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#3 勇者の新たな力と秘策

──『4月3日』 レクシア王国 リゼルの自宅


リゼルは一人で考え込んでいた。


─ロベールの話が正しいとすると

おそらく、神教の信仰は人類のみ、魔神教の信仰は魔族のみが出来るのだろう。

だから”毒”状態の時にだけ魔神教の教本が読めたんだ。

”毒”状態の間は魔族の血が流れているから。


直感が言っている。これは魔王討伐に繋がっていると。


加えて、リンとのやりとりで感じた違和感と謎の懐かしさ。

まずは違和感。これの正体は俺の希望が通らなかったこと。

そして懐かしさの正体は、以前冒険の途中で討伐を依頼され立ち寄った異教徒の村で感じたことがあったからだ。

あの時もこちらの言い分を何も聞き入れず、まるで魔族と戦っている様な奇妙さを感じたんだ。


どんな村に行っても歓迎され、協力してくれている。

左手の紋章が勇者の証であるとみんなが知っているからであると思っていた。

しかし、ロベールとの最後の会話で確信した。

これは勇者の能力だ。

──”強制命令” 神教の信仰をしている者はその者の能力以内のことであれば無条件で命令を聞かせらせる。

これは勇者の力の中で一番有効な力だ。


「これならあいつを…」

リゼルは沸々と湧き上がってくる笑みを抑えながら

机の上にあった魔族の血を一気に飲み干し、魔神教の経典を開いた。


──『4月13日』 魔王城 玉座の間

魔王ヴェルトは驚いていた。まさか勇者がここまでやってくるとは。


勇者のには”不死能力”があるため、殺さない様に手加減し捕獲するつもりだった。

しかし、”毒”の影響で数時間すると死体ごと消えてしまう。

若干、魔力も上がっている。まぁこれは大した問題ではない。

そして、消えたと思った刹那、”毒”状態かつ全快した勇者が飛んでくる。


…どうしたものか、我々に”毒”を治療する神聖魔法は使えない。


ただ、この違和感は何だ?

戦力が増加しているわけでもないのになぜ何度も死ににきている?

私を観察している…?

倒すべき相手を観察し、情報収集するのは当然である。

しかし、この感じは倒すべき相手というよりは、手本にしている?

何のために?

…わからない。


何度目かわからない、向かってくる勇者を片手であしらいつつ

ヴェルトは対策を考えはじめた。



──『4月13日』 レクシア王国 教会


「…これで100回目だぞ」


「あぁ、計画はすこぶる順調だ」

リゼルはそう言うと、休む間もなく魔族の血を飲み魔王城へ飛んでいった。


─”毒”状態とは本来戦える様なものではない。リゼルの桁外れた体力と精神力がなせる狂気である


「もしかしたら、リゼルの心はもう…」

そう呟いた瞬間、リゼルの死体が目の前に現れた。

─これが101回目の死亡だった。



──10日前『4月3日』 レクシア王国 レクシア城 玉座の間


「して、勇者。頼みたいこととはなんだ?」


「えぇ、まずは見てもらった方が早いと思います」

「ベランダから城下町を見てください」


王がベランダから城下町を除くと、国民全員が

片膝をつきレクシア城に向けて祈りを捧げていた。


「これは…?」


「これが勇者の力である”強制命令”です」

勇者は能力の説明と頼み事を話し始めた。


「──なるほど、神教の信者であれば勇者が望んだ通りに動かせると。

…まるで神の様の力だな。

その能力を使ってお主が求めるタイミングで魔力を集めるということだな?」


「はい、こちらがその魔力を送る指輪です」

勇者は赤い宝石のあしらわれた指輪を王に差し出した。


「その指輪に魔力を送ってくれれば、私が今つけているこの指輪に魔力が

送られます」

勇者は青い指輪をつけた左手を見せて話した。


「わかった、して、これで魔王は倒せるのか?」


「いえ、これをもって勝率1割以下といったところでしょうか」


「…わかった、まずはやってみよう」


「ありがとうございます。では『4月5日』からお願いいたします」



── 『4月14日』 レクシア王国 教会


「…今日も行くのか?」


「もちろんだ」

リゼルはカイルを一度も見ずに答えた。


「…そうか、それで”魔力供給作戦”はどうなんだ?」


「悪くない、常に魔法力が満タンだから最大火力で魔法を打てるし

常に強化魔法がかかり続けている状態だからかなり動ける」

「まあ、それでも実力差は大して縮まっていないがな」

この話をリゼルの表情を見てカイルはゾッとした。


「…お前、何で笑ってるんだ?」


「え、俺は笑ってたのか?まぁ、もうすぐわかるさ」


「…お前、どうしてそこまで」

カイルは震える声で呟いた。


「だって”神は乗り越えられる試練しか与えない”だろう?」

そう言うリゼルの言葉には何の感情が感じられなかった。


「…もう行く」

リゼルはそう言い残し魔王城へ飛んでいった。


「…」

カイルはその背中に何の声をかけられなかった。

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