ファリス⑤
「ウォレン様・・・今の発言は一体?」
今、確かにウォレンは、勇者特有の技能である『絶対滅断』を猪人族が当然に使えるみたいな言い方をしていた。
「ガルクの丸盾が『光の羽盾』ではないか?と呟いたのに、正体には気が付かんかったのか・・・」
ファリスの言葉に、ウォレンは苦笑いを浮かべる。
目の前では、聖騎士達が怪我人の救助や片付けをしている。
外では、大きな音と、敵の首魁が吹き飛んだのを見て、決着が付いたと思ったのか大扉の復旧をしている様だ。
「ガルクが持ってるのは、大聖女アリウスの丸盾じゃよ・・・そして、貴女と同じくアリウスに認められた『勇者』なのじゃよ」
そのウォレンの言葉に、ファリスは驚きもしたが納得も出来た。
(だから、アリウス様の聖力を感じたのか・・・)
「・・・では、アベルは?《バルバティ》で、活躍し勇者に認められた者と聞きましたが・・・」
バルバティとはリフィール国の国境に位置する町で、他国とのいざこざがあり荒れた街とも聞いているが、そこを制したのがアベルだと聞いている。
「ま〜アベルは、《街の勇者》というレベルじゃろうな・・・ま〜聖剣は使えるからまるっきり《ニセモノ》ではないな」
アベルが王都に呼ばれたのは、ファリスの当て馬としてらしい・・・
「・・・本来なら、アベル達に魔王バグダックを弱らせさせ、貴女にトドメを刺させて『リフィール国王家の血を引く勇者誕生』を他国に大きくアピールするのが目的じゃったのだろう・・・」
だからこそ、普段なら国の防衛の為と動かさない筈の聖騎士団の主力一軍を勇者の魔王討伐に付けたのだ。
「王や大臣、貴族達の誤算は、アベルがガルク達と知り合いだった事じゃな・・・」
アベルが何故にバルバティで勇者になれたのかの経緯までは、彼らは調べようとしなかった。
だから、ガルクの正体に気が付かず、不当に扱おうとしていたのだ。
王や大臣、貴族にしてみれば、少し名を売っているアベルはファリスの《踏み台》になれば良い程度にしか考えて居なかったのだろう・・・だから、元が弱いヤツだから簡単に始末出来るだろう?というクダラナイ思考に成ったのだ。
「・・・人は頑張れば成長もする。逆に努力を怠ったりすれば衰退もするのじゃよ!」
それは今のリフィールの現状を嘆いている様にも、ファリスには聞こえた。
(・・・確かに王様を含め貴族や大臣は、過去の栄光に縋り、相手を見下して、権力に執着しているかもしれませんね・・・)
「おや?アイツ等の姿が見えんが・・・」
ウォレンは辺りを見回すと、いつの間にかガルク達の姿が見えない。
それどころか、聖騎士団長のランクルも居ない。
「・・・あの方達でしたら、敵の首魁を追いましたよ・・・団長もそれに付いて行った筈です」
その兵士の言葉に、ウォレンはある事実が頭によぎった。
「・・・まさか、後始末をワシに押し付けるつもりじゃあるまいな?・・・いや、アイツはそういう所はワシ以上に頭が切れる・・・やられたわい」
途中で場所を移す事をしなかったのは、逃げ出す口実を作る為だったのかもしれない。
「王が気絶している状態で、コレを収拾出来るのはウォレン様だけです・・・外にお待ちの大臣や貴族の皆様に説明をお願いします」




