第1話:極北の遺跡
極北の地に現れた、氷のマナの化身・グラシア。
彼女の青い瞳が、アレンを見つめる。
「……グラシア」
アレンは、呟いた。
「あなたが——氷のマナの化身」
「ええ」
グラシアは、優雅に頷いた。
「そして——あなたが、アレン・アルカディア」
「俺を……知っているのか?」
アレンが尋ねた。
「当然よ」
グラシアは微笑んだ。
「四属性を統べる者——光と闇の調停者」
「あなたの噂は、化身たちの間で広まっているわ」
「……そうか」
アレンは、拳を握りしめた。
「なら——話は早い」
「俺は、あなたと契約したい」
「契約……」
グラシアは、首を傾げた。
「あら、随分と——ストレートなのね」
「ああ」
アレンは頷いた。
「俺には、八属性を集める必要がある」
「だから——あなたの力を貸してほしい」
「ふふ……」
グラシアは、小さく笑った。
「でも——簡単には、いかないわよ」
「……どういうことだ?」
アレンが尋ねた。
「契約には、試練が必要」
グラシアは告げた。
「あなたが——氷のマナを統べるに相応しいか」
「その心と力を——証明してもらうわ」
「試練……」
アレンは呟いた。
「受けよう」
「……迷わないのね」
グラシアは、少し驚いた表情を浮かべた。
「ああ」
アレンは真っ直ぐに、グラシアを見つめた。
「俺は——前に進むと決めた」
「だから、どんな試練でも——受ける」
「……そう」
グラシアは、微笑んだ。
「なら——入りなさい」
グラシアが手を掲げると——
古代遺跡の入口が、大きく開いた。
「この遺跡の奥に——氷の試練が待っている」
グラシアは告げた。
「そこで——あなたたちの真価を問うわ」
「あなたたち……?」
ヒナタが尋ねた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「試練は——三人で挑むもの」
「一人では、乗り越えられないわ」
「……分かった」
アレンは、ヒナタとレンを見た。
「二人とも——いいか?」
「当然だ」
レンは、剣を抜いた。
「お前一人に、行かせるわけにはいかない」
「私も」
ヒナタは微笑んだ。
「一緒に行く」
「……ありがとう」
アレンは、二人に頭を下げた。
「では——行きましょう」
グラシアが、遺跡の中へと歩き出した。
三人は、その後に続いた。
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遺跡の中は——
氷で覆われた、美しい空間だった。
壁も、床も、天井も——全てが氷。
それでいて、暗くはない。
氷が、淡い青白い光を放っている。
「綺麗……」
ヒナタが呟いた。
「でも——寒い」
レンが、体を震わせた。
「我慢しろ」
アレンは告げた。
「これからが、本番だ」
「ええ」
グラシアが振り返った。
「ここから先は——試練の領域」
「私は、ここで待っているわ」
「あなたたちは——奥へと進みなさい」
「分かった」
アレンは頷いた。
三人は、奥へと進み始めた。
氷の廊下を、歩く。
足音が、静かに響く。
やがて——
広い空間に出た。
「……ここは」
アレンが呟いた。
そこは——巨大な氷の広間だった。
中央には、三つの氷の柱が立っている。
「あれは……」
ヒナタが、柱を見つめた。
その瞬間——
三つの柱が、光り始めた。
**ゴゴゴゴゴ……**
氷の床が、揺れる。
「来るぞ!」
レンが叫んだ。
光が強くなり——
三つの柱から——三体の氷の魔獣が現れた。
「……!」
全員が、構えた。
魔獣は——狼の姿をしていた。
全身が氷で覆われ、鋭い牙と爪を持つ。
「アイスウルフ……」
アレンが呟いた。
「Bランクの魔獣だ」
「三体も……」
ヒナタが緊張した表情で告げた。
「どうする?」
レンが尋ねた。
「戦うしかない」
アレンは、剣を抜いた。
「行くぞ!」
三人は、魔獣に向かって駆け出した。
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「《サンダーストライク》!」
レンが、雷の魔法を放った。
雷が、一体のアイスウルフに直撃する。
「ガアアアッ!」
魔獣が、咆哮を上げた。
「やった……のか?」
レンが呟いた。
だが——
氷が、魔獣の傷を覆っていく。
「……再生した!?」
レンが驚いた。
「氷の魔獣は、氷で傷を修復する」
アレンが告げた。
「雷だけじゃ、倒せない」
「なら——どうする!?」
レンが叫んだ。
「炎だ」
アレンは、剣に炎を宿した。
「《フレイムゲイル》!」
炎の刃が、魔獣に向かって飛んだ。
「ガアアアッ!」
魔獣が、炎に包まれた。
氷が溶けていく。
「今だ!」
アレンが叫んだ。
「《サンダーブリッツ》!」
レンが、雷を放った。
雷が、炎に包まれた魔獣に直撃する。
**ドオオオンッ!**
爆発が起きた。
魔獣が——消滅した。
「やった!」
レンが叫んだ。
「まだ、二体いる!」
アレンが告げた。
「《ライトシールド》!」
ヒナタが、光の盾を展開した。
もう一体のアイスウルフが、ヒナタに飛びかかる。
「ガアアッ!」
牙が、盾に食い込んだ。
「くっ……」
ヒナタが、押されていく。
「ヒナタ!」
アレンが駆け出した。
「《ツインフレア》!」
二つの炎球が、魔獣に直撃した。
「ガアアアッ!」
魔獣が、吹き飛ばされた。
「大丈夫か?」
アレンが、ヒナタに駆け寄った。
「……うん」
ヒナタは頷いた。
「ありがとう」
「礼はいい」
アレンは微笑んだ。
「さあ——仕留めるぞ」
「うん!」
ヒナタは、剣を構えた。
「《ウィンドライト》!」
風と光の刃が、魔獣に向かって飛んだ。
魔獣が、動きを止める。
「今だ!」
アレンが、剣を振り下ろした。
「《紅蓮覚醒・金炎刃》!」
金色の炎が、剣を包み込む。
**ザシュッ!**
魔獣が——真っ二つに斬られた。
氷が砕け散る。
魔獣が——消滅した。
「残り、一体!」
レンが叫んだ。
最後の一体が——三人に向かって突進してくる。
「《サンダーフレア》!」
レンが、炎と雷を融合させた魔法を放った。
「《セイントゲイル》!」
ヒナタが、光と風の魔法を放った。
二つの魔法が、魔獣に直撃する。
「ガアアアアッ!」
魔獣が、咆哮を上げた。
「トドメだ!」
アレンが、剣を構えた。
「《四属性統合・テトラハーモニー》!」
光、炎、風、闇——四つの力が、剣に集まる。
剣が——虹色の光を放った。
「《虹刃・レインボーエッジ》!」
アレンが、剣を振り下ろした。
虹色の斬撃が、魔獣を貫いた。
**ドオオオオンッ!**
魔獣が——爆発した。
氷の破片が、宙を舞う。
やがて——
静寂が訪れた。
「……やった」
レンが、膝をついた。
「勝った……」
「ええ」
ヒナタも、疲れた様子で微笑んだ。
「みんな、よく頑張った」
アレンは、剣を鞘に収めた。
その瞬間——
広間の中央に——階段が現れた。
「……あれは」
アレンが呟いた。
「次の階層への、道か」
「行くしかないな」
レンが告げた。
「ああ」
アレンは頷いた。
三人は、階段を降りていった。
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階段を降りると——
そこには、さらに巨大な広間があった。
だが——
そこには、魔獣はいなかった。
代わりに——
広間の中央に、一つの氷の台座があった。
「……あれは」
ヒナタが呟いた。
台座の上には——青く輝く結晶が置かれていた。
「氷のマナ結晶……」
アレンが呟いた。
その瞬間——
グラシアが、現れた。
「よくやったわ」
グラシアは、微笑んだ。
「最初の試練は、クリアね」
「最初の……?」
アレンが尋ねた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「試練は、全部で三つ」
「一つ目は——戦闘の試練」
「そして——二つ目は、心の試練」
「心の……試練?」
ヒナタが首を傾げた。
「ええ」
グラシアは、台座の結晶を手に取った。
「この結晶に触れると——あなたたちの心が試される」
「心の奥底に眠る、恐怖や後悔——それと向き合うのよ」
「……」
アレンは、黙った。
心の試練——
それは、簡単ではない。
「覚悟はいい?」
グラシアが尋ねた。
「……ああ」
アレンは頷いた。
「俺たちは——乗り越える」
「そう」
グラシアは、微笑んだ。
「なら——始めましょう」
グラシアが、結晶を三人の前に掲げた。
結晶が——青い光を放った。
光が、三人を包み込む。
「……!」
アレンの意識が——遠のいていった。
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気がつくと——
アレンは、一人だった。
周囲は——真っ白な世界。
「……ここは」
アレンが呟いた。
「ヒナタ! レン!」
アレンは、叫んだ。
だが——返事はない。
「どこだ……」
アレンは、歩き出した。
白い世界を、さまよう。
やがて——
前方に、人影が見えた。
「……誰だ?」
アレンが尋ねた。
人影が——振り返った。
それは——
「……父さん?」
アレンの父、ゼノス・アルカディアだった。
「アレン……」
ゼノスは、冷たい目でアレンを見つめた。
「お前は——失敗作だ」
「……!」
アレンの胸が、痛んだ。
「体内マナがゼロ——家系の恥だ」
ゼノスは告げた。
「お前は、アルカディアの名を汚した」
「……違う」
アレンは、首を振った。
「俺は——もう、失敗作じゃない」
「俺は——成長した」
「それは——偽りの力だ」
ゼノスは告げた。
「世界マナに頼る力——それは、真の力ではない」
「お前は——結局、弱いままだ」
「……」
アレンは、拳を握りしめた。
(これは——心の試練)
(俺の心の奥底にある、恐怖を見せているんだ)
「でも——」
アレンは、顔を上げた。
「それでも、俺は——前に進む」
「たとえ、弱くても」
「たとえ、失敗作だと言われても」
「俺は——俺の力で、前に進む」
「……」
ゼノスは、黙った。
やがて——
ゼノスの姿が、消えていった。
白い世界が——崩れていく。
光が、アレンを包み込んだ。
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気がつくと——
アレンは、元の広間にいた。
「……」
アレンは、息を吐いた。
「アレン!」
ヒナタが、駆け寄ってきた。
「大丈夫!?」
「……ああ」
アレンは頷いた。
「大丈夫だ」
「よかった……」
ヒナタは、安堵の表情を浮かべた。
「お前も——試練を受けたのか?」
アレンが尋ねた。
「うん……」
ヒナタは、少し暗い表情で頷いた。
「私も——心の奥底と、向き合った」
「そうか……」
アレンは、ヒナタの手を握った。
「よく頑張ったな」
「……うん」
ヒナタは、小さく微笑んだ。
「俺も……」
レンが、立ち上がった。
「厳しい試練だったが——乗り越えた」
「ご苦労様」
グラシアが、現れた。
「あなたたち——よくやったわ」
「二つ目の試練も、クリアね」
「……あと、一つ」
アレンが呟いた。
「ええ」
グラシアは頷いた。
「最後の試練は——私との戦い」
「あなたが——氷のマナを統べるに相応しいか」
「その力を——見せてもらうわ」
「……分かった」
アレンは、剣を抜いた。
「受けて立つ」
「ふふ……」
グラシアは、微笑んだ。
「でも——今日は、ここまで」
「最後の試練は——明日よ」
「今日は——休みなさい」
グラシアが手を掲げると——
遺跡の入口へと続く、氷の道が現れた。
「外に出て——体を休めて」
「そして、明日——万全の状態で挑みなさい」
「……ああ」
アレンは頷いた。
三人は、遺跡を後にした。
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遺跡の外——
夜空には、無数の星が輝いていた。
「綺麗……」
ヒナタが呟いた。
「ああ」
アレンも、星空を見上げた。
「でも——明日が、正念場だ」
レンが告げた。
「グラシアとの戦い——簡単じゃないぞ」
「分かってる」
アレンは頷いた。
「でも——俺は、勝つ」
「どんなに強くても——俺は、負けない」
「……その意気だ」
レンは、アレンの肩を叩いた。
「俺たちも——サポートする」
「ありがとう」
アレンは、微笑んだ。
三人は、簡易テントを張り、休息を取った。
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その夜——
アレンは、一人で外に出た。
星空を見上げる。
『アレン』
声が聞こえた。
「エルフェリア……」
『明日——頑張ってね』
エルフェリアの声が、優しく響いた。
『私たちは——いつも、あなたと共にいるわ』
「……ああ」
アレンは頷いた。
「ありがとう」
『イグニス、シルフ、ノクスも——応援してるわよ』
「みんな……」
アレンは、微笑んだ。
「俺は——一人じゃないんだな」
『ええ』
エルフェリアの声が、消えていった。
アレンは、再び星空を見上げた。
(明日——グラシアとの戦い)
(俺は——必ず、契約を果たす)
アレンは、拳を握りしめた。
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翌朝——
三人は、再び遺跡へと向かった。
グラシアが、入口で待っていた。
「おはよう」
グラシアは微笑んだ。
「準備はいい?」
「ああ」
アレンは頷いた。
「なら——入りなさい」
グラシアが、遺跡の扉を開いた。
三人は、中へと入った。
最深部の広間——
そこで、最後の試練が始まる。
グラシアが、中央に立った。
「さあ——来なさい」
グラシアは、手を掲げた。
氷のマナが、溢れ出す。
「《氷結領域・フロストドメイン》!」
広間全体が、氷に覆われた。
気温が、急激に下がる。
「くっ……」
レンが、体を震わせた。
「寒い……」
「これが——グラシアの力か」
アレンが呟いた。
「ええ」
グラシアは微笑んだ。
「私は——氷のマナの化身」
「この領域では——私が最強よ」
「さあ——あなたの力を、見せてちょうだい」
「……行くぞ!」
アレンが、剣を構えた。
最後の試練——
グラシアとの戦いが、始まった。
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**次回予告**
氷のマナの化身・グラシアとの戦い。
圧倒的な力を前に、アレンたちは苦戦する。
だが——アレンは、諦めない。
四属性を統べる力——その真価が、問われる。
**第2話「氷結の戦い」、近日公開!**




