12 魔力の流れ
王立魔術大研究所の放課後。
フィリップの研究室では、今日もカタリナが装置に手を置き、魔力の測定や血統の記録が進められていた。
いつもならレディアはその間、本棚から本を引っ張り出して静かに読書している。だがここ最近は地下施設の夢のせいで寝不足気味で、ページをめくる手が止まり、まぶたが落ちていく。
――コトン、と本が閉じる音。
気づけばレディアは机に腕を置き、すやすやと眠り始めていた。
◇◇◇
その瞬間だった。
「わ! わわ! 見て! 魔力の流れがある! 何かに引っ張られてるような感じで! なんだこれは!」
フィリップが叫び、測定器の前で目を見開いた。
カタリナは首をかしげる。
「見てと言われても、魔力なんかあたしには見えないんだよねー」
「これは……もしや……!?」
フィリップの声が震える。
だがカタリナはレディアの寝顔をちらりと見て、眉をひそめた。
「レディア疲れてんだよ。静かにしてあげて」
ふっと魔力の流れが収まった。
レディアがゆっくり目を開ける。
「あ、寝てしまった……」
その瞬間、フィリップが興奮した顔で身を乗り出した。
「いま! 何か夢を見ていましたか!?」
「……なんか、キラキラ光るものが見えたけど……よくわからなかった」
フィリップは両手を打ち鳴らし、目を輝かせた。
「魔力の流れを追えるかもしれない! これはすごい! ヨハン様に相談しておこう!」
そして慌ただしく鞄を抱えながら、にかっと笑った。
「また来てね! ほんと頼りにしてるから!」
ピュッと扉の向こうに消えていった。
◇◇◇
「……素早いな。意外に筋肉あるのかな」
カタリナがぽつり。
「気になるのはそこなの?」
レディアは頭を抱えた。




