17 追跡
卒業パーティーの騒動から数日後、王立魔術大研究所の一室。
フィリップ・ハーゲンは興奮気味に机の上へ装置を広げていた。
複数の水晶板と金属の輪が組み合わされ、複雑な魔術回路が幾層にも組み込まれた奇妙な機械。中央の水晶には淡い魔力が脈動し、まるで呼吸をしているように光っていた。
「――これが、夢追い装置です」
フィリップの黒髪はいつも以上にぼさぼさで、だが瞳は怖いほどに爛々と輝いていた。
「レディア嬢の夢に流れ込む魔力の残滓を捉え、そこから座標を逆算する。夢はただの幻ではない。魔力が結びついているなら、必ず現実のどこかに繋がっているはずだ!」
装置の前でレディアは静かに目を閉じ、指示どおり水晶に手を置いた。
――光が一瞬、強く瞬く。
「出た! 魔力の流れを追えるぞ……これならいける!!」フィリップの声が震える。
彼の手が次々と魔術式の盤を操作し、水晶の光が点から線へ、線から地図のような像へと変わっていく。
「……座標が算出されました。監察院に渡せば、すぐに場所を割り出せます!」
◇◇◇
場所の特定を任されたのは、第三者監察院だった。
彼らは情報と諜報のプロであり、王国内で知らぬ者はいない。
報告を受けたエドワード・ヴァレンシュタイン王弟殿下は、即座に調査を指示する。
「……ここだな」
監察院の地図に赤い印が打たれた瞬間、現場の潜入班が一斉に動き出した。
目立たぬ服装に身を包んだ諜報員たちが王都の地下道を駆け、密偵が先回りして見張りを一人ずつ無力化していく。
闇の中で交わされる言葉はほとんどなく、手際だけがすべてを語っていた。
やがて――
「発見。地下礼拝堂、闇組織の拠点です」
低い声が報告を告げた。




