勇者ファリス④
(あれは・・・まさか、大聖女アリウス様の『光の羽盾』?)
裏口から侵入したファリスが見たのは、魔王の大幹部のゴルクと、魔法盾を使って戦うガルクの姿だった。
信者として書物を何度も見た事があるファリスだからこそ、すぐに気がつけたのかもしれない。
(何で魔物・・・いや亜人の猪人族がそんな物を持っているの?)
ガルクの持つ魔法盾は、まるで勇者の如く聖なる力が宿っている。
(まるで彼が勇者みたいに見える・・・)
たしかに、外から来た勇者・・・功績等を積み上げて勇者に認められる者には、強い魔人の血をひいている場合もある。
この国では外道と罵られる場合もあるが、別な国ならば英雄として扱われる。
(・・・少なくても、彼はこの中では強者だ!)
それは敵の魔人も一緒・・・間違いなくファリスが彼の助太刀をしても、逆に彼の足手まといになる・・・
ならば・・・
(王様は何処に囚われてるの?・・・えっ?)
あの首領の魔物は、猪人族の彼との戦いに夢中になっているその間に、王を助けようと考えたが・・・
(えっ?王様を囚えてるのは・・・ウォレス様自身?何で?)
するとウォレスは、ファリスの存在に気が付いたようだ・・・来る様に手招きしてきた。
「ほぉ〜この国の勇者にしては、良い心持ちだの〜
ほれ、王よ勇者が助けに来てくれたぞ!」
ウォレンの言葉に、王は涙を流すがその声は封じられてるので出せない。
「ほれ、こちらに来て《観戦》しようではないか・・・しかし、ここに来たのはおヌシだけか・・・王は本当に良い配下を持ったものだの」
皆が激戦しているのに、ウォレスだけは気楽そうにしている。
(皆さん、想像以上に強い・・・全然、私とは違う)
今までファリスは自分は勇者なのだから、少なくても国でも『実力者』だと思っていた。
だが、これを見て自分は2対1聖騎士程度だったのを痛感させられた。
この聖騎士とて、騎士団の上部100人なのだが・・・
(えっ?勇者なのに回復して歩いてる?)
猪人族と敵の首魁の魔人との闘いはすごいが、次にファリスの目に写ったのは、同じ勇者認定を受けたアドムだった。
彼は積極的に戦わず、攻撃して来た魔人は倒しているが、その他は動きたい者を優先に回復させ、気を失ったり動けない者には死なない程度の《小回復》に留める。
(うちの聖女とは違う・・・)
たしかに回復量は聖女の方が大きいが、自分の身一つ守れない。
何より、こんなに戦場を動き回ることは無い。
常に誰かの《影》に隠れ、いざ自分がアピール出来る時だけ飛び出して『全開回復大魔法』をかけるだけだ。
だが、彼はその場に合わせて、解毒や応急処置をおこなっている。
(だから死者がほとんど出てないんだ!)
なによりファリスが驚いたのは、魔人達も瀕死や動けなく成った聖騎士達に不意打ちやトドメを刺すような真似は一切してこないのだ。
自分らが魔王バグダックへの侵攻の時、《魔物は全て悪》かの様に掛かってくる魔物ばかりではなく、逃げ惑う者まで〇殺していた。
そう、アドムは先頭に立ち皆を導く『勇者』ではなく、皆を助け励ます『勇者』なのだ・・・
(私たちの方がよっぽど、傲慢な気がする・・・)




