表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/48

第3話「水底の守護者」



-----


「水のマナの化身……」


アレンは、アクアを見つめた。


青い髪が、水面に映る光を受けて揺れている。


エメラルドの瞳は、深い海のように——優しく、そして神秘的だった。


「あなたが……アレン・アルカディア?」


アクアは、微笑みながら尋ねた。


「……ああ」


アレンは頷いた。


「どうして、俺の名を?」


「知っているわ」


アクアは告げた。


「エルフェリア、イグニス、シルフ、ノクス——四体の化身と契約した少年」


「……!」


アレンの表情が、強張った。


「でも……今は、彼らの姿が見えないわね」


アクアは、少し寂しそうに告げた。


「どうしたの?」


「……彼らは」


アレンは、拳を握りしめた。


「俺を救うために——消えた」


「……そう」


アクアは、優しく微笑んだ。


「あなたを守ったのね」


「ああ……」


アレンは、うつむいた。


「私には、彼らの気持ちが分かるわ」


アクアは告げた。


「マナの化身は——契約者を、何よりも大切に思うもの」


「……」


アレンは、何も言えなかった。


「でも、安心して」


アクアは続けた。


「彼らは、消えたわけではないわ」


「……え?」


アレンが顔を上げた。


「マナの化身は、世界マナそのもの」


アクアは告げた。


「だから——世界マナが存在する限り、私たちは消えない」


「じゃあ……」


「ええ」


アクアは頷いた。


「彼らは、今は世界マナに還っているだけ」


「世界マナに……」


アレンは、心の中で反芻した。


「いずれ、また会えるわ」


アクアは優しく告げた。


「だから——待っていなさい」


「……ありがとう」


アレンは、小さく微笑んだ。


-----


「あの……」


ヒナタが、恐る恐る尋ねた。


「アクアさん……ですよね?」


「ええ」


アクアは、ヒナタを見つめた。


「あなたは……ヒナタ・カミシロね」


「はい」


ヒナタは頷いた。


「シルフィアと契約している少女」


アクアは微笑んだ。


「シルフィア……私の妹のような存在よ」


「妹……?」


ヒナタが首を傾げた。


「ええ」


アクアは告げた。


「マナの化身には、属性ごとに繋がりがあるの」


「繋がり……」


「水と風は、特に近い関係」


アクアは続けた。


「だから、シルフィアは私の妹のようなもの」


「そうなんですか……」


ヒナタは、驚いた表情で呟いた。


「シルフィアは、元気にしてる?」


アクアが尋ねた。


「はい!」


ヒナタは笑顔で頷いた。


「いつも、私を助けてくれています」


「そう……よかった」


アクアは、安心したように微笑んだ。


そして——


「シルフィア、出てきなさい」


アクアが、優しく呼びかけた。


すると——


ヒナタの背後に、光の粒子が集まった。


「……!」


光の粒子が——少女の姿を形作った。


透明な羽を持つ、風の精霊。


「アクア様……!」


シルフィアが、嬉しそうに叫んだ。


「久しぶりね、シルフィア」


アクアは、シルフィアを優しく抱きしめた。


「お久しぶりです!」


シルフィアは、涙を浮かべた。


「こんなところで会えるなんて……」


「ええ、私も驚いたわ」


アクアは微笑んだ。


「でも——嬉しい」


「私も、です!」


シルフィアは、アクアの手を握った。


ヒナタは、その光景を見て——微笑んだ。


「シルフィア……よかったね」


「ヒナタ……ありがとう」


シルフィアは、ヒナタを振り返った。


「あなたのおかげで、アクア様に会えたわ」


「私は、何もしてないよ」


ヒナタは笑った。


「いいえ、あなたがいなければ——私は、ここに来られなかった」


シルフィアは告げた。


「ありがとう、ヒナタ」


-----


「さて」


アクアは、真剣な表情に戻った。


「あなたたちが、ここに来た理由は分かっているわ」


「……」


アレンたちは、アクアを見つめた。


「この迷宮の調査——そして、マナ結晶の回収」


アクアは告げた。


「でも……それだけではないでしょう?」


「……どういう意味だ?」


レンが尋ねた。


「最近、この迷宮に——異変が起きているの」


アクアは続けた。


「何者かが、この迷宮を狙っている」


「何者か……?」


アレンが尋ねた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「闇の気配を感じるわ」


「闇……」


アレンは、心の中で呟いた。


(まさか……黒月の牙?)


「彼らは、マナ結晶を狙っているわ」


アクアは告げた。


「そして——私も」


「……!」


全員が、息を呑んだ。


「あなたを……狙っている?」


ヒナタが尋ねた。


「ええ」


アクアは頷いた。


「マナの化身を捕らえれば——莫大な力を得られるから」


「そんな……」


ヒナタは、悲しそうに呟いた。


「だから——あなたたちに、お願いがあるの」


アクアは、真剣な表情で告げた。


「私を……守って」


-----


その瞬間——


**ゴゴゴゴゴゴゴ……**


迷宮全体が、激しく揺れ始めた。


「何だ!?」


レンが叫んだ。


「来たわ……」


アクアは、悲しそうに呟いた。


「彼らが」


**ドガアアアアアン!**


天井が——崩れ落ちた。


「危ない!」


アレンが叫んだ。


「《水流障壁・アクアウォール》!」


エアリスが魔法を発動した。


水の壁が、崩れた天井を防ぐ。


「ありがとう、エアリス」


アクアが告げた。


そして——


崩れた天井の向こうから——影が現れた。


黒いローブをまとった、複数の人影。


「……黒月の牙!」


アレンが叫んだ。


「よく来たな、アレン・アルカディア」


黒いローブの男が、冷たく告げた。


「我々は——水のマナの化身を頂きに来た」


「させるか!」


アレンは、剣を構えた。


「ふふ……抵抗するか」


男は、仮面の下で笑った。


「だが——無駄だ」


男が手を上げると——


**ドシャアアアアアア!**


迷宮の壁が——次々と崩れ始めた。


そして——


巨大な魔獣たちが、現れた。


「……!」


全員が、後退した。


水の魔獣、氷の魔獣、そして——闇の魔獣。


少なくとも、十体以上。


「これは……」


クリストフが、冷や汗を流した。


「まずいぞ……」


レンも、緊張した表情で呟いた。


「みんな……」


アレンは、仲間たちを見渡した。


「ここで——全力で戦うぞ」


「ああ!」


全員が、頷いた。


「アクア、あなたは下がっていて」


アレンが告げた。


「でも……」


「大丈夫だ」


アレンは微笑んだ。


「俺たちが——守る」


「……分かったわ」


アクアは、後方へと下がった。


「ヒナタ、レン、エアリス、クリストフ」


アレンは、仲間たちを見つめた。


「行くぞ」


「ええ!」


五人は——魔獣たちへと向かった。


-----


戦闘が、始まった。


「《雷迅・サンダーブリッツ》!」


レンの雷が、闇の魔獣を貫いた。


「《氷結領域・フリーズドメイン》!」


クリストフの氷が、水の魔獣を凍らせた。


「《水流連撃・アクアブラスト》!」


エアリスの水が、氷の魔獣を砕いた。


「《神風光翼・セイントゲイル》!」


ヒナタの風と光が、闇の魔獣を消し飛ばした。


「《四属性統合・テトラハーモニー》!」


アレンの剣が、複数の魔獣を一気に薙ぎ払った。


五人の連携は——完璧だった。


だが——


「まだまだ、いるぞ!」


レンが叫んだ。


魔獣は——次々と現れ続けた。


「くっ……」


アレンは、歯を食いしばった。


(化身たちがいれば……もっと楽に戦えるのに)


四属性を制御するだけで、マナが激しく消耗していく。


「アレン、無理しないで!」


ヒナタが叫んだ。


「大丈夫だ!」


アレンは、再び剣を振るった。


だが——


その瞬間、巨大な闇の魔獣が——アレンへと襲いかかった。


「……!」


避ける暇がない。


「アレン!」


ヒナタが叫んだ。


だが——


**ドガアアアアアン!**


水の壁が、魔獣を防いだ。


「……!」


アレンが振り返ると——


アクアが、手を伸ばしていた。


「アクア……!」


「私も、戦うわ」


アクアは、真剣な表情で告げた。


「私の力を——貸してあげる」


「でも……」


「大丈夫」


アクアは微笑んだ。


「私は、マナの化身」


アクアの体が——青く光り始めた。


「この迷宮は、私の領域」


アクアは、両手を広げた。


「《水底支配・アビスドミニオン》!」


その瞬間——


迷宮全体の水が——激しく渦を巻き始めた。


「……!」


魔獣たちが、水の渦に飲み込まれていく。


「すごい……」


ヒナタが呟いた。


「これが……マナの化身の力……」


レンも、驚愕の表情で見つめた。


水の渦は——すべての魔獣を飲み込み、押し流した。


やがて——渦が収まった。


魔獣たちは——消えていた。


「やった……」


エアリスが、安堵の息を吐いた。


だが——


「まだだ!」


クリストフが叫んだ。


黒いローブの男が——まだそこにいた。


「なるほど……」


男は、仮面の下で笑った。


「マナの化身の力か」


「貴様……」


アレンが剣を構えた。


「だが——我々は、諦めない」


男は告げた。


「必ず、マナの化身を——手に入れる」


男が手を上げると——


**バシュウウウウウ!**


闇の煙が、男を包んだ。


そして——男の姿は、消えた。


「逃げた……」


レンが呟いた。


「ええ……」


アクアは、真剣な表情で告げた。


「彼らは——まだ諦めていないわ」


「……」


アレンは、拳を握りしめた。


(黒月の牙……まだ、終わっていないのか)


-----


戦いが終わり、五人は息を整えた。


「みんな、怪我はない?」


ヒナタが尋ねた。


「ああ、大丈夫だ」


アレンは頷いた。


「アクア、ありがとう」


「どういたしまして」


アクアは微笑んだ。


「あなたたちのおかげで、私も助かったわ」


「でも……これから、どうするんだ?」


レンが尋ねた。


「黒月の牙は、また来るだろう」


「ええ……」


アクアは頷いた。


「だから——私は、この迷宮を離れるわ」


「……!」


全員が、驚いた。


「ここにいては、彼らに狙われ続ける」


アクアは告げた。


「だから——安全な場所へ移動するわ」


「安全な場所……」


アレンが呟いた。


「ええ」


アクアは、アレンを見つめた。


「そして——いずれ、あなたと契約するわ」


「……え?」


アレンが驚いた。


「あなたは——光と闇の調停者」


アクアは告げた。


「いずれ、八属性を統べる者」


「八属性……」


アレンは、心の中で反芻した。


「だから——私も、あなたの力になりたいの」


アクアは微笑んだ。


「でも……今は、まだ早い」


「……どうして?」


「あなたは、まだ四属性を完全に制御できていないわ」


アクアは告げた。


「化身たちがいない今——まず、四属性を自分の力にしなさい」


「……」


アレンは、何も言えなかった。


「それができたら——また会いましょう」


アクアは、優しく告げた。


「その時、私と契約して」


「……分かった」


アレンは頷いた。


「必ず——強くなる」


「ええ、信じているわ」


アクアは微笑んだ。


そして——アクアの体が、光の粒子となって消えていった。


「さようなら、アレン」


優しい声が、響いた。


「また、会いましょう」


光が消え——アクアの姿は、なくなった。


「……行っちゃった」


ヒナタが呟いた。


「ああ……」


アレンは、空を見上げた。


(アクア……必ず、また会おう)


-----


**次回:第4話「迷宮の核心」**


迷宮の最深部へ。


そこで待ち受けるものとは——?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ