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第5話:水底の邂逅




翌朝——


アレン、ヒナタ、レンの三人は、再び転移魔法陣の前に立っていた。


「北方の湖か……」


レンが呟いた。


「どんな場所なんだろう?」


「水のマナが集まる場所だ」


アレンは告げた。


「きっと——美しい湖だと思う」


「楽しみだね」


ヒナタが微笑んだ。


「では——行け」


ディルク・グレイソン教師が、転移魔法陣を起動させた。


光が、三人を包み込む。


「行ってきます」


三人は、頭を下げた。


光が強くなり——


三人の姿は、消えた。


-----


北方の地——


そこは、深い森に囲まれた場所だった。


「……寒い」


ヒナタが、体を震わせた。


「北方だからな」


レンが告げた。


「でも——湖はどこだ?」


「……あそこだ」


アレンは、森の奥を指差した。


木々の間から——青く輝く湖が見えた。


「綺麗……」


ヒナタが呟いた。


湖は——透き通った青色をしていた。


水面は、鏡のように静かだ。


「行こう」


アレンは告げた。


三人は、湖へと向かった。


-----


湖のほとりに着くと——


アレンは、水面を見つめた。


「……静かだな」


レンが呟いた。


「ああ」


アレンも頷いた。


「でも——水のマナの気配がする」


「化身が——いるのか?」


ヒナタが尋ねた。


「……分からない」


アレンは呟いた。


「でも——何かいる」


その瞬間——


水面が、波立ち始めた。


「……!」


全員が、後退した。


水面から——光が溢れ出した。


光が、人の形を作っていく。


やがて——


一人の少女が、水面に浮かび上がった。


青い髪。


深い海のような、青い瞳。


青いドレス。


「……!」


アレンの目が、大きく見開かれた。


「アクア……」


少女は——微笑んだ。


「久しぶりね、アレン」


穏やかで、優しい声。


「本当に——アクアか?」


アレンが尋ねた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「私——水のマナの化身、アクアよ」


「第五章で——会ったよな」


レンが告げた。


「ええ」


アクアは微笑んだ。


「あの時は——お別れしただけだったけど」


「今日は——ちゃんと話せるわね」


「……そうか」


アレンは、少し安堵した表情で呟いた。


「よかった」


「また会えて——嬉しいわ」


アクアは告げた。


「私も——あなたと、ちゃんと契約したかったの」


「契約……」


アレンが呟いた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「あなたは——六属性を統べる者」


「あと少しで——八属性が揃う」


「だから——私も、あなたと契約したい」


「……本当か?」


アレンが尋ねた。


「ええ」


アクアは微笑んだ。


「でも——他の化身たちと同じように」


「試練が必要よ」


「試練……」


アレンは呟いた。


「受けよう」


「……迷わないのね」


アクアは、少し驚いた表情を浮かべた。


「ああ」


アレンは頷いた。


「俺は——前に進むと決めた」


「だから、どんな試練でも——受ける」


「……そう」


アクアは、優しく微笑んだ。


「なら——湖の底へ、来て」


アクアが、手を掲げた。


湖の中央に——渦が現れた。


「あの渦の中に——入りなさい」


アクアは告げた。


「そこで——試練が待っているわ」


「分かった」


アレンは、剣を握りしめた。


「二人とも——いいか?」


「ああ」


レンは頷いた。


「当然だ」


「私も」


ヒナタも頷いた。


「一緒に行く」


「……ありがとう」


アレンは、二人に頭を下げた。


「では——行きましょう」


三人は、渦の中へと飛び込んだ。


-----


水の中——


不思議なことに、息ができた。


「……これは」


アレンが呟いた。


「水のマナが——私たちを守っているのよ」


ヒナタが告げた。


「そうか……」


アレンは、周囲を見渡した。


そこは——美しい水中世界だった。


青い光が、水中を照らしている。


魚たちが、優雅に泳いでいる。


「綺麗……」


ヒナタが呟いた。


「ああ」


アレンも頷いた。


「でも——油断するな」


「これから、試練が始まる」


三人は、湖の底へと泳いでいった。


やがて——


湖の底に、巨大な神殿が見えてきた。


「……あれは」


レンが呟いた。


「水の神殿か……」


「行こう」


アレンは告げた。


三人は、神殿へと向かった。


-----


神殿の中——


そこは、広い空間だった。


中央には、一つの台座が置かれている。


「……あれは」


アレンが呟いた。


台座の上には——青く輝く結晶が置かれていた。


「水のマナ結晶……」


その瞬間——


台座が、光り始めた。


**ゴゴゴゴゴ……**


神殿全体が、揺れる。


「来るぞ!」


レンが叫んだ。


光が強くなり——


台座から——三体の水の魔獣が現れた。


「……!」


全員が、構えた。


魔獣は——巨大な魚の姿をしていた。


全身が水で覆われ、鋭い牙を持つ。


「アクアフィッシュ……」


アレンが呟いた。


「Bランクの魔獣だ」


「三体も……」


ヒナタが緊張した表情で告げた。


「どうする?」


レンが尋ねた。


「戦うしかない」


アレンは、剣を抜いた。


「行くぞ!」


三人は、魔獣に向かって泳ぎ出した。


-----


「《サンダーストライク》!」


レンが、雷の魔法を放った。


雷が、一体のアクアフィッシュに直撃する。


「ギャアアアッ!」


魔獣が、悲鳴を上げた。


「やった……のか?」


レンが呟いた。


だが——


水が、魔獣の傷を覆っていく。


「……再生した!?」


レンが驚いた。


「水の魔獣は、水で傷を修復する」


アレンが告げた。


「雷だけじゃ、倒せない」


「なら——どうする!?」


レンが叫んだ。


「氷だ」


アレンは、剣に氷を宿した。


「《フロストエッジ》!」


氷の刃が、魔獣に向かって飛んだ。


「ギャアアアッ!」


魔獣が、凍り始めた。


水が凍っていく。


「今だ!」


アレンが叫んだ。


「《サンダーブリッツ》!」


レンが、雷を放った。


雷が、凍った魔獣に直撃する。


**パリィィンッ!**


魔獣が——砕け散った。


「やった!」


レンが叫んだ。


「まだ、二体いる!」


アレンが告げた。


「《ライトシールド》!」


ヒナタが、光の盾を展開した。


もう一体のアクアフィッシュが、ヒナタに突進してくる。


「ギャアアッ!」


牙が、盾に食い込んだ。


「くっ……」


ヒナタが、押されていく。


「ヒナタ!」


アレンが駆け出した。


「《フロストドメイン》!」


アレンが、グラシアの力を借りた。


氷の領域が——展開された。


魔獣の動きが、鈍くなる。


「大丈夫か?」


アレンが、ヒナタに駆け寄った。


「……うん」


ヒナタは頷いた。


「ありがとう」


「礼はいい」


アレンは微笑んだ。


「さあ——仕留めるぞ」


「うん!」


ヒナタは、剣を構えた。


「《セイントゲイル》!」


光と風の魔法が、魔獣に直撃した。


魔獣が、動きを止める。


「今だ!」


アレンが、剣を振り下ろした。


「《氷刃・クリスタルエッジ》!」


氷の刃が、魔獣を貫いた。


**パリィィンッ!**


魔獣が——砕け散った。


「残り、一体!」


レンが叫んだ。


最後の一体が——三人に向かって突進してくる。


「《サンダーフレア》!」


レンが、炎と雷を融合させた魔法を放った。


「《トリニティブレス》!」


ヒナタが、光、水、風の魔法を放った。


二つの魔法が、魔獣に直撃する。


「ギャアアアアッ!」


魔獣が、悲鳴を上げた。


「トドメだ!」


アレンが、剣を構えた。


「《六属性統合・ヘキサハーモニー》!」


光、炎、風、闇、氷、土——六つの力が、剣に集まる。


剣が——虹色の光を放った。


「《虹刃・レインボーエッジ》!」


アレンが、剣を振り下ろした。


虹色の斬撃が、魔獣を貫いた。


**ドオオオオンッ!**


魔獣が——爆発した。


水の破片が、宙を舞う。


やがて——


静寂が訪れた。


「……やった」


レンが、疲れた様子で呟いた。


「勝った……」


「ええ」


ヒナタも、安堵の表情を浮かべた。


「みんな、よく頑張った」


アレンは、剣を鞘に収めた。


-----


その瞬間——


台座の結晶が、強く輝き始めた。


「……!」


アレンが、結晶を見つめた。


光が、結晶から溢れ出す。


やがて——


アクアが、現れた。


「よくやったわ」


アクアは、微笑んだ。


「最初の試練は、クリアね」


「最初の……?」


アレンが尋ねた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「試練は、全部で三つ」


「一つ目は——戦闘の試練」


「そして——二つ目は、心の試練」


「心の……試練?」


ヒナタが首を傾げた。


「ええ」


アクアは、結晶を手に取った。


「この結晶に触れると——あなたたちの心が試される」


「心の奥底に眠る、後悔や悲しみ——それと向き合うのよ」


「……」


アレンは、黙った。


心の試練——


これまでも、何度も受けてきた。


「覚悟はいい?」


アクアが尋ねた。


「……ああ」


アレンは頷いた。


「俺たちは——乗り越える」


「そう」


アクアは、微笑んだ。


「なら——始めましょう」


アクアが、結晶を三人の前に掲げた。


結晶が——青い光を放った。


光が、三人を包み込む。


「……!」


アレンの意識が——遠のいていった。


-----


気がつくと——


アレンは、一人だった。


周囲は——真っ白な世界。


「……またか」


アレンが呟いた。


「ヒナタ! レン!」


アレンは、叫んだ。


だが——返事はない。


「……」


アレンは、歩き出した。


白い世界を、さまよう。


やがて——


前方に、人影が見えた。


「……誰だ?」


アレンが尋ねた。


人影が——振り返った。


それは——


「……母さん?」


アレンの母だった。


優しい笑顔。


温かい眼差し。


「アレン……」


母は、優しく微笑んだ。


「よく頑張っているわね」


「……母さん」


アレンの目が、潤んだ。


「お前は——立派に成長した」


母は告げた。


「私も——誇りに思うわ」


「……ありがとう」


アレンは、涙を流した。


「でも——」


母は、少し悲しそうな表情を浮かべた。


「無理はしないで」


「お前は——まだ若いのだから」


「……でも」


アレンは告げた。


「俺には——やらなければならないことがある」


「八属性を集めて——世界を救う」


「それが——俺の使命だ」


「……そう」


母は、小さく微笑んだ。


「なら——頑張りなさい」


「でも——決して、一人で抱え込まないで」


「仲間がいる——家族がいる」


「みんな——お前を支えているわ」


「……うん」


アレンは頷いた。


「分かってる」


「俺は——一人じゃない」


「そう」


母は、アレンの頭を撫でた。


「頑張って、アレン」


母の姿が——消えていった。


白い世界も——消えた。


-----


気がつくと——


アレンは、元の神殿にいた。


「……」


アレンは、息を吐いた。


「アレン!」


ヒナタが、駆け寄ってきた。


「大丈夫!?」


「……ああ」


アレンは頷いた。


「大丈夫だ」


「よかった……」


ヒナタは、安堵の表情を浮かべた。


「お前も——試練を受けたのか?」


アレンが尋ねた。


「うん……」


ヒナタは頷いた。


「私も——大切な人と、話した」


「そうか……」


アレンは、ヒナタの手を握った。


「よく頑張ったな」


「……うん」


ヒナタは、小さく微笑んだ。


「俺も……」


レンが、立ち上がった。


「厳しい試練だったが——乗り越えた」


「何を見たんだ?」


アレンが尋ねた。


「……兄さんだ」


レンは呟いた。


「兄さん……?」


アレンが首を傾げた。


「ああ」


レンは頷いた。


「俺には——兄がいたんだ」


「アルディス家の長男——優秀な魔導士だった」


「でも——五年前に、任務で死んだ」


「……そうだったのか」


アレンは、申し訳なさそうに呟いた。


「知らなかった」


「いいんだ」


レンは微笑んだ。


「兄さんは——俺に言った」


「お前は、もう十分強い——自信を持てって」


「だから——俺は、もう迷わない」


「……そうか」


アレンは頷いた。


三人は——互いに頷き合った。


-----


その瞬間——


アクアが、現れた。


「お疲れ様」


アクアは、微笑んだ。


「二つ目の試練も、クリアね」


「……あと、一つ」


アレンが呟いた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「最後の試練は——私との戦い」


「あなたが——水のマナを統べるに相応しいか」


「その力を——見せてもらうわ」


「……分かった」


アレンは、剣を抜いた。


「受けて立つ」


「ふふ……」


アクアは、微笑んだ。


「でも——今日は、ここまで」


「最後の試練は——明日よ」


「今日は——休みなさい」


アクアが手を掲げると——


神殿の外へと続く、水の道が現れた。


「外に出て——体を休めて」


「そして、明日——万全の状態で挑みなさい」


「……ああ」


アレンは頷いた。


三人は、神殿を後にした。


-----


湖のほとり——


三人は、簡易テントを張り、休息を取った。


「今日も——大変だったな」


レンが、疲れた様子で呟いた。


「ああ」


アレンも頷いた。


「でも——明日が、正念場だ」


「アクアとの戦い——簡単じゃないぞ」


「分かってる」


アレンは告げた。


「でも——俺は、勝つ」


「どんなに強くても——俺は、負けない」


「……その意気だ」


レンは、アレンの肩を叩いた。


「俺たちも——サポートする」


「ありがとう」


アレンは、微笑んだ。


-----


その夜——


アレンは、一人で湖のほとりに立っていた。


月明かりが、湖を照らしている。


『アレン』


声が聞こえた。


「エルフェリア……」


『明日——頑張ってね』


エルフェリアの声が、優しく響いた。


『私たちは——いつも、あなたと共にいるわ』


「……ああ」


アレンは頷いた。


「ありがとう」


『イグニス、シルフ、ノクス、グラシア、テラも——応援してるわよ』


「みんな……」


アレンは、微笑んだ。


「俺は——一人じゃないんだな」


『ええ』


エルフェリアの声が、消えていった。


アレンは、再び湖を見つめた。


(明日——アクアとの戦い)


(俺は——必ず、契約を果たす)


アレンは、拳を握りしめた。


-----


翌朝——


三人は、再び湖へと向かった。


アクアが、湖の中央で待っていた。


「おはよう」


アクアは微笑んだ。


「準備はいい?」


「ああ」


アレンは頷いた。


「なら——来て」


アクアが、手を掲げた。


渦が、再び現れた。


三人は、渦の中へと飛び込んだ。


-----


神殿の最深部——


そこで、最後の試練が始まる。


アクアが、中央に立った。


「さあ——来なさい」


アクアは、手を掲げた。


水のマナが、溢れ出す。


「《水流領域・アクアドメイン》!」


神殿全体が、水流に包まれた。


水の渦が、激しく回転する。


「くっ……」


レンが、体を震わせた。


「動きにくい……」


「これが——アクアの力か」


アレンが呟いた。


「ええ」


アクアは微笑んだ。


「私は——水のマナの化身」


「この領域では——私が最強よ」


「さあ——あなたの力を、見せてちょうだい」


「……行くぞ!」


アレンが、剣を構えた。


最後の試練——


アクアとの戦いが、始まった。


-----


**次回予告**


水のマナの化身・アクアとの戦い。


圧倒的な水の力を前に、アレンたちは苦戦する。


だが——アレンは、諦めない。


六属性を統べる力——その真価が、問われる。


そして——七属性目の契約が、成立するのか?


**第6話「水流の試練」、近日公開!**

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