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#1 勇者の力

──『4月1日』 魔王城 玉座の間

初めて戦う魔王の力は圧倒的だった。


やつの一振りで大地は割れた。

放つ魔術は空間ごと塗り潰す闇そのものだった。


”ざっと見積もって今の俺の1000倍は強い。しかも、まだ本気を見せている様子ではない。”


「あー、こりゃ無理だ…」


「こんなものか、勇者よ」

魔王ヴェルトの右手から放たれた黒い閃光が直撃し、勇者は気を失った。


──『4月1日』 レクシア王国 教会


「気付いたか?リゼル」


「…カイル」


「そんなに強いのか、魔王は」

カイルは水を差し出しながら尋ねた。


「…はっきり言って、次元が違う。

たぶん、修行してどうこうとか、そういうのじゃない」


「なんだよ、お前らしくもない!」


「…」

リゼルは何も答えられなかった。


「…とりあえず、ゆっくり休め」


「あぁ、ありがとう」


──『4月1日』レクシア王国 城下町 中央通り


魔王城の前にワープマーカーはしてきた。

すぐにでも飛んでいけるが、このまま再戦しても結果は同じだ。


どうすれば、あいつの力に追いつける?

はっきり言って、今の俺は人類で一番強い。

剣術、魔法、身体能力そのどれをとっても俺の右に出る者はいない。


「”神は乗り越えられる試練しか与えない”か…」


果たしてこの魔王討伐は乗り越えられる試練なのだろうか。

心が折れかけていたリゼルの呟きは夜の町へ消えていった。


──『4月2日』 レクシア王国 リゼルの家

朝、目覚めたリゼルはふと、自分の左手の紋章を見た。


─リゼルには生まれつき左手に紋章があった。

この紋章は”勇者の紋章”と呼ばれ、これを持つものには

神よりいくつかの特別な力が授けられる。

まず一つ目は不死能力だ。

死亡しても、神の加護が宿る教会に死体が自動転移し、復活できる。

二つ目は学習能力だ。

魔族と戦闘することにより、自分の剣術、魔術、身体能力を引き上げることができる。しかし、この二つ目はある時期から引き上げられなくなった。

おそらく上限に来てしまったのだろう─


──『4月2日』 レクシア王国 レクシア城 玉座の間

「して、魔王軍の侵攻はどこまで来ている?」


「はい、勇者様の活躍により現在はレクシア王国と魔王城のちょうど

中心にあるフローデ村の手前で止まっております」


「そうか、報告ご苦労だった」


「勇者リゼル様が参られました!」

衛兵の号令とともに扉が開き、カインは玉座の手前でひざまづいた。


「おぉ、勇者よ、して魔王は?」


「…討伐はできておりません」

勇者は、一度も顔を上げられなかった。


「…そうか」


「これ以上の魔族の侵攻は必ず食い止めます。

…ただ、現段階での魔王を討伐はお約束できません」


「…わかった、下がってよい」

リゼルは一礼し、玉座の間を後にした。


──『4月2日』 レクシア王国 教会


「で、どうするんだ?」


「前回の戦闘で魔王に不死能力の事を知られたはずだ。

目の前から倒したと思った相手が急に消えたんだからな」


「あぁ」


「次、討伐に行くと間違いなく生きたまま捕らえられるだろう。

だから、今後は常に”毒”状態で魔王に挑む」


「…なるほどな」


─”毒”とは魔族の血液が人体に入る事により引き起こされる異常状態のことである。

人体内での無毒化の機能はないため、拒絶反応のみが常時起こり続ける。

その結果、体力が削られ、最大体力値にもよるが、成人男性の場合、約10時間で死に至る。

死に至るまでの時間は複数の毒、いわゆる魔物の血を入れる事により加速させることができる。

勇者であれば、成人男性の100倍時間がかかるが、3種類同時に注入する事で約10時間で死に至ることができる。

勇者はあえて感染状態で戦いに行く事で仮に捕えられても10時間すると教会に自動転送される。

この”毒”を解除するには神を信仰している術者のみが使える神聖魔法の一つである

解毒魔法を使用するしかない─


「でも、これは…」


「そう、魔王を倒す案じゃない、そこについてはまだ何も思いつかない…」

そういうと、リゼルは立ち上がり、教会の扉へ向かった。


「おい!どこへ行くんだ?」

カイルはリゼルの手を掴み静止した。


「魔族を討伐しに行くんだよ、今はまずやれることをやっていくしかない」

リゼルはカイルの手を振り解き、外へ出て行ってしまった。


「リゼル…」

カイルは転移魔法で飛んでいくリゼルを案じて呟いた。


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