11脂肪 居眠りなんて私がすすすすすすすすすするはずないわ。
ちょっと修正
誤字めっちゃ多かった。申し訳ありません。
あらためて自己紹介するわ。
私の名前はスリミィナ。
この世界で最も美しい存在。容姿、人間性、美学に哲学。冒険者としての功績。残した功績。生きざま。何もかもが美しい……ちょっと盛り過ぎたわね。ウフフ。
現在、様々な方法で私の活躍が語られているわ。小説、演劇、詩歌、紙芝居なんて物でも。
語られる物語では、たいてい私は古代の英雄の生まれ変わりとかそういう感じになっていて……遭遇した出来事は前世からの因縁みたいな風にされている。歴史にもそんな風に残っちゃいそうね。
実際にはそんな事実は無くて、巻き込まれた事件は全て偶然よ。
エムドやヒーギャックやエアッゾは、前世でも現世恋人ではないわ。……絶対にハーレムのメンバーでもない。そもそも私はツンデレじゃないでしょうに。あらゆる存在に対して常に慈愛に満ちた振る舞いをするでしょ?ねッッッッッ!
今回の脂肪系魔物とアーティスト志望についても、前世の因縁だの、帝国や世界を揺るがす陰謀だの、神に至るための試練だの、歴史家は言うけど……全然完全に偶然の遭遇だったわ。
まあ当時の私は、これからアーティスト志望やそれに近しい存在が現れる予感はしていたから備えたり覚悟したりしたけど、全部無駄に終わったわ。
「さて、今回の脂肪ヶ岳の件だが……」
話を当時に戻すわね。
庭師がアウトレットモールで3割引で買ってきた新たな辺境伯邸の会議室で、私たちは先日のの戦闘についての会議を行ったわ。
そりゃあさ、あんなアーティスト志望みたいなのがまた出てきたら大変でしょ。
凶悪なコアラが乗ったままどこかに飛んで行った空中庭園のこともあるわね。
他の空中庭園は破壊されている粉々になったの。『爆散した24金は精霊の残業手当に当てられました』とか精霊の声が流れたからコンプライアンスは守られてる。その点は大丈夫。
念のため……少しばかり清貧アピールがうざいかも知れないけど、私はガメていないし、アイテムボックスにはトン単位の24金なんてないわ。『ちくわ』と交換してくれるように精霊に頼んでもいないし、精霊がこ、応えるはず、ないじゃない。
だからオーダーメイドのブラジャーは、あ、あくまでも私のお小遣いで買ったわ。ほら、私って倹約家じゃない。こんなときにお金って使うのよ。
「……それで脂肪系魔物の特殊個体など……なんたらかんたらうんたらかんたら」
辺境伯様が色々話している。聞いていなかったわけじゃない。居眠りなんて私がすすすすすすすすすするはずないわ。会議の参加者が私を睨み付けてたのは、きっと私への思慕の念を堪えてたからよ。ここの人たちってストイックね。私の目をキチンと見る。
あっ、そうだそうだ。両隣の不死鳥が圧倒的居眠りしてたから、それを睨んでたんだわ。
「今回は……そちらのスリミィナ殿、いやスリミィナさんが解決したから良かったものの……」
「いえ、皆様の尽力があったからです。私のしたことなど『ちくわ』を出したくらいですわ」
本心よ。辺境伯様&精鋭ズと不死鳥2匹、それと野球闘将神もいなければ私はあっという間に死んでた。終憎が出た時点で詰んでたわ。アーティスト志望が経験値に変えちゃったけどね。
《いい心がけだ。その気持ちが褪せる前に、グラウンド100周ッッッッッ!》
「野球英雄神めッッッッッ!うぜええええええええええええええええッッッッッ!」
心の中に放たれた言葉に、私は実際に声を出してしまった。しかも机もぶっ叩いちゃった。これ、テヘペロで済まないかしら……
「お、落ち着くのだスリミィナ様」
会議の参加者は全て辺境伯様の背中に……奪い合うように隠れる。
何?何なの?
まさか、私の魅力が攻撃的過ぎた?
「『うぜえ』か……ナイス蔑み」
ヒーギャックがはふぅ、と倒れて痙攣した。テメー居眠りしてたのにこう言うの聞き逃さないのな……
あっ、ヒーギャックに怯えてるのか。確かに精神衛生上良く無いわね。キモいけど、なんだかんだ助けてはくれる(助けられたとは言っていない)しフォローしとこ。
「どうか皆様、ヒーギャックさんのことをほんの少しでも良いので、見直してあげてください。少なくとも先日のおぞましい戦いで、彼は私をかばってくれました。彼が、彼だけでなくエアッゾさんがいなければ、私たちは生き残れなかったと思います」
ーーいや、それは無い。
ーーお前……じゃなかったあなた様1人で良かったです。
ーー謙遜……嫌みですか?
参加者が何かボソボソ言ってる。鏡もカメラも巻尺もスケッチブックも持っていないから、私へのセクハラじゃなさそう。
「ならよしッッッッッ!」
おっと、また声に出しちゃった。最近、不死鳥的な理由で疲れてるから仕方ないわよね。ファンサービスでテヘペロッッッッッ!
皆 の 衆 な ぜ 抜 刀 し た。
「よさぬかッッッッッ!スリミィナ様、大変失礼しました。貴様ら剣を納めろ……刺激するなッッッッッ!」
刺激?
ああ、完全空気のエアッゾが痙攣してるものね。良い夢見てるのだから、寝た子は起こさない方がよろしいわね。
「さて、スリミィナ様。お願いがございます」
「辺境伯様、平民の私にそんな丁寧な態度を取らなくても……」
「いえいえいえいえ、これはあなた様への敬意です。それでですね、樹海西の件も踏まえて、スリミィナ様に調べていただきたいことがございまして」
そうそう、樹海西のほとぼりも冷まさなきゃ。
「スリミィナ様は【運命の棒】について興味がおありのようで……」
なんでも、パクチー樹海の向こうの王国の更に向こうのダイナミックダイナマイツ皇国に出向いて、そこの冒険者と友好を深めて欲しいと言うの。
「長い名前ですよね」
聞いたことはあるけど、どんな国かは知らないわ。
「あの特殊個体と同等の存在が複数現れたら、帝国はただではすみません。同時に5大脅威が発生する可能性もあります」
「それなら帝国にだって……」
そうだった。先日の『わからせ』の件もある。皇帝陛下にバレたら、確実に辺境伯家は……私や家族も巻き込まれるかも知れない。目立たないようにさりげなく戦力を整えなければ。
「皇国の冒険者は志が高いと聞きます。敵である王国の向こうですが、有事の際味方していただけるかも知れません」
「『かも知れない』と言うだけで「それだけでも無いよりましです」
そう言うものかしらねぇ?
「どうか、何卒お願いしたい。こちらの包みには、【運命の棒】を手に入れるための重要アイテムが入っています。ぜひお役立てください」
きっとラリィなら『エチゴヤソチモワルジャノウ』とか言いそうな重要アイテムが、でっかい包みの中にたくさん入っている。これだけあれば肩こりほぐしポーションを30年分は……いや待ってこれは賄賂じゃなくて重要アイテムだし。
ーーこれで厄介払いできる。
ボソッ呟いた会議参加者の顔に、辺境伯様の拳がめり込んだ。
「刺激するなと言ってるだろうッッッッッ!」
「チッ、羨ましい蔑みだぜ」
悦楽から現実に帰ってきたヒーギャックが口を尖らせた。
そんなこと言うからお前は厄介者として扱われ……あっ御褒美か。
色々察した私は、その日のうちに不死鳥2匹と一緒に転移魔方陣に乗って転移した。
それから。
「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ寒い~」
私と2匹は雪原にいた。魔法による転移は基本的に魔方陣同士で移動する。送るだけならできるみたいだけど、転移魔法は情報が規制されているので私にはよくわからない。『ちくわ』での転移は全く別系統の技術だし、できるようになるのはだいぶ先だ。
それらしき物は無い。雪に埋もれて見えないのかと思って掘ってみたけど、掘っても掘っても雪しか無い。
辺境伯様が狙ってここに飛ばしたはずが無いから、単純にミスだと思う。
「「温まれやッッッッッ!」」
なんだろう、2人が頼もしい。燃え上がる不死鳥はあったか~いッッッッッ!
「良かった、2人がいてくれて。ありがとう、助かるわ」
つい、お礼を言ってしまった。すると彼らは石化した。
「いや、なんでッッッッッ!」
一部の【マゾヒスト】は好意を示すと石化するそうよ。仕方がないので2人を担いで、創造した『ちくわ』に乗って飛んだ。
運良く、近くに町があった。その町はダイナミックダイナマイツ皇国の最北端の町だと言う。なんだかんだ目的地には到着していたのだ。




