#9 戦争と世界の結末
──『10月16日』リクシア王国 教会
魔王城から戻ってきたカイルの頭にはリゼルとの会話が残ったまま離れなかった。
「リゼル、俺はどうすればいい?一体どうしてほしい…?」
──1日前 『10月15日』 魔王城 玉座の間
「よかったのですか?あのまま帰してしまって」
「あぁ、あいつは使えるからな」
「俺の予想が正しければ、あいつは”旧神教”を倒す最後の鍵だ」
「…」
魔王ヴェルトは驚愕して何も言えなかった。
すでに此奴の心はここまで壊れていたのか。
「それよりも、お前の方─”魔族界”の進捗は?」
「はい、”神”側の勢力は徐々に弱まっており、壊滅寸前です」
「そうか…」
そう言うと、リゼルは無言で黒いフードを外した。
その下から現れたのは、魔族と化した半身だった。
銀白の髪が揺れ、左目は深紅に染まり、不気味な光を湛えていた。
──1日後『10月17日』リクシア王国 レクシア城 玉座の間
「─して、勇者リゼルの様子は?」
─国王に呼び出されたカイルは魔王城であった全てを話した。
その場にいた全員がその内容に絶句した。
「…我々は”神”の家畜に過ぎないということか」
「はい…」
「にわかには信じ難いが」
「リゼルが魔王を倒して存在していることが何よりの証拠かと」
──その後、”旧神教”は”リゼル教”に降伏を宣言した。
この日”人間界”から”神”の信仰が消えた。
──『10年後』 ○○の世界
”魔族界”と”人間界”どちらの信仰も”リゼル”に集まった。
もはやこの世界にリゼルよりも強い者はいなくなった。
魔王ヴェルト曰く
──この世界は魂の世界。
人類、魔族どちらも死亡したときに魂のみの存在になり、ここに来る。
そして、自然に消えゆくものである。
しかし、一定以上の力、つまり信仰の力がある者のみこの世界に留まることができる。
信仰を失った”神”も”魔王”ももうこの世界には存在しない。
この世界の下に”人間界”と”魔族界”があるのみ。
「ようやく終わったか」
誰もいない世界でリゼルは呟く。