#6 勝利報告
──『4月16日』 レクシア王国 レクシア城 玉座の間
「なに?それは誠は?」
「はい、アズラン村を中心にその周辺の村で”真神教”と名乗る異端者の集団が
発生した様です」
「報告によると、どうやら我々の”神教”を”旧神教”呼ばわりし、”真神教”こそが正統であると触れ回っているようです」
「…この非常事態にそんな連中が!
軍を派遣し、一人残らず処罰せよ!」
王は震わせた拳を玉座の手すりに叩きつけ、家臣へ命じた。
「お待ちください!」
突然、玉座の間の扉が開き、リゼルが入ってきた。
「おぉ、リゼルよ、大丈夫だったか?」
王は先程とは打って変わり、優しくリゼルを迎え入れた。
「お気遣い感謝致します。
して、先ほどの異端者の件ですが私に任せていただけませんでしょうか?」
「お主が行ってくれるならこれほど安心できるものはない!」
「はい、以前と同じく我らが”神”に背く者は私が直接叩き潰して参ります」
リゼルは片膝を着き、宣言した。
「つきましては、この件は私に一任していていただければと存じます」
「あぁ、頼むぞ。勇者リゼルよ」
「では、失礼致します」
─ここまできて潰されてたまるか
──『4月16日』 レクシア王国 城下町 中央広場
「リゼル!」
「…あぁ、カイルか」
リゼルは力無く、振り返った。
「異端者の件、聞い──、お前、なんか雰囲気変わったか?」
カイルはあまりにも様子が変なリゼルを案じ、尋ねた。
「そりゃ、こんだけ魔王に負け続ければな」
リゼルは力無く笑った。
「それと、異端者のだろ?さっき王に直談判して俺が討伐してくることにしたよ」
「そうだったのか、じゃあ俺も─」
「お前は来るな!!」
リゼルは突然の大声でカイルを遮った。
「…悪い、とりあえずこの件は俺一人で大丈夫だから」
そう申し訳なさそうにリゼルが呟いた。
「いや、こちらこそ余計なお世話だったな」
「…なぁ、カイル?
本当に神は乗り越えられる試練しか与えないと思うか?」
「あぁ、もちろんそう思っている」
「そうか…、変なこと聞いて悪かったな。じゃあもう行く」
そういうとリゼルはその場を立ち去った。
「…馬鹿野郎」
カイルはリゼルがこのまま遠くに行ってしまう。
そんな気がしてならなかった。
──『4月16日』 レクシア王国 リゼルの自宅
これで”真神教”の方は大丈夫だ。
…俺はカイルにどうして欲しかったんだろうな、今となってはもうわからない。
もうどうでもいい、この世界を変えられるなら。
──1ヶ月後『5月16日』
この一ヶ月間、勇者リゼルは転移魔法で各地を飛び回り、魔族を討伐して周った。
その活躍に比例する様に”真神教”の勢力は拡大して
今や、”真神教”と”旧神教”の勢力は世界を二分するほどになった。
一方、王に異端者討伐の知らせは届かなかった。
拡大し続ける勢力にもはや王に対抗する術はなく、リゼルに頼る他なかった。
そんな折に最前線の兵より別の報告が上がってきた。
──勇者リゼルが魔王が討伐した、と。