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才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった  作者: 雷覇


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第101話:疑念と孤立の謁見

王城に戻った蒼真たちは、すぐさま謁見の間へと通された。

高い天井に反響する足音が、重苦しい空気をいっそう濃くする。

玉座の前には王の側近や騎士団長らが揃い、険しい顔で一同を迎えた。


報告の先頭に立ったのはアメリアだった。

「……勇者レグナの死亡場所を確認。その仲間二人も氷によって凍りつけられていました」


ざわめきが広がる。

「氷漬け……?」

「そんな魔術、人を丸ごと閉じ込められるのか……」


アメリアが一歩前に出て声を重ねる。

「しかも、レグナとは違う手口です。レグナは打撃による致命傷。仲間は魔力を帯びた氷による封印。つまり、敵は複数」


広間の空気が一気に張り詰める。

重臣たちの間に動揺が走る中、蒼真がゆっくりと口を開いた。

「……僕の眼には、三つの異なる氣が残っていました。殴殺、氷結、そして影のように潜む氣。敵は三人、あるいはそれ以上で動いています」


その言葉に、場にいた誰もが息を呑んだ。

やがて王の側近が進み出て低く言う。

「すぐに兵を割き、王都内外を徹底的に捜索すべきでしょうな」


隼人が肩を竦め、軽口を叩いた。

「そうそう。俺たちも手分けして探った方が早いだろ。大物が揃ってるらしいし、放っといたら次は王都そのものが危ねぇ」


セリスは頷き、王に向き直る。

「陛下、我々に探索の許可を。瘴気の痕跡を辿り、必ず敵を突き止めます」


王の顔には苦悩の影が浮かんだが、やがて強く頷いた。

「……よかろう。勇者たちには自由に動く権限を与える。だが軽挙は許さん。必ず連絡を取り合い、情報を持ち寄るのだ」


報告を終え、一同が退出しようとしたその時だった。

重臣の一人が声を上げる。


「……待て。蒼真。貴様の言葉だけが、なぜか妙に魔族の行動に詳しすぎると思わぬか?」


広間に緊張が走った。

しかし別の重臣も口を挟む。

「レグナを殺した魔族の氣を三人と断言できたのは、貴様だけだ。他の誰も感知していない。……その眼こそ、魔族の力を借りた証ではないのか?」


ざわめきが一層大きくなる。

蒼真は黙って視線を受け止め、静かに口を開いた。

「……疑うのは構わない。だが、僕は魔族の仲間ではない」


広間の空気は険悪に張り詰める。

だが王が重々しく手を上げ、沈黙を取り戻した。


「……疑念は残る。だが、今は敵が目前に迫っている。蒼真、お前には王都内での捜索の役目を命じる。勝手な行動は許さん」


重臣の一人が声を張り上げた。

「加えて命じる。我々が特定した場所以外の捜索は禁ずる! 勝手に動いて混乱を招くことは許されん!」


ざわめきが広間を駆け抜ける。

朱音が思わず声を荒げた。

「蒼真を疑ってそんな縛りをするなんて……!」


セリスも唇を固く結び、静かに言葉を添える。

「……それでも従うしかありませんね。少なくとも今は」


蒼真は重臣たちを真っすぐに見据え、短く応じた。

「承知しました」


その声音は冷静だったが、胸奥に潜む焦りと苛立ちは隠しきれなかった。

(自由に動けない……。だが、魔族の気配を感じ取れるのは僕だけだ。束縛されたままでは、追跡は不可能だ……)


広間には不穏な空気が漂い、蒼真の立場はますます孤立を深めていった。

重臣の一人が静かに口を開いた。

「……いや、むしろ逆だ。蒼真には単独で行動してもらう」


広間がざわめいた。

「単独……だと?」

「まさか監視も付けずに?」


重臣は冷ややかな視線を蒼真に注ぐ。

「仲間と共に動けば、魔族と通じていた場合に一気に被害が広がる。だが一人であれば、その行動の真偽を確かめやすい。……何より、仲間を巻き込む危険がなくなる」


朱音が立ち上がり、机を叩いた。

「ふざけないで! 蒼真を囮にするつもり!?」


セリスも青ざめながら声を重ねる。

「そんな決定は……余りにも危険です!」


しかし別の重臣が鋭く言い放つ。

「危険だからこそだ。もし彼が潔白ならば、それを証明できる。もし裏切り者ならば、その時は……」


広間に重苦しい沈黙が落ちる。

蒼真は静かにその言葉を受け止め、やがて小さく頷いた。

「……分かった。一人で行けばいいんだな」


朱音とセリスの顔が同時に強張る。

「蒼真!」

「そんな……」


だが彼は二人を制するように片手を上げ、わずかに笑みを浮かべた。

「大丈夫だ。真実を示せるのなら、悪くない役目だ」


蒼真は静かに口を開いた。

「……それで、僕はどこを捜索すればいいのですか」


広間に沈黙が落ちる。重臣のひとりが一歩進み出て、重々しく答えた。

「お前には、レグナと戦ったという闘技場の調査を任せる。あの場には今なお不穏な瘴気が漂っているとの報告がある」


ざわめきが広がる。

朱音が即座に声を上げた。

「闘技場……。でも、そんなの兵士に任せても――」


しかし重臣は首を振った。

「いいや、蒼真にしか感じ取れぬ痕跡があるだろう。お前の眼で確かめてもらう」


セリスが唇を引き結び、静かに呟く。

「……つまり、監視も兼ねて王都の外には出させない、ということですね」


その言葉に重臣たちは無言で頷く。

蒼真は短く息を吐き、やがて力強く答えた。

「承知しました。闘技場を調べてみましょう」


その眼差しは冷静を装っていたが、胸奥には別の思惑が燃えていた。

(闘技場か。これは好都合だ。朱音やセリスの眼をどうやって振り切って行こうか考えていたところだったが――これはラッキーだな)

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