表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

#8 世界の答え合わせ②

#8 世界の答え合わせ②

──10年前 レクシア王国 中央広場

「なぁ、カイル?神様ってどんな見た目してると思う?」


「そりゃもちろん、キレーなお姉さんでしょ!」

カイルが興奮気味に答えると


「えー、髭モジャモジャのおじさんだよきっと!」


「会ってみたいな、いつか」


「リゼルなら会えるんじゃないか?だってほら、その左手のやつあるし」


「そうだね、きっといつか」

リゼルは左手を天に掲げて満面の笑みで語った。


──10年後 『10月15日』 旧魔王城 玉座の間


「リゼル!」


「…よくここまで辿りついたなカイル」

玉座に座り、深く黒いフードを被ったリゼルは低い声で答えた。

その横には魔王ヴェルトがまるで置物の様に静かに佇んでいた。


「お前、こんな所で何やってるんだよ!」

カイルは抑えきれない怒りをリゼルにぶつけた。


「なぁ、カイル。”神”はお前が言う通り女だったぜ」


「はぁ?何の話してんだよ!今、世界は大変なことに…」


──魔王の脅威の消えた世界はかつてないほどの混乱に陥っていた。

まるで、脅威があった頃が嵐の前の静けさだったかの様に。


まず、”真神教”はリゼルは”神の現世の姿”ではなく、”リゼルその人が神である”とし”リゼル教”と名を改めた。まるで最初から仕組まれていたかの様に。

そして、”リゼル教”に”勇者リン”が誕生した。

程なくして、”リゼル教”はアズラン村を中心に新王国を建国したことを宣言した。その国の名は”リゼル王国”初代国王にはローベルが即位した。


リゼルの”強制命令”が解除された”旧神教”の信者──レクシア王国は”リゼル教”を異教徒として両陣営の戦争が始まった。

”神託”によって強化された”旧神教”の信者と”勇者リン”を中心とした”リゼル教”の争いは熾烈を極めていた──


「知ってるよ、何もかもな」


「だったらなんで──」


「すべては俺が仕組んだことだからな」


「なんで俺が”旧神教”の勇者のままかわかるか?」


「”あいつ”は恐れているんだ。俺が死ぬことを」


「今の俺はすごいぞ、そこにいるヴェルトの”本体”を瞬殺できるほどにな」

隣にいたヴェルトの顔がこわばった。


「お前は信じるか?」


「この世界の上にももう一つ世界があるって」


「俺たちは所詮”神VS魔王”のためだけの存在にすぎないんだ」


──『5月16日』魔王討伐後 魔王城 玉座の間


「…何が聞きたい?」

魔王ヴェルトは唇を震わせながら、かつて自分が座っていた玉座に座る

リゼルに静かに尋ねた。


「玉座の下、これが”別の世界”に繋がるゲートか?」


「…お前はどこまでわかっている?」


「俺は”真神教”の信仰対象になって”神がこの世界に降り立った存在”である勇者になった」


「この信仰の力は勇者である俺にきた」


「おかしいと思わないか?

もし”神”がこの世界にいるとすれば、その”神”が”勇者”となり俺に信仰の力はこない」


「──つまり、”神”は別の世界にいると考えたわけか」


「あぁ、それはお前もだろ?」


「なぜ、そう思った」


「お前は魔力切れしていたはずなのに止めを刺すときに”暗黒魔法”が使えた」


「……そうか、もうすべて見抜かれていたか」

魔王ヴェルトは、もはや隠す意味もないと理解し、は静かに語り始めた。


「…お前らが”神”と崇めているのは我と”上の世界”で覇権を争っている宿敵だ」


「我ら力の源はそれぞれが持っている”人間界”と”魔族界”からの信仰だ」


「だから互いの世界にそれぞれの魔力の一部を送り込み、少しでも力を削ごうとしている」


「…リゼル。我はもう長き戦いに疲れた。お前が”神”との戦いを終わらせてくれるなら─」


「ふざけるな!」

これまで抑えていた怒りが爆発し、リゼルは激昂した。


「俺たちは覇権争いに利用されていたってか?」


「お前との戦闘で散っていった人たちは?あの人たちのに何か救いがあったてのか?」


「…我は、すべて全て受け入れよう」


「こんな世界を作ったお前たちを決して許さない」


──『10月15日』 魔王城 玉座の間

「…お前は…何がしたいんだ…?」

カイルは震える声を無理やりつなぎ合わせるように、言葉を絞り出していった。


「復讐さ、この世界の全てに」

その口元には理性の皮を被った狂気が滲んでいた。リゼルは不気味な笑みを浮かべながら言葉を紡いだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ