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マナに選ばれし落ちこぼれ 〜古代魔法を継ぐ者〜 (マナ落ち)  作者: たくわん。
第一章「落ちこぼれの烙印」

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第1話:入学試験


 第1話:入学試験

 

 アルディア王立魔導学園。

 七大国の中でも、最高峰の魔法教育機関。ここを卒業すれば、各国のギルド、王国軍、研究機関への道が開かれる。

 エリート魔導師への登竜門――それが、この学園だった。

 そして今日は、その入学試験の日。

 僕、アレン・アルカディアは、学園の正門前で立ち尽くしていた。

 

「……ここからが、本当の始まりだ」

 深呼吸。

 胸の奥に、まだあの温かさが残っている。エルフェリアと出会った、あの夜から一週間。あれが夢だったのか、現実だったのか――まだ確信が持てない。

 でも、変わったことが一つある。

 諦める気持ちが、消えた。

「よし……」

 僕は、門をくぐった。

     *     *     *

 試験会場は、学園の大講堂「アルケイン・ホール」だった。

 天井は高く、ステンドグラスから差し込む光が、幻想的な雰囲気を作り出している。壁には魔法陣が刻まれ、常にマナが循環している。

「すごい……」

 周りを見渡すと、受験生で溢れていた。

 みんな、自信に満ちた顔をしている。

「私、絶対Aクラスに入るんだから」

「俺の魔力測定値、8000超えたぜ」

「楽勝だろ、この試験」

 そんな会話が、あちこちで聞こえる。

 僕は、小さくなって壁際に移動した。

 体内マナ、ゼロ。

 この中で、おそらく最低だろう。

 

「あの……」

 突然、声をかけられた。

 振り向くと、小柄な少女が立っていた。

 金髪のボブカット。透き通るような水色の瞳。白と青を基調にした清楚な服装。

「あの、ここ空いてますか?」

「あ、ああ……どうぞ」

「ありがとうございます!」

 彼女は、僕の隣に座った。

 ふんわりとした、花のような香り。

「私、ヒナタ・ルミエールって言います。よろしくお願いしますね」

「……アレン。アレン・アルカディア」

「アルカディア……?」

 ヒナタの目が、少し大きくなった。

「もしかして、あの有名な……」

「……そうだ。でも、僕は落ちこぼれだから」

 自嘲的に笑う。

 でも、ヒナタは首を横に振った。

「そんなこと、まだ分からないですよ。試験、これからじゃないですか」

 彼女の笑顔が、まぶしかった。

 こんな風に、普通に接してくれる人は久しぶりだった。

「ありがとう……」

「えへへ、どういたしまして」

 その時――

 ゴォォォン――

 鐘の音が、講堂に響いた。

「それでは、これより、アルディア王立魔導学園の入学試験を開始します」

 壇上に、一人の老人が現れた。

 白髪長髪。深い青の瞳。威厳と優しさが混在した表情。

「私は、この学園の校長、シリウス・グランベル。諸君を歓迎する」

 シリウス・グランベル――“魔導王”の異名を持つ伝説の魔法使い。

 その存在感に、会場全体が静まり返った。

 

「この試験は、三つの科目で構成される。

 第一、魔力測定。

 第二、魔法実技。

 第三、学科試験」

 校長が、杖を掲げた。

「諸君の努力、才能、そして――意志を、見せてもらおう」

     *     *     *

第一科目:魔力測定

 受験生は、一人ずつ測定器の前に立たされた。

 測定器は、水晶でできた球体。手を当てると、体内マナの量が数値化される。

「次、受験番号507番」

「はい!」

 一人の少年が前に出た。

 手を当てる。

 瞬間、水晶が眩く光った。

『ピピピピッ――測定値、7800』

「おおっ!」

 歓声が上がる。

「7800って、すごいじゃん!」

「Aクラス確実だな」

 少年は、得意げに笑っていた。

「次、508番」

 次々と、測定が進む。

『5600』

『4200』

『6800』

『3900』

 みんな、それなりの数値を出している。

 そして――

「次、受験番号520番、アレン・アルカディア」

 僕の番が来た。

 会場が、ざわついた。

「アルカディア?」

「あの名家の?」

「どれくらい出るんだ?」

 期待の視線。

 僕は、測定器の前に立った。

 深呼吸。

(頼む……せめて、何か反応してくれ……)

「頼む……!」

 手を、水晶球に当てた。

 ――――沈黙。

 水晶は、何も光らなかった。

『ピッ――測定不能。体内マナ、検出できず』

 機械的な音声が、会場に響いた。

 静寂。

 そして――

「え……ゼロ?」

「マジで? アルカディアなのに?」

「測定器、壊れてるんじゃないの?」

 ざわめきが、笑いに変わる。

「アルカディアの落ちこぼれか」

「何しに来たんだよ、魔法学園に」

「可哀想に……」

 僕は、測定器から手を離した。

 やっぱり、何も変わっていない。

 あの夜の出来事は、やっぱり夢だったのか――

「講堂の空気が、凍りついたように静まり返った。」

『アレン』

 突然、頭の中に声が響いた。

 エルフェリアの声。

『諦めないで。あなたのマナは、測定器には映らない。世界のマナは、器の中にはないから』

「……エルフェリア?」

『信じて。あなたは、選ばれたのよ』

 その言葉に、胸の奥が熱くなった。

 僕は、顔を上げた。

「次、行きます」

 試験官が、僕を急かした。

「……はい」

 僕は、席に戻った。

 周囲の視線が、痛い。

 でも――

 隣に座るヒナタが、小さく囁いた。

「大丈夫ですよ、アレンさん。まだ、試験は終わってません」

 彼女は、笑顔だった。

 その笑顔に、少しだけ救われた。

     *     *     *

第二科目:魔法実技

 会場は、学園の訓練場に移動した。

 広大な敷地に、的が並べられている。

「この科目では、諸君の魔法制御能力を測定する」

 試験官――厳つい顔の男性教師が説明を始めた。

「あの的を、魔法で破壊せよ。威力、精度、制御力を総合的に評価する」

 的は、30メートル先にある。

 魔法で破壊――つまり、攻撃魔法の試験だ。

「では、最初から順に」

 一人目が前に出た。

火炎弾ファイアボール!」

 炎の球が飛び、的に命中。的が燃え上がる。

『合格』

「よっしゃ!」

 次々と、受験生が魔法を放つ。

水流弾ウォーターショット!」

風刃ウィンドブレード!」

岩石弾ロックバレット!」

 的が次々と破壊されていく。

 そして――

「次、ヒナタ・ルミエール」

「はい!」

 ヒナタが前に出た。

 彼女は、小さな杖を取り出し、詠唱を始めた。

「水よ、私に力を……水流弾ウォーターショット!」

 美しい水の球が、的に向かって飛ぶ。

 命中――的が綺麗に破壊された。

『合格。制御力、高評価』

「やった!」

 ヒナタは、嬉しそうに笑った。

 僕も、思わず笑顔になった。

 そして――

「次、アレン・アルカディア」

 僕の番が来た。

 会場が、また騒がしくなった。

「マナゼロの奴、どうやって魔法使うんだ?」

「見世物だな、これ」

 僕は、的の前に立った。

 手には、何も持っていない。

 魔導具も、スクロールも、何もない。

「……受験生、魔法を」

 試験官が、困惑した表情で促した。

 僕は、目を閉じた。

(エルフェリア……君の言葉を、信じる)

 周囲のマナを、感じようとした。

 空気に満ちる、見えないエネルギー。

 大地から昇る、生命の力。

(世界のマナ……僕に、力を貸してくれ)

 意識を集中する。

 その時――

 微かに、何かが見えた気がした。

 淡い光の粒子。

 空気中に漂う、無数の光。

(これが……マナ……?)

 僕は、右手を前に突き出した。

「……来い」

 呟いた瞬間。

 ほんの一瞬だけ、手のひらが光った。

 でも、それだけだった。

 魔法は、発動しなかった。

 

「…………」

 沈黙。

 

「やっぱりな」

「何やってんだよ」

「時間の無駄だろ」

 嘲笑が、あちこちから聞こえる。

「……不合格」

 試験官が、冷たく告げた。

 僕は、項垂れた。

(やっぱり……まだ、使えないのか……)

 でも、確かに感じた。

 世界のマナの存在を。

 それだけでも――十分だった。

     *     *     *

第三科目:学科試験

 最後の科目は、筆記試験だった。

 魔法理論、魔物学、ダンジョン学、世界史――幅広い知識が問われる。

 僕は、この科目だけは自信があった。

「――これなら、誰にも負けない」

 

 魔法が使えない分、知識で補おうと、何年も勉強してきた。

 ペンを走らせる。

 問題用紙に、次々と答えを書き込んでいく。

 

『問1:マナの三形態について述べよ』

――体内マナ、世界マナ、結晶マナ。体内マナは生物が体内に蓄積する生命力。世界マナは大気・大地・水に満ちる原初の力。結晶マナはマナが物質化したもので、魔晶石やスクロールがこれに該当する。

 

『問15:古代魔法教祖について知るところを述べよ』

――約5000年前に存在したとされる伝説の魔導師。体内マナを使わず、世界のマナを直接借りる「古代魔法」を操ったとされる。七人の弟子に魔法を伝授し、彼らが七大国の始祖となった。約2000年前、ノーザ・フロンティアで姿を消したとされるが、真偽は不明。

 

 僕は、淡々と答えを書き続けた。

 この知識が、いつか役に立つと信じて。

     *     *     *

 試験が全て終わった時には、日が傾いていた。

 結果発表は、三日後。

 僕は、学園の門を出た。

「アレンさん!」

 後ろから、声がした。

 振り向くと、ヒナタが走ってきた。

「お疲れ様でした!」

「……ああ、お疲れ様」

「あの、アレンさん」

 ヒナタは、少し躊躇ってから言った。

「私、アレンさんのこと、応援してます」

「……え?」

「魔法が使えなくても、アレンさんはすごく頑張ってるって、分かります」

 彼女の瞳が、真っ直ぐに僕を見ていた。

「だから、諦めないでください。私も、一緒に頑張りますから」

 その言葉に、胸が熱くなった。

「……ありがとう、ヒナタ」

「ううん、どういたしまして!」

 彼女は、満面の笑みで手を振った。

「じゃあ、また結果発表の日に!」

「ああ、また」

 ヒナタは、夕日の中を走っていった。

 僕は、その後ろ姿を見送った。

(諦めるな、か……)

 空を見上げる。

 茜色に染まる空。

『アレン、よく頑張ったわね』

 エルフェリアの声が、優しく響いた。

「……まだ、何もできてないけど」

『大丈夫。あなたは、確実に目覚め始めている。あの光――世界のマナが、あなたに応えた証拠よ』

「本当に……?」

『信じて。あなたの旅は、まだ始まったばかり』

 その言葉を胸に、僕は家路についた。

 三日後――

 僕の運命が、決まる。

     *     *     *

三日後――結果発表

 学園の掲示板には、大勢の受験生が集まっていた。

 合格者一覧が、貼り出されている。

「やった! Aクラスだ!」

「私、Bクラス!」

「俺もCクラス、合格!」

 喜びの声が、あちこちで上がる。

 僕は、掲示板に近づいた。

 Aクラス――名前がない。

 Bクラス――名前がない。

 Cクラス――名前がない。

 Dクラス――名前がない。

 Eクラス――名前がない。

(やっぱり……不合格か……)

 その時――

 一番下に、小さく書かれた文字を見つけた。

『Fクラス』

 そこに、僕の名前があった。

『アレン・アルカディア』

「……合格……?」

 信じられなかった。

 魔法実技は不合格。魔力測定もゼロ。

 それでも――合格した。

「アレンさん!」

 ヒナタの声。

 彼女も、掲示板を見ている。

「私たち、同じクラスですね! Fクラス!」

 ヒナタも、Fクラスだった。

「一緒に頑張りましょうね!」

 彼女の笑顔が、まぶしかった。

(その笑顔を、僕は一生忘れないと思った。)

「……ああ」

 僕も、笑った。


『Fクラス――全学年で最下位の評価を受けた者が集まる特別クラス。』

 

 落ちこぼれの烙印。

 でも――

 ここから、僕の本当の物語が始まる。

 世界のマナに選ばれた少年の、逆転劇が――

第2話「Fクラスの仲間たち」へ続く

次回予告:

Fクラスの初日。そこは、落ちこぼれの集まりだった。

だが、担任教師ディルク・ハーヴェンは言った。

「落ちこぼれで終わるかどうかは、お前たち次第だ」

そして、アレンは知る。

このクラスには、様々な事情を抱えた生徒たちがいることを――

第2話「Fクラスの仲間たち」、次回更新!

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