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第7話:嵐の前夜

第7話:嵐の前夜


全国大会開幕の日。

アレンたちFクラス一行は、王都行きの馬車に乗っていた。

「うわぁ……すげぇ、王都だ!」

トムが窓から身を乗り出す。

目の前に広がるのは、壮麗な石造りの建物が立ち並ぶ、アルディア王国の首都。

「本当に大きい街ね……」

リサが感嘆の声を上げる。

「学園とは全然違う」

エマが目を輝かせていた。

馬車は王都の大通りを進んでいく。

道の両側には、七大国の旗が掲げられていた。

アルディア王国の青と金、セルフェン王国の水色、グランディア帝国の赤と黒、エアリア公国の緑、ルミナス聖国の白と金、ノクティア暗国の紫と黒、エルドア自由連邦の虹色。

「全国大会だもんな……七大国全部から代表が来るんだ」

マルクが呟く。

「緊張してきた……」

カイルが顔を強張らせる。

「大丈夫だよ、みんな」

ヒナタが笑顔を見せる。

「私たち、ここまで来たんだから」

「ああ、そうだな」

アレンも頷いた。

だが、胸の奥には不安もあった。

(全国レベル……俺たちは、どこまで戦えるんだろう)

馬車が到着したのは、王都の中心部にある巨大な闘技場だった。

「うわぁぁぁ……!」

Fクラス全員が、その巨大さに圧倒された。

石造りの円形闘技場は、高さ50メートル以上。

収容人数は、数万人にも及ぶという。

「ここが……全国大会の舞台」

アレンが見上げる。

『すごい場所ね』

エルフェリアの声が響く。

『ここで、君たちは戦うのね』

「ああ……」

「さあ、降りるぞ」

同行していたディルク教師が馬車から降りた。

「選手控室に案内する。ついて来い」

Fクラスは、教師に導かれて闘技場の中へ入っていった。

控室エリアは、広大だった。

各国の代表チームが、それぞれの控室に分かれている。

廊下を歩いていると、様々な国の選手たちとすれ違う。

「あれ……セルフェン王国の連中か」

トムが小声で言った。

水色の制服を着た一団が、優雅に歩いている。

その中心にいるのは、銀髪の美しい少女だった。

「あれが……エアリス」

ヒナタが呟く。

エアリス——セルフェン王国代表のAクラス隊長。

水魔法の天才と呼ばれる少女。

彼女の周囲には、水のマナが渦巻いているのが見える。

「すごい……マナの量が違う」

マルクが息を呑む。

エアリスは、Fクラスの一行に気づいた。

「あら……」

彼女が優雅に微笑む。

「アルディア王国の方々ね。頑張ってくださいね」

その言葉は丁寧だが、どこか見下すような響きがあった。

「……ああ、お互いにな」

アレンが答える。

エアリスは微笑んだまま、去っていった。

「くっ……何だよ、あの態度」

トムが悔しそうに呟く。

「仕方ないさ。向こうは強豪国の代表だ」

マルクが冷静に言う。

「俺たちは、実力で見返すしかない」

「……そうだな」

さらに廊下を進むと、今度は赤と黒の制服を着た一団とすれ違った。

グランディア帝国の代表だ。

その先頭にいるのは、鋭い目つきの青年。

腰には剣を携え、全身から戦士の気配を放っている。

「グランディア帝国のゼノ……」

リサが小声で言った。

ゼノ——剣と魔法を融合させた戦闘スタイルで知られる、グランディア帝国Aクラスの隊長。

彼は、Fクラスの一行を一瞥した。

「……アルディア王国か」

低い声。

「面白い。お前たちの実力、見せてもらおう」

ゼノが不敵に笑い、去っていった。

「うわ……めっちゃ強そう」

カイルが冷や汗を流す。

「当たり前だ。グランディア帝国は、軍事大国だからな」

マルクが呟く。

「あんなのと戦うのか……」

エマが不安そうに呟いた。

ようやく、アルディア王国の控室に到着した。

「ここがお前たちの控室だ」

ディルクが扉を開ける。

中は広々としており、ベンチや休憩スペースが整っていた。

「おお、いい部屋じゃん」

トムが嬉しそうに言う。

「ここで準備を整えろ。開会式は二時間後だ」

「はい」

全員が控室に入った。

アレンは、ベンチに座って深呼吸をした。

(全国大会……ついに、ここまで来た)

胸の高鳴りと、緊張が入り混じる。

その時、控室のドアがノックされた。

「はい?」

ディルクが扉を開けると、学園の職員が立っていた。

「アレン・アルカディア様宛の手紙です」

「俺に?」

アレンが受け取る。

封筒には、アルカディア家の紋章が刻まれていた。

「父さんから……」

アレンが封を開ける。

中には、父・ゼノスからの手紙が入っていた。

『アレン

全国大会出場、おめでとう。

父として、誇りに思う。

だが、一つ忠告がある。

お前の力——古代魔法は、大きな注目を集めている。

それは、祝福であり、同時に呪いでもある。

ノクティア暗国が、お前を狙っている。

彼らは、古代魔法の秘密を知ろうとしている。

気をつけろ。

そして、決して一人で戦おうとするな。

仲間を信じろ。

家族も、お前を信じている。

全力で戦え。

だが、無理はするな。

父より』

アレンは、手紙を読み終えて、深く息を吐いた。

「父さん……」

(ノクティア暗国が、俺を狙ってる……)

それは、アレンも既に知っていた。

セレスと黒月の牙の密会を目撃した時から、分かっていた。

だが、父が直接警告してくるということは——

(やっぱり、ノクティア暗国は本気なんだ)

「アレン?」

ヒナタが心配そうに覗き込んできた。

「大丈夫?」

「ああ……父さんからの手紙だ」

「お父さんから……」

「心配してくれてる」

アレンが微笑む。

「大丈夫。俺には、みんながいるから」

「うん!」

ヒナタが笑顔を見せた。

アレンは手紙を丁寧に畳み、ポケットにしまった。

(父さん、ありがとう。俺、頑張るよ)

二時間後。

開会式が始まった。

闘技場のアリーナに、全ての出場チームが集められた。

観客席は、既に満員だった。

数万人の観客が、熱気に包まれている。

「うわぁ……すげぇ人だ」

トムが圧倒されている。

「緊張する……」

エマが震えていた。

アリーナの中央には、巨大な演壇が設置されていた。

そこに、アルディア王国の国王が現れた。

「静粛に!」

司会者の声が響く。

観客席が静まり返る。

「本日ここに、第50回全国魔法大会の開幕を宣言する!」

国王の声が、闘技場全体に響き渡った。

「七大国より、選りすぐりの魔法使いたちが集った!」

拍手と歓声が響く。

「諸君の健闘を祈る!さあ、始めよう!」

国王が高らかに宣言すると、闘技場全体が歓声に包まれた。

開会式が終わり、トーナメント表が発表された。

巨大なスクリーンに、対戦カードが映し出される。

「えーと……俺たちの初戦は……」

トムがスクリーンを見上げる。

「Fクラス vs エルドア自由連邦・Dクラス……か」

マルクが確認する。

「エルドア自由連邦……」

「複合属性が得意な国だな」

リサが呟く。

「まあ、初戦は何とかなるだろ」

カイルが楽観的に言った。

だが、アレンは別のカードに目が留まっていた。

「Aクラス……レンたちの初戦は……」

レンたちAクラスの対戦相手は——

ノクティア暗国・Bクラスだった。

「ノクティア……」

アレンの表情が険しくなる。

「どうした、アレン?」

「いや……何でもない」

だが、胸の奥に不安が渦巻いていた。

(ノクティア暗国……セレスがいる国)

(レンたち、大丈夫だろうか)

その夜。

選手たちは、王都の宿舎に宿泊していた。

Fクラスは、一つの大部屋を割り当てられていた。

「はぁ……疲れたー」

トムがベッドに倒れ込む。

「明日から、試合だもんね」

エマが緊張した面持ち。

「大丈夫、俺たちなら勝てる」

マルクが自信を見せる。

アレンは、窓の外を見ていた。

王都の夜景が、美しく輝いている。

『アレン』

エルフェリアの声。

「エルフェリア……」

『明日から、戦いが始まるわね』

「ああ……」

『不安?』

「……少しだけ」

『大丈夫よ。君には、仲間がいる』

エルフェリアが優しく言う。

『そして、私たちも』

「ありがとう」

アレンが微笑む。

その時、窓の外に人影が見えた。

「!」

アレンが目を凝らす。

宿舎の向かいの建物の屋上に——

セレスが立っていた。

紅い瞳が、こちらを見つめている。

「セレス……!」

アレンが息を呑む。

セレスは、不敵に笑うと——

闇に溶けるように消えた。

「くっ……」

『アレン、気をつけて』

エルフェリアが警告する。

『彼は、必ず動く』

「分かってる」

アレンが拳を握る。

(全国大会……ただの大会じゃない)

(戦場になる)

同じ頃。

闘技場の地下。

黒装束の人影たちが、密かに侵入していた。

「侵入完了」

シャドウが通信魔道具で報告する。

『良い。そのまま待機しろ』

セレスの声が響く。

『明日、初戦が終わった後に動く』

「了解」

シャドウが通信を切る。

「全ては、計画通りだ」

シャドウが不敵に笑った。

闘技場の地下に、不吉な気配が漂っていた。

翌朝。

全国大会、一日目。

闘技場は、早朝から観客で埋め尽くされていた。

Fクラスは、控室で準備を整えていた。

「よし……いくぞ、みんな」

アレンが全員を見渡す。

「おう!」

トムが拳を掲げる。

「私たちなら、できる」

ヒナタが微笑む。

「Fクラス、ファイト!」

エマが元気よく言った。

全員が拳を合わせる。

「いくぞ!」

「おー!!」

アリーナに、Fクラスが入場した。

観客席から、歓声が上がる。

「頑張れー!」

「Fクラス、いけー!」

対戦相手——エルドア自由連邦・Dクラスも、アリーナに入場してきた。

彼らは、様々な属性の魔法使いが混在しているチームだった。

「よろしくお願いします」

相手チームのリーダーが礼をする。

「ああ、よろしく」

アレンも礼を返した。

審判が、中央に立つ。

「全国魔法大会、一回戦第一試合!アルディア王国・Fクラス vs エルドア自由連邦・Dクラス!」

観客席が沸く。

「試合開始!」

審判の合図と共に——

戦いが、始まった。

「《ファイアボール》!」

アレンが先制攻撃を放つ。

「《ウォーターウォール》!」

相手が水の壁で防ぐ。

「《ウィンドカッター》!」

ヒナタが風の刃を放つが——

「《アースシールド》!」

土の盾で防がれる。

「くっ……」

「やるな」

相手も、侮れない実力だった。

「みんな、連携だ!」

アレンが叫ぶ。

「おう!」

Fクラスが、一斉に動き出した。

トムが風魔法で敵の動きを乱し、マルクが土魔法で足元を固定。

リサが水魔法で視界を遮り、カイルが雷魔法で攻撃。

エマが氷魔法で追撃し、ヒナタが光魔法でトドメを刺す。

そして、アレンが炎魔法で一掃する。

完璧な連携だった。

「やった!」

相手チームが次々と倒れていく。

「勝負あり!アルディア王国・Fクラス、勝利!」

審判が宣言した。

観客席が、歓声に包まれる。

「やったー!!」

トムが飛び跳ねる。

「勝った……本当に勝った!」

エマが涙を流していた。

「みんな、よくやった」

アレンが笑顔を見せる。

「これが、俺たちの力だ」

Fクラス全員が、抱き合って喜んだ。

観客席では——

「あれがFクラス……」

「すごい連携だ」

「侮れないな」

他国の選手たちが、Fクラスを見直していた。

だが——

観客席の一角で、セレスが不敵に笑っていた。

「フフ……良い戦いだった」

その隣には、ノクティア暗国の代表・ヴァンディアが立っていた。

「あれが、古代魔法の継承者ですか」

「そうだ。あの少年が、アレン・アルカディア」

セレスの目が、妖しく光る。

「そして、隣の少女がヒナタ・カミシロ。風のマナの化身と契約している」

「……興味深い」

ヴァンディアが冷たく笑った。

「今夜、動く」

セレスが静かに言った。

「全てを、奪う」

不吉な笑みが、闘技場に響いた。

次回予告

全国大会、初戦突破!

だが、喜びも束の間——

試合終了直後、闘技場に異変が!

「結界……展開!」

黒月の牙、大規模襲撃開始!

魔獣の大量召喚、観客パニック!

「くそっ、何が起きてる!?」

アレン vs シャドウ、再び激突!

ヒナタ & シルフィア vs 専門部隊!

Fクラス全員、魔獣の群れと交戦!

そして、セレスの真の目的が明らかに——

「古代魔法とマナの化身、全て奪う!」

新古代魔法、覚醒!

《双炎連撃・ツインフレア》

《神風光翼・セイントゲイル》

炎と闇の、最終決戦!

第三章「闇の追跡者編」第8話「炎と闇の交錯」、次回更新!

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