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マナに選ばれし落ちこぼれ 〜古代魔法を継ぐ者〜 (マナ落ち)  作者: たくわん。
第一章「落ちこぼれの烙印」

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第2話: Fクラスの仲間たち

第2話: Fクラスの仲間たち

 

 入学式は、大講堂で行われた。

 新入生約300名が、クラスごとに整列している。

 最前列には、Aクラスの生徒たち。みんな、自信に満ちた表情で、制服を着こなしている。

 そして、最後列――

 僕たち、Fクラスがいた。

「うわぁ……なんか、ボロい制服……」

 隣のヒナタが、小さく呟いた。

 確かに、Fクラスの制服は他と比べて明らかに質が悪かった。生地は薄く、色も褪せている。

「予算の都合らしいよ」

 後ろから、男子生徒が苦笑しながら言った。

「Fクラスは、学園の中で最も予算が少ないんだってさ」

「そんな……」

 ヒナタが、悲しそうな顔をした。

 その時――

 壇上に、校長シリウス・グランベルが現れた。

「新入生諸君、入学おめでとう」

 会場が、静まり返った。

「諸君は今日から、アルディア王立魔導学園の生徒だ。この学園で、魔法を学び、成長し、未来を切り拓いていく」

 校長の声は、威厳に満ちていた。

「だが、忘れるな。才能は、スタートラインに過ぎない。本当に大切なのは――努力と、意志だ」

 その言葉が、僕の胸に響いた。

「諸君の未来は、諸君自身が創る。その事を、忘れないでほしい」

 校長は、会場を見渡した。

 その視線が、一瞬だけ、僕を捉えた気がした。

     *     *     *

 入学式が終わり、各クラスは教室へ移動した。

 Aクラスは、新館の最上階。

 Bクラスは、新館の3階。

 Cクラス以下は、旧館へ。

 そして、Fクラスは――旧館の最も奥、1階の隅にあった。

「……これが、僕たちの教室か」

その言葉の裏にあったのは、呆れでも怒りでもない。ただ、悔しさだった。

 扉を開けると、埃っぽい匂いがした。

 窓ガラスにはひびが入り、机は古びて、壁には染みが浮いている。黒板も、消し跡が残ったまま。

「うわぁ……」

 ヒナタが、呆然としている。

 教室には、すでに何人かの生徒が座っていた。

 総勢15名。

 Fクラスの全員だ。

 僕とヒナタは、空いている席に座った。最後列の窓際。

「ねぇ、アレンさん」

 ヒナタが、小さく囁いた。

「みんな、なんだか元気がないですね……」

 確かに、クラスメイトたちは、みんな暗い表情をしていた。

 俯いている者。

 ぼんやりと窓の外を見ている者。

 机に突っ伏している者。

 ここは、落ちこぼれの集まり――その現実が、空気から伝わってきた。

 

 その時――

 

 教室の扉が、勢いよく開いた。

 ガラッ!

「全員座れ」

 低く、重い声。

 入ってきたのは、黒に近い濃紺の髪を後ろで束ねた、鋭い目つきの男だった。深い緑の瞳。がっしりとした体格。無精ひげ。

 年齢は、30代半ばくらいか。

「俺はディルク・ハーヴェン。このFクラスの担任だ」

 彼は、教壇に立つと、生徒たちを一人ずつ見渡した。

「お前たちは落ちこぼれだ。それは事実だ」

 いきなりの言葉に、クラス全体が凍りついた。

「魔力が低い者。

 制御が下手な者。

 自信がない者。

 何かしらの理由で、Fクラスに振り分けられた」

 ディルクは、腕を組んだ。

「だが――」

 彼の声が、一段と大きくなった。

「――落ちこぼれで終わるかどうかは、お前たち次第だ」

 クラスが、ざわついた。

「才能がなければ、努力しろ。

 マナがなければ、知恵を使え。

 自信がなければ、仲間を信じろ」

 

 ディルクは、黒板に大きく文字を書いた。

『魔法=意志×制御×マナ』

「この方程式を忘れるな。マナがゼロでも、意志と制御が完璧なら――何かが変わる」

 その言葉に、僕は背筋が伸びた。

(マナがゼロでも……)

 それは、まるで僕に向けられた言葉のようだった。

「いいか、お前たち。俺は、諦めた奴は嫌いだ。だが、諦めずに戦う奴は――全力でサポートする」

 ディルクの目が、真剣だった。

「これから一年、地獄だと思え。だが、その地獄を乗り越えた先に――お前たちの未来がある」

 教室が、静まり返った。

 でも、その静寂は――絶望ではなく、決意の静寂だった。

「じゃあ、自己紹介といこう。前から順に」

     *     *     *

クラスメイトたちの紹介

 最初に立ったのは、前列に座っていた痩せた男子生徒だった。

「えっと……僕は、トム・ウッドです。土属性ですけど、制御がうまくできなくて……」

 彼は、指先で机をこつこつと叩きながらうつむいた。

「……でも、粘り強さだけは誰にも負けないつもりです」

 彼は、申し訳なさそうに頭を下げた。

「よろしく、お願いします」

「次」

 ディルクが促す。

 次に立ったのは、眼鏡をかけた女子生徒。

「リサ・フィールドです。風属性……だけど、魔力が低くて……」

 眼鏡の奥の瞳が揺れ、ノートを抱きしめるように持っていた。

「で、でも勉強は得意です! みんなのサポートなら……!」

 彼女も、小さな声だった。

 そして、次々と自己紹介が続く。

「マルク・ストーン。土属性。魔力測定は3000だったけど……実技で失敗して…………」

「ま、石なら任せてくれ! 投げるのも積むのも得意だからな!」

「エマ・ローズ。水属性。緊張すると魔法が暴発するんです……」

  言い終えた瞬間、机の上のコップがぷるぷる震えた。

「あっ、ごめんなさいっ!」

「カイル・アッシュ。火属性。制御が下手で……」

 腕を組んで、やや反抗的に言い放つ。

「でも次は絶対、成功させてみせます」

 みんな、何かしらのコンプレックスを抱えていた。

 そして――

「次、そこのお前」

 ディルクが、僕を指した。

 僕は、立ち上がった。

「……アレン・アルカディアです」

 瞬間、クラスがざわついた。

「アルカディア?」

「あの名家の?」

「なんでFクラスに……?」

 僕は、深呼吸した。

「体内マナ、ゼロです。魔法は……まだ、使えません」

 沈黙。

「でも――諦めてません。これから、何とかします」

 その言葉に、ディルクが小さく笑った。

「いい目だ。座れ」

 僕は、席に戻った。

「次」

「はい! 私、ヒナタ・ルミエールです!」

 ヒナタが、元気よく立ち上がった。

「水属性で、回復魔法が得意です。でも、攻撃魔法が苦手で……Fクラスになっちゃいました」

 彼女は、照れたように笑った。

「みんな、仲良くしてくださいね!」

 その明るさに、クラスの空気が少しだけ和らいだ。

 そして、最後の生徒。

 後列の隅に座っていた、フードを被った生徒が立ち上がった。

「……レイ。名字はない。属性は……闇」

 低い声。男か女か、判別しづらい。

「……以上」

 それだけ言って、座った。

 ディルクは、特に何も言わなかった。

「よし、全員の自己紹介が終わった。これで、お前たちはFクラスの仲間だ」

 彼は、教卓を叩いた。

「明日から、本格的な授業が始まる。覚悟しておけ」

     *     *     *

昼休み――屋上での会話

 昼休み、僕とヒナタは屋上に向かった。

 食堂は、Aクラスの生徒たちで溢れていて、Fクラスの僕たちが入りづらい雰囲気だったからだ。

「はぁ……屋上、気持ちいいですね」

 ヒナタが、空を見上げた。

 青い空。白い雲。爽やかな風。

「そうだな」

 僕たちは、屋上の端に座って、お弁当を開いた。

「アレンさん、お母さんが作ってくれたんですか?」

「……ああ」

 母・セリアが作ってくれた弁当。卵焼き、から揚げ、おにぎり。

「いいなぁ。私、一人暮らしだから、自分で作らないといけないんです」

「一人暮らし?」

「はい。実家が遠くて……だから、学園の寮に住んでるんです」

 ヒナタは、少し寂しそうに笑った。

「でも、大丈夫です。料理、得意ですから!」

 彼女は、自分の弁当を見せてくれた。

 彩り豊かな、手の込んだ弁当。

「……すごいな」

「えへへ、ありがとうございます」

 二人で、弁当を食べる。

 穏やかな時間。

「ねぇ、アレンさん」

 ヒナタが、真剣な顔で言った。

「私、Fクラスでも頑張ります。アレンさんも、一緒に頑張りましょうね」

「……ああ」

「約束ですよ」

 彼女は、小指を差し出した。

「指切りげんまん」

 僕は、少し戸惑ったが――小指を絡めた。

「……約束する」

「やった!」

 ヒナタは、満面の笑みで笑った。

 その時――

 屋上の扉が開いた。

「あ、先客がいたか」

 入ってきたのは、トムとマルクだった。

「あ、えっと……邪魔じゃなかったかな?」

「いや、全然。どうぞ」

 二人は、少し離れた場所に座った。

「……Fクラス、辛いな」

 トムが、弱々しく呟いた。

「他のクラスの奴ら、僕たちのこと、馬鹿にしてくるんだ……」

「俺も、廊下で笑われた……」

 マルクも、悔しそうに拳を握った。

「でも、仕方ないよな。俺たち、落ちこぼれなんだから……」

「そんなこと、ないですよ!」

 ヒナタが、立ち上がった。

「私たちは、まだ始まったばかりじゃないですか。これから、頑張ればいいんです!」

 彼女の言葉に、二人は目を見開いた。

「ヒナタちゃん……」

「それに、ディルク先生も言ってたじゃないですか。落ちこぼれで終わるかは、私たち次第だって」

 ヒナタは、拳を握りしめた。

「だから、諦めちゃダメです。私、絶対に諦めませんから!」

 その姿が、まぶしかった。

「……そうだな」

 僕も、立ち上がった。

「僕たちは、まだ何も始めていない。ここからが、スタートだ」

 トムとマルクが、顔を上げた。

「……アレン……」

「一緒に、頑張ろう」

 僕は、手を差し出した。

 二人は、少し躊躇してから――その手を取った。

「……ああ!」

「頑張るぞ!」

 屋上に、笑顔が戻った。

     *     *     *

放課後――Aクラスとの遭遇

 放課後、僕は図書館に向かっていた。

 魔法が使えない分、知識で補う――それが、僕のやり方だ。

「あれ、アレン?」

 その瞬間、廊下の空気が変わった。

  熱を帯びた視線が、背中に突き刺さる。

 聞き覚えのある声がしのだ。

 振り向くと――

 燃えるような赤髪の少年が、腕を組んで立っていた。

 琥珀色の瞳。不敵な笑み。Aクラスの制服。

「……レン」

 レン・アルディス。

 僕の、幼馴染。

 そして――かつての親友。

「よぉ、久しぶりだな。入学式以来か?」

 レンは、僕の肩を叩いた。

 その手が、やけに重い。

「お前、Fクラスなんだってな」

「……ああ」

「ははっ、やっぱりな。体内マナゼロじゃ、仕方ないか」

 レンの言葉が、胸に刺さる。

「……何の用だ」

「別に、用はないよ。ただ――」

 レンは、僕の耳元で囁いた。

「――お前、いつまで無駄なことしてんの?」

「……っ」

「諦めろよ、アレン。魔法使えない奴が、魔法学園にいても意味ないだろ」

「それは……」

「お前、アルカディア家の名前、汚してるって自覚ある?」

 レンの目が、冷たかった。

「……分かってる」

「分かってるなら、さっさと退学しろ。見てて、痛々しいんだよ」

 その言葉に、僕は唇を噛んだ。

「……嫌だ」

「は?」

「僕は、諦めない。絶対に」

 僕は、レンを真っ直ぐ見た。

「いつか、お前を超えてみせる」

 瞬間、レンの表情が変わった。

 驚き――そして、何か複雑な感情。

「……ハッ、生意気になったな」

 レンは、背を向けた。

「まぁ、頑張れよ。無駄だと思うけど」

 そして、去って行った。

 僕は、その場に立ち尽くしていた。

(レン……)

 昔は、仲が良かった。

 一緒に魔法の訓練をして、一緒に冒険の夢を語った。

 でも、僕のマナが無いと知ってから――全てが変わった。

「……いつか、必ず」

 僕は、拳を握りしめた。

     *     *     *

夜――エルフェリアとの対話

 その日の夜、僕は自分の部屋で窓の外を見ていた。

 満月が、綺麗に輝いている。

『アレン』

 突然、声が聞こえた。

 エルフェリアの声。

「……エルフェリア」

『辛い一日だったわね』

「……見てたのか」

 彼女の声を聞くだけで、胸の奥の痛みが少し和らぐ気がした。

『いつも、あなたのそばにいるわ』

 彼女の声が、優しく響く。

『でも、あなたは頑張ったわ。諦めなかった』

「……当たり前だ。約束したから」

『ふふ、そうね』

 エルフェリアが、笑った気がした。

『アレン、一つ教えてあげる』

「……何?」

『あなたのクラスメイトたち――みんな、それぞれの理由でFクラスにいる』

「……そうだろうな」

『でもね、それは弱さじゃない。可能性なの』

「可能性……?」

『そう。彼らは、まだ自分の力に気づいていないだけ。あなたが、導いてあげて』

「僕が……?」

『あなたは、選ばれた者。あなたの言葉は、人を動かす力を持つ』

 その言葉が、心に響いた。

「……分かった。やってみる」

『その調子よ。おやすみなさい、アレン』

 声が、消えた。

 僕は、ベッドに横になった。

 明日から、本格的な授業が始まる。

 Fクラスの仲間たちと、一緒に。

(みんなで、成長していこう)

 そう心に誓って、僕は眠りについた。

     *     *     *

翌朝――最初の授業

「おはようございます!」

 ヒナタの元気な声で、教室が明るくなった。

「おはよう、ヒナタ」

「アレンさん、早いですね!」

「ああ、朝練してきた」

「朝練?」

「体を鍛えてる。魔法が使えないから、せめて体力だけでも」

 ヒナタは、感心したように頷いた。

「アレンさん、本当にすごいです……」

 その時、ディルクが教室に入ってきた。

「おはよう。全員揃ってるな」

 彼は、教卓に何かを置いた。

 木製の杖が、15本。

「これから、基礎訓練を始める。まずは、マナ制御の基本だ」

 ディルクは、一本の杖を取った。

「杖の先端を光らせろ。これは、最も基本的なマナ制御だ」

 彼が杖を掲げると、先端が光った。

「簡単だろ? やってみろ」

 生徒たちが、それぞれ杖を手に取った。

 トムの杖――微かに光った。

 リサの杖――ちらちらと光った。

 マルクの杖――一瞬だけ光った。

 みんな、それなりに光らせている。

 ヒナタの杖――綺麗に光った。

「おお、ヒナタは上手いな」

 ディルクが、褒めた。

 そして――

 僕の杖。

 握りしめる。

 集中する。

(世界のマナ……頼む……)

 でも、何も起きなかった。

「……っ」

 周りの生徒たちが、僕を見ている。

 同情の目。

「アレン」

 ディルクが、僕の前に来た。

「焦るな。お前は、特殊だ。普通のやり方じゃ、ダメかもしれない」

「……はい」

「放課後、個別指導してやる。それまで、理論を学んでおけ」

「……ありがとうございます」

 ディルクは、僕の肩を叩いた。

「諦めるな。お前には、何かがある。俺には、分かる」

 その言葉に、胸が熱くなった。

 授業は続く。

 Fクラスの、最初の一日が――

 こうして、始まった。

 その時の僕は、まだ知らなかった。

 > この日から始まる授業が――Fクラスの運命を変えることになるとは。

 

第3話「初めてのダンジョン実習」へ続く

次回予告:

Fクラス初のダンジョン実習。

行き先は、学園管理ダンジョン「翠緑の迷宮」。

だが、その実習で――

アレンとヒナタは、予期せぬ危機に直面する。

「アレンくん……道、分かる?」

「……分からない」

迷子になった二人の前に、強大な魔物が現れる――

そして、アレンの古代魔法が、初めて目覚める!

第3話「初めてのダンジョン実習」、次回更新!

作者コメント:

第2話では、Fクラスの仲間たちを紹介しました。

それぞれが、様々な事情を抱えています。

そして、レンとの再会。

幼馴染だった二人の関係は、今は冷たいものに……

でも、アレンは諦めません。

次回、ついに古代魔法が本格的に発動します!

お楽しみに!

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