第5話「絆の帰還」
セルフェン王国の海岸に戻った五人は、調査拠点で休息を取った。
「お疲れ様」
エアリスが、温かいお茶を淹れてくれた。
「ありがとう」
ヒナタが微笑んで受け取った。
「本当に……大変だったな」
レンが、疲れた様子で呟いた。
「ああ」
アレンも頷いた。
手の中には——青く輝く水のマナ結晶。
「これで、任務は完了だ」
クリストフが告げた。
「学院に報告すれば、帰還できる」
「そうだな」
アレンは、窓の外を見つめた。
夕日が、海を照らしている。
美しい光景だった。
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「アレン」
ヒナタが、隣に座った。
「大丈夫?」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「もう、大丈夫だ」
「さっき……化身たちの声が聞こえたの?」
ヒナタが尋ねた。
「……ああ」
アレンは頷いた。
「エルフェリア、イグニス、シルフ、ノクス——みんなの声が」
「よかった……」
ヒナタは、安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、もう一人じゃないね」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「俺は——一人じゃない」
「見えなくても、聞こえなくても——みんな、そばにいる」
「うん」
ヒナタも微笑んだ。
「私たちも、いつもそばにいるよ」
「……ありがとう」
アレンは、ヒナタを見つめた。
「ヒナタ、お前がいてくれて——本当によかった」
「私も」
ヒナタは、少し頬を染めた。
「アレンがいてくれて——よかった」
二人は、静かに夕日を眺めた。
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「なあ、アレン」
レンが声をかけた。
「何だ?」
「さっきの戦い——お前、すごかったな」
レンは告げた。
「ヴォイドの攻撃を、防ぎきった」
「……いや」
アレンは首を振った。
「あれは、俺一人の力じゃない」
「化身たちの支えがあったからだ」
「そうか……」
レンは頷いた。
「でも——お前は、確実に強くなってる」
「そうか?」
「ああ」
レンは微笑んだ。
「全国大会の時よりも——もっと強くなってる」
「……ありがとう」
アレンは、小さく笑った。
「お前も、強くなったな」
「当然だ」
レンは胸を張った。
「俺は——お前のライバルだからな」
「ライバル……」
アレンは呟いた。
「ああ、そして——仲間だ」
レンは、アレンの肩を叩いた。
「これからも、よろしくな」
「ああ」
アレンは頷いた。
「こちらこそ、よろしく」
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翌朝。
五人は、セルフェン王国の転移魔法陣へと向かった。
「では——気をつけて」
エアリスが手を振った。
「またいつか、会いましょう」
「ああ」
アレンは頷いた。
「エアリス、クリストフ——ありがとう」
「礼には及ばない」
クリストフは、冷たい表情で告げた。
「我々も——勉強になった」
「そう言ってもらえると、嬉しいわ」
エアリスは微笑んだ。
「それじゃあ——また」
三人は、転移魔法陣に乗った。
光が、三人を包み込む。
「さようなら」
エアリスの声が、最後に聞こえた。
光が強くなり——
三人の姿は、消えた。
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学院に戻ると——
他のメンバーたちが、出迎えてくれた。
「おかえり!」
トムが手を振った。
「お前ら、無事だったか?」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「無事だ」
「よかった……」
リサが安堵の息を吐いた。
「私たち、心配してたのよ」
「ごめん」
ヒナタが謝った。
「心配かけて」
「いいって」
エマが笑った。
「無事に帰ってきてくれたんだから」
「で——任務は、成功したのか?」
マルクが尋ねた。
「ああ」
アレンは、水のマナ結晶を取り出した。
「これを、手に入れた」
「おお……」
カイルが感嘆の声を上げた。
「すげえ……」
「よくやったな」
ディルク・グレイソン教師が現れた。
「任務、完了だ」
「はい」
アレンは頷いた。
「この水のマナ結晶は——学院で保管する」
ディルクは告げた。
「だが——お前たちの功績は、きちんと記録しておく」
「ありがとうございます」
三人は、頭を下げた。
「さて——」
ディルクは、真剣な表情になった。
「次の任務だが」
「……次の任務?」
アレンが尋ねた。
「ああ」
ディルクは頷いた。
「今度は——極北の地だ」
「極北……?」
ヒナタが首を傾げた。
「そうだ」
ディルクは告げた。
「最近、極北の地で——異変が起きている」
「異変……」
レンが呟いた。
「氷の魔獣が、異常繁殖している」
ディルクは続けた。
「そして——古代遺跡が発見された」
「古代遺跡……」
アレンは、心の中で呟いた。
(まさか……)
「お前たちには、その調査を頼みたい」
ディルクは告げた。
「だが——今回は、もう少し時間がある」
「どれくらいですか?」
ヒナタが尋ねた。
「二週間後だ」
ディルクは答えた。
「それまでに、準備を整えておけ」
「分かりました」
三人は頷いた。
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教室に戻ると——
アレンは、窓の外を見つめた。
極北の地——
そこには、何が待っているのだろう。
(氷のマナの化身……グラシア)
アクアが言っていた。
いずれ、八属性を集める時が来ると。
(もしかしたら——そこで、グラシアに会えるかもしれない)
「アレン」
ヒナタが声をかけた。
「何か、考えてる?」
「ああ……」
アレンは頷いた。
「極北の地で——氷のマナの化身に会えるかもしれない」
「氷の……」
ヒナタは、驚いた表情で呟いた。
「そっか……もしかしたら」
「ああ」
アレンは微笑んだ。
「今度こそ——契約できるように、準備しておかないと」
「そうだね」
ヒナタも微笑んだ。
「頑張ろう」
「ああ」
アレンは、拳を握りしめた。
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その夜。
アレンは、一人で訓練場にいた。
剣を振る。
四属性の力を、引き出す。
光、炎、風、闇——
四つの力が、剣に宿る。
「《四属性統合・テトラハーモニー》!」
アレンが魔法を発動した。
剣が——四色の光を放った。
「……まだ、完璧じゃない」
アレンは呟いた。
化身たちがいない今——四属性を制御するのは、まだ難しい。
マナが暴れる。
体が、軋む。
「くっ……」
アレンは、膝をついた。
『アレン』
その瞬間——声が聞こえた。
「エルフェリア……」
『焦らないで』
エルフェリアの声が、優しく響いた。
『あなたは、十分に成長しているわ』
「でも……」
『化身がいなくても、四属性を使えるようになった』
『それだけでも——大きな進歩よ』
「……そうか」
アレンは、小さく微笑んだ。
『だから——焦らないで』
『一歩ずつ、前に進めばいい』
「ああ……」
アレンは頷いた。
「ありがとう、エルフェリア」
『どういたしまして』
エルフェリアの声が、消えていった。
アレンは、再び剣を構えた。
(一歩ずつ——前に進む)
(そして——いつか、また会おう)
アレンは、訓練を再開した。
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二週間後——
アレン、ヒナタ、レンの三人は、再び転移魔法陣の前に立っていた。
「準備はいいか?」
ディルクが尋ねた。
「はい」
三人は頷いた。
「では——行け」
ディルクが魔法陣を起動させた。
光が、三人を包み込む。
(極北の地……)
アレンは、心の中で呟いた。
(そこで——グラシアに会えるだろうか)
(そして——また新たな力を手に入れられるだろうか)
光が強くなり——
三人の姿は、消えた。
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極北の地——
そこは、一面の雪と氷に覆われた世界だった。
「寒い……」
ヒナタが震えた。
「当然だ」
レンが告げた。
「ここは、極北の地だからな」
「でも……綺麗」
ヒナタは、雪景色を見つめた。
白い雪。
青い氷。
そして——遠くには、巨大な氷山が見えた。
「あそこに——古代遺跡があるのか?」
アレンが尋ねた。
「ああ」
レンは頷いた。
「あの氷山の中に——遺跡が眠っているらしい」
「行こう」
アレンは告げた。
三人は——氷山へと向かった。
雪を踏みしめながら、進む。
やがて——氷山のふもとに、入口が見えてきた。
「……あれが」
ヒナタが呟いた。
「古代遺跡の入口か」
レンが告げた。
「行くぞ」
アレンは、入口へと向かった。
その瞬間——
**ゴゴゴゴゴゴゴ……**
氷山全体が、揺れ始めた。
「何だ!?」
レンが叫んだ。
「まさか……」
アレンが呟いた。
そして——
入口の前に——巨大な氷の像が現れた。
「……!」
全員が、後退した。
それは——女性の姿をした、氷の像だった。
美しく、そして——神秘的な姿。
「あれは……」
ヒナタが呟いた。
氷の像が——ゆっくりと動き始めた。
そして——
像の中から——光が溢れ出した。
光が、像を包み込む。
やがて——
光が消えると——
そこには、一人の少女が立っていた。
銀色の髪。
氷のように透き通った青い瞳。
白いドレス。
「……誰?」
ヒナタが呟いた。
少女は——微笑んだ。
「ようこそ」
冷たく、それでいて優しい声。
「私は——グラシア」
少女は告げた。
「氷のマナの化身よ」
「……!」
アレンの目が、大きく見開かれた。
(グラシア……!)
ついに——
氷のマナの化身と、出会った。
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## 【第五章:マナの迷宮編 完結】
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**次回予告**
**第六章:氷結の試練編**
極北の地で出会った、氷のマナの化身・グラシア。
彼女は、アレンに何を求めるのか?
そして——黒月の牙の新たなる首領・ヴォイドの影が、再び迫る。
アレンの新たな戦いが、始まる。
**第六章、近日公開!**




