表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/50

第6話:新たなる選択

第6話:新たなる選択


全国大会まで、残り三週間。

学園中央ホールに、出場生徒全員が集められていた。

Aクラス7名、Bクラス7名、そしてFクラス7名——合計21名の精鋭たち。

ホールの中央には、巨大な棚が設置されていた。

そこには、E級、D級、C級のスクロールが整然と並んでいる。

「すげぇ……こんなにたくさん」

トムが目を輝かせる。

「これが……スクロール」

ヒナタも緊張した面持ちで見つめていた。

ディルク教師が前に立ち、全員に向けて話し始めた。

「諸君。全国大会出場、おめでとう」

拍手が響く。

「今日は、特別な機会を与える。この中から、一人一つ、スクロールを選ぶことができる」

生徒たちがざわめく。

「ただし」

ディルクの声が厳しくなった。

「一度選んだスクロールは、変更不可。そして、習得に失敗すれば……そのスクロールは、二度と使用できない」

「……!」

緊張が走る。

「学園が保証するのは、挑戦権だけだ。成功も失敗も、全て君たち自身の実力による」

ディルクが全員を見渡した。

「よく考えて選べ。自分に合った属性、自分が得意とする系統を」

「はい!」

生徒たちが力強く答えた。

「では、始めろ」

ディルクの合図で、生徒たちが棚に近づいていく。

棚の前で、Fクラスのメンバーが悩んでいた。

「うーん、どれにしようかな」

トムがスクロールを眺める。

「俺、風が得意だから……風系のスクロールにしよう」

「私は光かな」

ヒナタが光属性のスクロールを手に取る。

「俺は土だな。防御重視でいく」

マルクが土属性のスクロールを選ぶ。

「私は水ね」

リサが水属性を。

「僕は……雷にしようかな」

カイルが雷属性を。

「私、氷がいい!」

エマが氷属性のスクロールを選んだ。

みんなが自分に合ったスクロールを選んでいく中——

アレンだけが、棚の前で立ち止まっていた。

「アレン、選ばないの?」

ヒナタが心配そうに声をかける。

「ああ……ちょっと、考えてる」

アレンは、スクロールを見つめていた。

炎、風、光……どれも魅力的だ。

だが——

(俺は、スクロールで魔法を習得できるのか?)

不安が胸をよぎる。

以前も、スクロールでの習得を試みたが、うまくいかなかった。

古代魔法を使う自分には、何か別の道があるのではないか。

その時——

『アレン』

エルフェリアの声が脳内に響いた。

「エルフェリア……」

『君は、スクロールで魔法を習得する必要はないの』

「え……?」

『君の力は、スクロールとは異なる道にある』

エルフェリアが優しく語りかける。

『君は、マナの化身と直接繋がっている。私、イグニス、シルフと』

「……そうか」

『だから、無理にスクロールで習得しようとしなくていい』

「でも、みんなは……」

『みんなはみんなの道を。君は君の道を歩めばいい』

エルフェリアの声が、温かくアレンを包む。

『焦る必要はないわ。君は、確実に強くなっている』

「……ありがとう、エルフェリア」

アレンは深呼吸をして、棚から離れた。

「アレン?」

ヒナタが不思議そうに見つめる。

「俺、スクロールは選ばない」

「え?」

「俺には、別の道がある気がするんだ」

アレンが微笑む。

「だから、みんなに任せるよ」

「……分かった」

ヒナタが頷いた。

「あなたなら、きっと大丈夫」

「ありがとう」

スクロール選択が終わり、習得の儀式が始まった。

一人ずつ、選んだスクロールを開き、魔法を発動させる。

成功すれば、その魔法を習得できる。

失敗すれば——二度と習得できない。

「では、始めろ」

ディルクの声が響く。

まず、Aクラスのメンバーが挑戦した。

レン・ヴァルトハイムは、雷属性のC級スクロール《サンダーストライク》を選んでいた。

「《サンダーストライク》!」

レンがスクロールを開くと、雷が迸る。

成功だ。

「さすが、レン」

周囲から称賛の声が上がる。

Aクラスの他のメンバーも、次々と成功していく。

やはり、Aクラスは実力が違った。

次に、Bクラスが挑戦する。

ガルスは火属性のD級スクロール《フレイムウェーブ》を選んでいた。

「《フレイムウェーブ》!」

炎の波が広がる。

成功だ。

「やった!」

ガルスが拳を握る。

Bクラスも、ほとんどのメンバーが成功した。

そして——

Fクラスの番が来た。

「ヒナタ・カミシロ、前へ」

ヒナタが緊張しながら前に出る。

手には、光属性のE級スクロール《ライトシールド》。

「頑張って、ヒナタ!」

アレンが声援を送る。

「うん……!」

ヒナタがスクロールを開く。

「《ライトシールド》!」

光の盾が出現した。

成功だ。

「やった……私、できた……!」

ヒナタが目を輝かせる。

「すごいよ、ヒナタ!」

アレンが駆け寄る。

「ありがとう、アレン!」

ヒナタが嬉しそうに笑った。

次に、トムが挑戦する。

風属性のE級スクロール《ウィンドバースト》。

「よし……いくぞ!《ウィンドバースト》!」

トムがスクロールを開くと——

小さな爆発音が響いた。

「うわっ!」

トムが後ろに飛ばされる。

「トム!」

みんなが駆け寄る。

「だ、大丈夫……ちょっと失敗したけど……」

トムが立ち上がる。

そして、もう一度スクロールを見ると——

風が優しく舞い上がった。

「……成功だ!」

ディルクが宣言する。

「やった!!」

トムが歓声を上げた。

「お前、爆発させといて成功かよ!」

カイルが笑う。

「うるせー!成功は成功だ!」

トムが照れくさそうに笑った。

続いて、マルクが挑戦。

土属性のE級スクロール《アースウォール》。

「《アースウォール》」

マルクが冷静にスクロールを開くと、土の壁が出現した。

成功だ。

「さすが、マルク!」

「まあ、当然だな」

マルクが余裕の表情を見せる。

リサは水属性のE級スクロール《ウォータースパイラル》。

「《ウォータースパイラル》!」

水の渦が現れた。

成功。

「よし、いい感じ!」

リサが満足そうに頷く。

カイルは雷属性のE級スクロール《スパークショット》。

「《スパークショット》!」

小さな雷の弾が飛び出した。

成功。

「やった!」

カイルが嬉しそうに笑う。

エマは氷属性のE級スクロール《アイスニードル》。

「《アイスニードル》!」

氷の針が空中に出現した。

成功。

「私もできた!」

エマが喜ぶ。

Fクラス全員が、スクロールの習得に成功した。

「よくやった、Fクラス」

ディルクが満足そうに頷く。

「これで、お前たちの戦力はさらに上がった」

「はい!」

みんなが笑顔で答えた。

習得の儀式が終わり、生徒たちは解散した。

だが、何人かは失敗していた。

「くそ……俺には、まだ早かったか……」

Bクラスの一人が、悔しそうに拳を握っている。

「次があるさ」

仲間が慰める。

成功と失敗。

それが、スクロール習得の現実だった。

その日の夕方。

Fクラスの教室に、メンバー全員が集まっていた。

「みんな、お疲れ様!」

トムが元気よく言う。

「全員成功したな!」

「うん、すごいよね」

エマが笑顔を見せる。

「これで、全国大会でも戦える」

マルクが自信を見せる。

「でも……」

ヒナタがアレンを見た。

「アレン、本当にスクロール選ばなくて良かったの?」

「ああ、大丈夫」

アレンが頷く。

「俺には、別の道がある」

「別の道……?」

「ああ。エルフェリアが教えてくれた」

アレンが微笑む。

「俺は、マナの化身と繋がってる。だから、スクロールとは違う方法で強くなれる」

「そっか……」

ヒナタが安心したように微笑んだ。

「なら、良かった」

「それに……」

アレンがみんなを見渡す。

「俺一人じゃない。みんながいる」

「当たり前だろ!」

トムが肩を叩く。

「俺たち、Fクラスだ!」

「ああ!」

全員が拳を合わせた。

「全国大会、絶対に勝つぞ!」

「おー!!」

Fクラスの教室に、元気な声が響き渡った。

その夜。

アレンは一人、訓練場にいた。

「《ファイアボール》」

炎球を放つ。

以前よりも、はるかに安定している。

「《ウィンドカッター》」

風の刃が空気を切り裂く。

「よし……」

『良い調子ね、アレン』

エルフェリアの声。

「エルフェリア……今日は、ありがとう」

『どういたしまして』

「俺、スクロールを選ばなくて良かったって、本当に思ってる」

『そう。それで正解よ』

エルフェリアが優しく言う。

『君の力は、スクロールで得るものではない。君自身の中にある』

「……うん」

『そして、イグニス、シルフ、そして私。三体のマナの化身が、君を導く』

「ありがとう、みんな」

アレンが微笑む。

『さあ、これから特訓よ』

「特訓?」

『そう。全国大会まで、三週間。その間に、君はさらに成長する』

「分かった!」

アレンが拳を握る。

『まず、防御魔法《蒼炎の守護・ファイアウォール》の精度を上げる』

「ああ」

『そして、風魔法との融合も試す』

「風魔法と……炎魔法の融合?」

『そう。君は今、炎と風を操れる。それを組み合わせれば、さらに強力な魔法になる』

「……すごい」

『さあ、やってみなさい』

アレンは深呼吸をして、魔法を構えた。

「《ファイアボール》と《ウィンドカッター》を同時に……」

右手に炎、左手に風。

「いくぞ……!」

二つの魔法を同時に放つ。

炎と風が交錯し——

爆発した。

「うわっ!」

アレンが後ろに飛ばされる。

『大丈夫?』

「ああ……でも、難しいな」

『当然よ。二属性の同時発動は、高度な技術が必要』

「……もう一回」

アレンが立ち上がる。

『その意気よ』

アレンは何度も何度も、挑戦し続けた。

失敗を繰り返しながらも、少しずつ感覚を掴んでいく。

そして——

「いける……!《炎風融合・フレイムゲイル》!」

炎と風が見事に融合し、巨大な炎の竜巻が出現した。

「やった……!」

『素晴らしいわ、アレン!』

エルフェリアが喜ぶ。

『新しい魔法を習得したわね』

「これが……俺の道」

アレンが微笑む。

『そうよ。君は、君だけの道を歩んでいる』

夜空に、星が輝いていた。

アレンは、新たな力と共に、前へと進む。

翌日。

学園の会議室で、教師陣が集まっていた。

「全国大会まで、あと三週間」

校長が全員を見渡す。

「準備は順調か?」

「はい。生徒たちは、スクロールの習得も終わり、訓練に励んでいます」

シリウス教師が報告する。

「良い。だが……」

校長の表情が険しくなった。

「ノクティア暗国使節団の動きはどうだ」

「相変わらず、学園内を徘徊しています」

ディルクが答える。

「セレスは、アレン君に接触を試みているようです」

「警戒を怠るな」

「はい」

「そして、全国大会の警備体制も万全にしろ」

校長が指示を出す。

「黒月の牙が動く可能性が高い」

「了解しました」

教師陣が頷いた。

「全国大会は、ただの大会ではない」

校長が静かに言った。

「戦場になるかもしれない」

会議室に、重い空気が流れた。

同じ頃。

学園の外、森の中。

セレスとシャドウが密会していた。

「準備は整っているか」

セレスが問う。

「はい。全国大会の会場、王都の闘技場の下見も済ませました」

「良い」

セレスが不敵に笑う。

「全国大会で、古代魔法の継承者を確保する」

「そして、マナの化身も」

「そうだ。炎、光、風……三体のマナの化身を手に入れる」

 理想などいらない。必要なのは力だけ。……神の力を、この手に。」

セレスの目が妖しく光る。

「さらに、他のマナの化身の情報も集める」

「了解しました」

シャドウが頭を下げた。

「全ては、我々の手に」

セレスの笑みが、深くなった。

森に、不吉な風が吹き抜けた。

その夜。

アレンは自室で、ベッドに横になっていた。

『アレン』

エルフェリアの声。

「エルフェリア……」

『今日、よく頑張ったわね』

「うん……でも、まだまだだよ」

『焦らないで。君は確実に成長している』

「ありがとう」

『全国大会……楽しみね』

「ああ。でも、ちょっと不安だ」

『大丈夫よ。君には、仲間がいる』

「……そうだね」

アレンが微笑む。

『おやすみ、アレン』

「おやすみ、エルフェリア」

アレンは目を閉じた。

窓の外に、満月が輝いている。

全国大会まで——

あと三週間。

新たな戦いが、幕を開けようとしていた。

次回予告

全国大会、ついに開幕!

王都の巨大闘技場に、全国の強豪が集結。

七大国から、各2クラスが出場!

セルフェン王国・エアリス(水魔法天才)

グランディア帝国・ゼノ(剣と魔法)

エアリア公国・ルフィン(風魔法)

ルミナス聖国・セラフィナ(光魔法)

ノクティア暗国・ヴァンディア(闇魔法)

エルドア自由連邦・カイラン(複合属性)

「これが……全国レベル」

圧倒的な実力差に、Fクラスは——

だが、諦めない。

「俺たちには、俺たちの戦い方がある!」

そして、開会式の夜——

暗雲が、忍び寄る。

「いよいよだ……」

セレスの不敵な笑み。

嵐の前夜——

第三章「闇の追跡者編」第7話「嵐の前夜」、次回更新!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ