、七属性だね」
「ああ」
アレンは、手を見つめた。
七つの力が——体の中にある。
光、炎、風、闇、氷、土、水。
あと、残りは——
雷だけ。
「次は——雷だ」
アレンは告げた。
「最後の属性——それを手に入れれば」
「八属性が——揃う」
「……その時が、楽しみだな」
レンは微笑んだ。
「ああ」
アレンも微笑んだ。
三人は、静かに星空を見上げた。
-----
翌朝——
三人は、転移魔法陣へと向かった。
アクアも、一緒だった。
「それじゃあ——また」
アクアは、手を振った。
「また……?」
アレンが尋ねた。
「ええ」
アクアは微笑んだ。
「私は——あなたと契約したけど」
「まだ、この湖に留まるわ」
「どうして?」
ヒナタが尋ねた。
「この湖には——まだ、私の役目があるの」
アクアは告げた。
「でも——あなたが呼べば、すぐに駆けつけるわ」
「……そうか」
アレンは頷いた。
「分かった」
「じゃあ——また会おう」
「ええ」
アクアは微笑んだ。
「また会いましょう」
三人は、転移魔法陣に乗った。
光が、三人を包み込む。
「さようなら」
アクアの声が、最後に聞こえた。
光が強くなり——
三人の姿は、消えた。
-----
学院に戻ると——
他のメンバーたちが、出迎えてくれた。
「おかえり!」
トムが手を振った。
「無事だったか?」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「無事だ」
「よかった……」
リサが安堵の息を吐いた。
「で——任務は成功したのか?」
マルクが尋ねた。
「ああ」
アレンは頷いた。
「水のマナの化身——アクアと、契約した」
「おお……」
カイルが感嘆の声を上げた。
「すげえな」
「これで——七属性か」
エマが微笑んだ。
「あと一つだね」
「ああ」
アレンは頷いた。
「雷が——残っている」
「頑張れよ」
トムが、アレンの肩を叩いた。
「お前なら——きっとできる」
「……ありがとう」
アレンは、微笑んだ。
-----
その後——
ディルク・グレイソン教師が、アレンを呼んだ。
「アレン」
「何ですか?」
アレンが尋ねた。
「よくやった」
ディルクは微笑んだ。
「七属性——素晴らしい成果だ」
「ありがとうございます」
アレンは頭を下げた。
「だが——」
ディルクは、真剣な表情になった。
「最後の属性——雷だが」
「……はい」
アレンは、息を飲んだ。
「その情報は——まだない」
ディルクは告げた。
「雷のマナの化身の居場所が——分からないんだ」
「……!」
アレンの目が、大きく見開かれた。
「どういうことですか?」
「文字通りだ」
ディルクは告げた。
「他の化身は——特定の場所に留まっていた」
「でも——雷の化身は、どこにも現れていない」
「……」
アレンは、黙った。
「お前は——自分で探さなければならない」
ディルクは告げた。
「それが——最後の試練だ」
「……分かりました」
アレンは頷いた。
「自分で——探します」
「頼んだぞ」
ディルクは、アレンの肩を叩いた。
アレンは、教室を後にした。
(雷のマナの化身……)
(どこにいるんだ?)
アレンは、心の中で呟いた。
-----
その夜——
アレンは、訓練場にいた。
剣を振る。
七属性の力を、引き出す。
光、炎、風、闇、氷、土、水——
七つの力が、剣に宿る。
「《七属性統合・ヘプタハーモニー》!」
アレンが、魔法を発動した。
剣が——七色の光を放った。
光、炎、風、闇、氷、土、水——
七つの力が、一つになった。
剣が——美しい虹色の光を放った。
「……これが」
アレンは呟いた。
「七属性の力……」
『すごいわ、アレン』
エルフェリアの声が聞こえた。
「エルフェリア……」
『あなたは——もう、ここまで来たのね』
「……ああ」
アレンは頷いた。
「でも——まだ足りない」
「あと一属性——雷を集めなければ」
『焦らないで』
エルフェリアは告げた。
『雷のマナの化身は——必ず、あなたの前に現れるわ』
「……本当か?」
アレンが尋ねた。
『ええ』
エルフェリアは微笑んだ。
『八属性を統べる者——それがあなたの運命』
『だから——雷の化身も、あなたを待っているはずよ』
「……そうか」
アレンは、小さく微笑んだ。
「ありがとう、エルフェリア」
『どういたしまして』
エルフェリアの声が、消えていった。
アレンは、再び剣を構えた。
(雷のマナの化身……)
(必ず——見つける)
(そして——八属性を揃える)
アレンは、訓練を続けた。
-----
数日後——
アレンは、図書館にいた。
古い文献を、調べている。
「雷のマナの化身……」
アレンは、呟きながらページをめくった。
「どこかに——手がかりがあるはずだ」
ヒナタも、隣で本を読んでいた。
「ねえ、アレン」
ヒナタが声をかけた。
「何だ?」
アレンが尋ねた。
「この本に——雷のことが書いてあるよ」
ヒナタは、本を指差した。
「……!」
アレンが、本を覗き込んだ。
そこには——
『雷のマナの化身は、天空を司る者。特定の場所に留まらず、世界中を巡っている。しかし、真に力を求める者の前には、必ず姿を現すという』
「……天空を司る者」
アレンが呟いた。
「世界中を巡っている……」
「だから——見つからないのか」
ヒナタが告げた。
「でも——」
アレンは、文章を読み続けた。
『雷の化身を呼び出すには、高き場所で、真の力を示す必要がある。その時、雷は天より降り注ぎ、化身が現れる』
「高き場所……」
アレンが呟いた。
「学院の——塔はどうかな?」
ヒナタが提案した。
「塔……」
アレンは、窓の外を見た。
学院の中央には——高い塔がそびえ立っている。
「……そうだな」
アレンは頷いた。
「試してみる価値はある」
「いつ行くの?」
ヒナタが尋ねた。
「今夜だ」
アレンは告げた。
「準備を整えておく」
「私も——一緒に行くよ」
ヒナタが微笑んだ。
「……ありがとう」
アレンは、ヒナタの手を握った。
-----
その夜——
アレン、ヒナタ、レンの三人は、学院の塔に登っていた。
螺旋階段を、上っていく。
「高いな……」
レンが、息を切らせた。
「もう少しだ」
アレンは告げた。
「頑張ろう」
やがて——
塔の頂上に到着した。
そこは——広い展望台になっていた。
夜空には、星が輝いている。
風が、強く吹いていた。
「……ここだ」
アレンは呟いた。
「ここで——雷の化身を呼ぶ」
「どうやって?」
レンが尋ねた。
「……力を示す」
アレンは、剣を抜いた。
「七属性の力を——天に示す」
アレンが、剣を天に掲げた。
「《七属性統合・ヘプタハーモニー》!」
七つの力が——剣に集まる。
光、炎、風、闇、氷、土、水——
七つの力が、一つになった。
剣が——虹色の光を放った。
光が——天に向かって伸びていく。
「……!」
その瞬間——
夜空が、光り始めた。
雲が、渦を巻く。
**ゴロゴロゴロゴロ……**
雷鳴が、響いた。
「来た……」
アレンが呟いた。
雲の中から——
一筋の雷が、降り注いだ。
**バリバリバリッ!**
雷が、塔の頂上に落ちた。
「うわっ!」
レンとヒナタが、後退した。
だが——
アレンは、動かなかった。
雷が——アレンを包み込む。
「くっ……」
アレンの体が、痺れる。
だが——
アレンは、剣を握り続けた。
「俺は——七属性を統べる者」
アレンは叫んだ。
「雷のマナの化身——お前の力を、貸してほしい」
雷が——強くなった。
光が、さらに強くなる。
やがて——
光が、人の形を作り始めた。
雷が、少しずつ収まっていく。
そして——
一人の少年が、アレンの前に現れた。
金色の髪。
雷のような、鋭い黄金の瞳。
白と金のローブ。
「……!」
アレンの目が、大きく見開かれた。
少年は——微笑んだ。
「よく呼んだな」
威厳のある、それでいて若々しい声。
「俺は——ヴォルト」
少年は告げた。
「雷のマナの化身だ」
「……!」
アレンの胸が、高鳴った。
(ヴォルト……!)
ついに——
雷のマナの化身と、出会った。
「お前が——アレン・アルカディアか」
ヴォルトが尋ねた。
「……ああ」
アレンは頷いた。
「俺は——七属性を統べる者」
「そして——八属性を集めている」
「ほう……」
ヴォルトは、興味深そうに呟いた。
「七属性を、もう統べているのか」
「見せてみろ」
「……ああ」
アレンは、再び剣を構えた。
「《七属性統合・ヘプタハーモニー》!」
七色の光が、剣を包み込む。
「……なるほど」
ヴォルトは頷いた。
「確かに——お前は、七属性を統べている」
「だが——」
ヴォルトは、真剣な表情になった。
「俺と契約したいなら——試練を受けてもらう」
「試練……」
アレンが呟いた。
「受けよう」
「……即答か」
ヴォルトは、少し驚いた表情を浮かべた。
「迷わないのか?」
「ああ」
アレンは頷いた。
「俺は——前に進むと決めた」
「だから、どんな試練でも——受ける」
「……面白い」
ヴォルトは、笑った。
「気に入った」
「なら——試練を始めよう」
ヴォルトが、手を掲げた。
「だが——俺の試練は、他の化身とは違う」
「どう違うんだ?」
アレンが尋ねた。
「俺の試練は——一つだけ」
ヴォルトは告げた。
「俺との戦い——それだけだ」
「……!」
アレンの目が、大きく見開かれた。
「心の試練も、絆の試練もない」
ヴォルトは続けた。
「ただ——純粋な力の勝負だ」
「俺を倒せれば——契約してやる」
「倒せなければ——契約はない」
「……分かった」
アレンは、剣を構えた。
「受けて立つ」
「ふふ……」
ヴォルトは、楽しそうに笑った。
「いい目だ」
「なら——始めようか」
ヴォルトが、手を掲げた。
雷のマナが、溢れ出す。
「《雷鳴領域・サンダードメイン》!」
塔の頂上全体が、雷に包まれた。
空気が、帯電する。
「くっ……」
レンとヒナタが、後退した。
「これが——ヴォルトの力か」
アレンが呟いた。
「ああ」
ヴォルトは微笑んだ。
「俺は——雷のマナの化身」
「この領域では——俺が最強だ」
「さあ——お前の力を、見せてみろ」
「……行くぞ!」
アレンが、剣を構えた。
最後の試練——
ヴォルトとの戦いが、始まった。
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**次回予告**
雷のマナの化身・ヴォルトとの戦い。
圧倒的な雷の力を前に、アレンは苦戦する。
だが——七属性を統べる力を持つアレンは、諦めない。
そして——ついに、八属性目の契約が成立するのか?
アレンの運命が——動き出す。
**第7話「雷鳴の契約」、近日公開!**




