【第六章:氷結の試練編】 第1話:極北の遺跡
-----
極北の地に現れた、氷のマナの化身・グラシア。
彼女の青い瞳が、アレンを見つめる。
「……グラシア」
アレンは、呟いた。
「あなたが——氷のマナの化身」
「ええ」
グラシアは、優雅に頷いた。
「そして——あなたが、アレン・アルカディア」
「俺を……知っているのか?」
アレンが尋ねた。
「当然よ」
グラシアは微笑んだ。
「四属性を統べる者——光と闇の調停者」
「あなたの噂は、化身たちの間で広まっているわ」
「……そうか」
アレンは、拳を握りしめた。
「なら——話は早い」
「俺は、あなたと契約したい」
「契約……」
グラシアは、首を傾げた。
「あら、随分と——ストレートなのね」
「ああ」
アレンは頷いた。
「俺には、八属性を集める必要がある」
「だから——あなたの力を貸してほしい」
「ふふ……」
グラシアは、小さく笑った。
「でも——簡単には、いかないわよ」
「……どういうことだ?」
アレンが尋ねた。
「契約には、試練が必要」
グラシアは告げた。
「あなたが——氷のマナを統べるに相応しいか」
「その心と力を——証明してもらうわ」
「試練……」
アレンは呟いた。
「受けよう」
「……迷わないのね」
グラシアは、少し驚いた表情を浮かべた。
「ああ」
アレンは真っ直ぐに、グラシアを見つめた。
「俺は——前に進むと決めた」
「だから、どんな試練でも——受ける」
「……そう」
グラシアは、微笑んだ。
「なら——入りなさい」
グラシアが手を掲げると——
古代遺跡の入口が、大きく開いた。
「この遺跡の奥に——氷の試練が待っている」
グラシアは告げた。
「そこで——あなたたちの真価を問うわ」
「あなたたち……?」
ヒナタが尋ねた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「試練は——三人で挑むもの」
「一人では、乗り越えられないわ」
「……分かった」
アレンは、ヒナタとレンを見た。
「二人とも——いいか?」
「当然だ」
レンは、剣を抜いた。
「お前一人に、行かせるわけにはいかない」
「私も」
ヒナタは微笑んだ。
「一緒に行く」
「……ありがとう」
アレンは、二人に頭を下げた。
「では——行きましょう」
グラシアが、遺跡の中へと歩き出した。
三人は、その後に続いた。
-----
遺跡の中は——
氷で覆われた、美しい空間だった。
壁も、床も、天井も——全てが氷。
それでいて、暗くはない。
氷が、淡い青白い光を放っている。
「綺麗……」
ヒナタが呟いた。
「でも——寒い」
レンが、体を震わせた。
「我慢しろ」
アレンは告げた。
「これからが、本番だ」
「ええ」
グラシアが振り返った。
「ここから先は——試練の領域」
「私は、ここで待っているわ」
「あなたたちは——奥へと進みなさい」
「分かった」
アレンは頷いた。
三人は、奥へと進み始めた。
氷の廊下を、歩く。
足音が、静かに響く。
やがて——
広い空間に出た。
「……ここは」
アレンが呟いた。
そこは——巨大な氷の広間だった。
中央には、三つの氷の柱が立っている。
「あれは……」
ヒナタが、柱を見つめた。
その瞬間——
三つの柱が、光り始めた。
**ゴゴゴゴゴ……**
氷の床が、揺れる。
「来るぞ!」
レンが叫んだ。
光が強くなり——
三つの柱から——三体の氷の魔獣が現れた。
「……!」
全員が、構えた。
魔獣は——狼の姿をしていた。
全身が氷で覆われ、鋭い牙と爪を持つ。
「アイスウルフ……」
アレンが呟いた。
「Bランクの魔獣だ」
「三体も……」
ヒナタが緊張した表情で告げた。
「どうする?」
レンが尋ねた。
「戦うしかない」
アレンは、剣を抜いた。
「行くぞ!」
三人は、魔獣に向かって駆け出した。
-----
「《サンダーストライク》!」
レンが、雷の魔法を放った。
雷が、一体のアイスウルフに直撃する。
「ガアアアッ!」
魔獣が、咆哮を上げた。
「やった……のか?」
レンが呟いた。
だが——
氷が、魔獣の傷を覆っていく。
「……再生した!?」
レンが驚いた。
「氷の魔獣は、氷で傷を修復する」
アレンが告げた。
「雷だけじゃ、倒せない」
「なら——どうする!?」
レンが叫んだ。
「炎だ」
アレンは、剣に炎を宿した。
「《フレイムゲイル》!」
炎の刃が、魔獣に向かって飛んだ。
「ガアアアッ!」
魔獣が、炎に包まれた。
氷が溶けていく。
「今だ!」
アレンが叫んだ。
「《サンダーブリッツ》!」
レンが、雷を放った。
雷が、炎に包まれた魔獣に直撃する。
**ドオオオンッ!**
爆発が起きた。
魔獣が——消滅した。
「やった!」
レンが叫んだ。
「まだ、二体いる!」
アレンが告げた。
「《ライトシールド》!」
ヒナタが、光の盾を展開した。
もう一体のアイスウルフが、ヒナタに飛びかかる。
「ガアアッ!」
牙が、盾に食い込んだ。
「くっ……」
ヒナタが、押されていく。
「ヒナタ!」
アレンが駆け出した。
「《ツインフレア》!」
二つの炎球が、魔獣に直撃した。
「ガアアアッ!」
魔獣が、吹き飛ばされた。
「大丈夫か?」
アレンが、ヒナタに駆け寄った。
「……うん」
ヒナタは頷いた。
「ありがとう」
「礼はいい」
アレンは微笑んだ。
「さあ——仕留めるぞ」
「うん!」
ヒナタは、剣を構えた。
「《ウィンドライト》!」
風と光の刃が、魔獣に向かって飛んだ。
魔獣が、動きを止める。
「今だ!」
アレンが、剣を振り下ろした。
「《紅蓮覚醒・金炎刃》!」
金色の炎が、剣を包み込む。
**ザシュッ!**
魔獣が——真っ二つに斬られた。
氷が砕け散る。
魔獣が——消滅した。
「残り、一体!」
レンが叫んだ。
最後の一体が——三人に向かって突進してくる。
「《サンダーフレア》!」
レンが、炎と雷を融合させた魔法を放った。
「《セイントゲイル》!」
ヒナタが、光と風の魔法を放った。
二つの魔法が、魔獣に直撃する。
「ガアアアアッ!」
魔獣が、咆哮を上げた。
「トドメだ!」
アレンが、剣を構えた。
「《四属性統合・テトラハーモニー》!」
光、炎、風、闇——四つの力が、剣に集まる。
剣が——虹色の光を放った。
「《虹刃・レインボーエッジ》!」
アレンが、剣を振り下ろした。
虹色の斬撃が、魔獣を貫いた。
**ドオオオオンッ!**
魔獣が——爆発した。
氷の破片が、宙を舞う。
やがて——
静寂が訪れた。
「……やった」
レンが、膝をついた。
「勝った……」
「ええ」
ヒナタも、疲れた様子で微笑んだ。
「みんな、よく頑張った」
アレンは、剣を鞘に収めた。
その瞬間——
広間の中央に——階段が現れた。
「……あれは」
アレンが呟いた。
「次の階層への、道か」
「行くしかないな」
レンが告げた。
「ああ」
アレンは頷いた。
三人は、階段を降りていった。
-----
階段を降りると——
そこには、さらに巨大な広間があった。
だが——
そこには、魔獣はいなかった。
代わりに——
広間の中央に、一つの氷の台座があった。
「……あれは」
ヒナタが呟いた。
台座の上には——青く輝く結晶が置かれていた。
「氷のマナ結晶……」
アレンが呟いた。
その瞬間——
グラシアが、現れた。
「よくやったわ」
グラシアは、微笑んだ。
「最初の試練は、クリアね」
「最初の……?」
アレンが尋ねた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「試練は、全部で三つ」
「一つ目は——戦闘の試練」
「そして——二つ目は、心の試練」
「心の……試練?」
ヒナタが首を傾げた。
「ええ」
グラシアは、台座の結晶を手に取った。
「この結晶に触れると——あなたたちの心が試される」
「心の奥底に眠る、恐怖や後悔——それと向き合うのよ」
「……」
アレンは、黙った。
心の試練——
それは、簡単ではない。
「覚悟はいい?」
グラシアが尋ねた。
「……ああ」
アレンは頷いた。
「俺たちは——乗り越える」
「そう」
グラシアは、微笑んだ。
「なら——始めましょう」
グラシアが、結晶を三人の前に掲げた。
結晶が——青い光を放った。
光が、三人を包み込む。
「……!」
アレンの意識が——遠のいていった。
-----
気がつくと——
アレンは、一人だった。
周囲は——真っ白な世界。
「……ここは」
アレンが呟いた。
「ヒナタ! レン!」
アレンは、叫んだ。
だが——返事はない。
「どこだ……」
アレンは、歩き出した。
白い世界を、さまよう。
やがて——
前方に、人影が見えた。
「……誰だ?」
アレンが尋ねた。
人影が——振り返った。
それは——
「……父さん?」
アレンの父、ゼノス・アルカディアだった。
「アレン……」
ゼノスは、冷たい目でアレンを見つめた。
「お前は——失敗作だ」
「……!」
アレンの胸が、痛んだ。
「体内マナがゼロ——家系の恥だ」
ゼノスは告げた。
「お前は、アルカディアの名を汚した」
「……違う」
アレンは、首を振った。
「俺は——もう、失敗作じゃない」
「俺は——成長した」
「それは——偽りの力だ」
ゼノスは告げた。
「世界マナに頼る力——それは、真の力ではない」
「お前は——結局、弱いままだ」
「……」
アレンは、拳を握りしめた。
(これは——心の試練)
(俺の心の奥底にある、恐怖を見せているんだ)
「でも——」
アレンは、顔を上げた。
「それでも、俺は——前に進む」
「たとえ、弱くても」
「たとえ、失敗作だと言われても」
「俺は——俺の力で、前に進む」
「……」
ゼノスは、黙った。
やがて——
ゼノスの姿が、消えていった。
白い世界が——崩れていく。
光が、アレンを包み込んだ。
-----
気がつくと——
アレンは、元の広間にいた。
「……」
アレンは、息を吐いた。
「アレン!」
ヒナタが、駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「……ああ」
アレンは頷いた。
「大丈夫だ」
「よかった……」
ヒナタは、安堵の表情を浮かべた。
「お前も——試練を受けたのか?」
アレンが尋ねた。
「うん……」
ヒナタは、少し暗い表情で頷いた。
「私も——心の奥底と、向き合った」
「そうか……」
アレンは、ヒナタの手を握った。
「よく頑張ったな」
「……うん」
ヒナタは、小さく微笑んだ。
「俺も……」
レンが、立ち上がった。
「厳しい試練だったが——乗り越えた」
「ご苦労様」
グラシアが、現れた。
「あなたたち——よくやったわ」
「二つ目の試練も、クリアね」
「……あと、一つ」
アレンが呟いた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「最後の試練は——私との戦い」
「あなたが——氷のマナを統べるに相応しいか」
「その力を——見せてもらうわ」
「……分かった」
アレンは、剣を抜いた。
「受けて立つ」
「ふふ……」
グラシアは、微笑んだ。
「でも——今日は、ここまで」
「最後の試練は——明日よ」
「今日は——休みなさい」
グラシアが手を掲げると——
遺跡の入口へと続く、氷の道が現れた。
「外に出て——体を休めて」
「そして、明日——万全の状態で挑みなさい」
「……ああ」
アレンは頷いた。
三人は、遺跡を後にした。
-----
遺跡の外——
夜空には、無数の星が輝いていた。
「綺麗……」
ヒナタが呟いた。
「ああ」
アレンも、星空を見上げた。
「でも——明日が、正念場だ」
レンが告げた。
「グラシアとの戦い——簡単じゃないぞ」
「分かってる」
アレンは頷いた。
「でも——俺は、勝つ」
「どんなに強くても——俺は、負けない」
「……その意気だ」
レンは、アレンの肩を叩いた。
「俺たちも——サポートする」
「ありがとう」
アレンは、微笑んだ。
三人は、簡易テントを張り、休息を取った。
-----
その夜——
アレンは、一人で外に出た。
星空を見上げる。
『アレン』
声が聞こえた。
「エルフェリア……」
『明日——頑張ってね』
エルフェリアの声が、優しく響いた。
『私たちは——いつも、あなたと共にいるわ』
「……ああ」
アレンは頷いた。
「ありがとう」
『イグニス、シルフ、ノクスも——応援してるわよ』
「みんな……」
アレンは、微笑んだ。
「俺は——一人じゃないんだな」
『ええ』
エルフェリアの声が、消えていった。
アレンは、再び星空を見上げた。
(明日——グラシアとの戦い)
(俺は——必ず、契約を果たす)
アレンは、拳を握りしめた。
-----
翌朝——
三人は、再び遺跡へと向かった。
グラシアが、入口で待っていた。
「おはよう」
グラシアは微笑んだ。
「準備はいい?」
「ああ」
アレンは頷いた。
「なら——入りなさい」
グラシアが、遺跡の扉を開いた。
三人は、中へと入った。
最深部の広間——
そこで、最後の試練が始まる。
グラシアが、中央に立った。
「さあ——来なさい」
グラシアは、手を掲げた。
氷のマナが、溢れ出す。
「《氷結領域・フロストドメイン》!」
広間全体が、氷に覆われた。
気温が、急激に下がる。
「くっ……」
レンが、体を震わせた。
「寒い……」
「これが——グラシアの力か」
アレンが呟いた。
「ええ」
グラシアは微笑んだ。
「私は——氷のマナの化身」
「この領域では——私が最強よ」
「さあ——あなたの力を、見せてちょうだい」
「……行くぞ!」
アレンが、剣を構えた。
最後の試練——
グラシアとの戦いが、始まった。
-----
-----
**次回予告**
氷のマナの化身・グラシアとの戦い。
圧倒的な力を前に、アレンたちは苦戦する。
だが——アレンは、諦めない。
四属性を統べる力——その真価が、問われる。
**第2話「氷結の戦い」、近日公開!**




