表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

13 前夜祭の影

 卒業パーティーが近づくにつれ、学園は華やかな空気に包まれていた。


 フリードリヒ・ヴェルナー侯爵令息は、取り巻きの友人たちを引き連れて歩きながら、浮気相手の女性がいかに美しいかを得意げに語っていた。


「彼女の瞳の輝きは、まるで星々の光を集めたようで――」


 取り巻きは大げさに感嘆の声を上げる。だがそのやり取りを遠巻きに見ていた女子学生たちは、一様に冷めた視線を向けていた。


「……婚約者がいるのに、なにやってんだか」

「下品ね」


 噂はレディアやカタリナの耳にも届いたが、二人にとっては完全に雲の上の人たちの話だった。


「関係ないね」カタリナは肩をすくめ、筋トレと講座の予定を確認している。

 レディアも特に気に留めはしなかった。


◇◇◇


 ――前夜祭の前日。


 レディアはまた夢を見た。


 暗い空間に、ひとつだけ照らされたテーブル。

 その上には、美しい色をした飲み物の入ったグラスが置かれている。


 しかし、次の瞬間。

 グラスの表面がじわりと腐食し、ひび割れ、溶け落ちていく。


 音はない。けれど、胸の奥に冷たいものが広がっていった。


◇◇◇


 前夜祭の朝。


 フリードリヒは鼻歌を歌いながら、ジャケットの内ポケットに小さな瓶を押し込んだ。

 淡い青色の液体が光を受け、妖しく輝く。


 彼の口元には、ぞっとするほど下卑た笑みが浮かんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ