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#0 プロローグ
──レクシア王国 中央広場
「勇者リゼル様万歳!」
群衆の叫びは、まるで大地を揺るがす咆哮のようだった。
レクシア王国の中央広場は、歓喜に沸く人々で埋め尽くされていた。
城から続く大理石の階段の先、壇上にひとりの男が立っていた。
深くフードを被り、その顔を隠したまま、男──リゼルはゆっくりと歩を進める。
熱狂に包まれる空気の中で、彼だけが異質な静けさを纏っていた。
「──鎮まれ」
その一言は、大声でも怒鳴り声でもなかった。
けれど、次の瞬間には驚くほどに、先ほどまでの騒めきが完全に消えていた。
まるでこの場にいた全員が、息を止めたかのように。
静寂。
まさに神の奇跡にも似た光景だった。
誰一人声を発せず、リゼルの言葉を待っている。
「ようやくここまで来たか」
彼は誰に語りかけるでもなく、静かにそう呟いた。
声に感情はなく、ただ事実を確認するような調子だった。
──これでようやく、“やつ”を倒せる。